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第67話「電車っていう公共交通機関の中でも、2人きりの世界を作っちゃうんだね~?」

 そして迎えた週末の土曜日。


 天気予報の通り、朝から爽やかな初夏の陽気とともに、気持ちのいい風が吹いていた。


 絶好のお出掛け日和の中、俺はお隣さんの小春と家の前で落ち合うと、一緒に家から駅へと向かう。


「んー、いい天気♪」

「文句なしの行楽日和だな」


「みんなの日頃の行いが良かったんだねー」

「さすが俺たちだよな」


「だよねー♪ ところで、昨日はちゃんと寝れた?」

「当たり前だろ。遠足前日の小学生じゃあるまいし」


「でも目の下にクマができてるけど?」

「そんな引っかけにはひっかからないってーの。出直してきな」

「あははー」


 なんて、幼馴染み特有のお気楽なやり取りをしながらテクテクと歩き、駅の改札を抜けてホームに上がる。


 指定された時間の電車の先頭車両で、さらに姫乃ちゃんと合流した。


「おはようございます、勇太くん、小春ちゃん」

「おはよう、姫乃ちゃん」

「ひめのん、おはよー♪」


 思ったより空いていた車内、その入り口付近――いわゆるドア横――で俺たちは立ったまま会話をする。


 ぜんぜん余裕で座れるんだけど、3人で横並びに座ると少し話しにくいからな。


「今日はいい天気になって良かったです」

「だよな」


「さっきもユータと言ってたんだけど、きっとみんなの日ごろの行いが良かったからだよね」

「ふふっ、ですです」


 軽く握った右手を口元に当てながら、楽しそうにクスクスと笑う姫乃ちゃんは、白いニットのトップスに、気持ちハイウエストの黒スカートという、シンプルだけどどことなくお嬢様っぽさを感じさせる春コーデだった。


 元が美人&黒髪ロングの姫乃ちゃんに、すごくよく似合っている。

 というかどこぞのいいところのお嬢様にしか見えない。


 控えめに言って超可愛いかった。


「姫乃ちゃんの私服、初めて見たかも。春らしくてよく似合ってるね。ちょっとお嬢様っぽいのも、大人びてて素敵だよ」


 俺は感想を姫乃ちゃんに伝える。

 思っていることはちゃんと言葉にしないと伝わらない。

 ゆえに伝える。


「本当ですか? 勇太くんに褒めてもらえて嬉しいです。ここ数日、悩んだ甲斐がありました」


「ここ数日って……、あはは、気合が入ってたんだね」


 姫乃ちゃんの言葉に、俺は小さく苦笑した。


 そんなに悩まなくても姫乃ちゃんならなんでも似合うんじゃないかな? とは思うものの、もちろんそんな野暮は口にしない。


 それは一生懸命コーデを悩んでくれた姫乃ちゃんに、失礼というものだ。


「それはもちろん、勇太くんと遊びに行くんですから、気合も入るというものです」


「えっと、その、サンキュー」

「い、いえ……」


 そ、そんなストレートに言われたら照れるだろ姫乃ちゃん。


 っていうか姫乃ちゃんも言ったときはちょっとドヤ顔だったのに、言っちゃったら恥ずかしかったのか、なんか顔を真っ赤にしているしさ。


 これまた超可愛いけどな!


 なんだこれ、姫乃ちゃんは可愛いのGAFA(世界経済を牛耳る超巨大IT企業4社の頭文字)かよ!?


 などと俺と姫乃ちゃんが電車の中で、アオハルなやり取りをしていると、


「電車っていう公共交通機関の中でも、2人きりの世界を作っちゃうんだね~?」


 なんとも不満げな小春の顔がにゅうっと、俺と姫乃ちゃんの間に割り込んできた。



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