第58話 俺の幼馴染みがこんなに可愛いわけがない。
「す、すみません小春ちゃん。これは別にそういうのじゃなかったんです。嬉しくて、つい感極まってしまって……」
慌てた様子で、恥ずかしそうに釈明する姫乃ちゃん。
そんな姫乃ちゃんとは対照的に、
「そ、そうだぞ。俺はあくまで姫乃ちゃんの活躍と、それに至る努力を評価していただけであってだな?」
姫乃ちゃんの活躍を祝福する気持ちだけでなく、姫乃ちゃんという女の子へのドキドキをも感じてしまっていた俺は、少し後ろめたさを感じながら小春に言い訳をした。
「ふーん」
じーっと小春が俺を見つめてくる。
「な、なんだよ?」
「じー……」
う、疑われている……?
小春ってけっこう、勘が鋭い時があるんだよな。
そうでなくとも、俺たちは幼馴染みだ。
お互いをよく知っているせいで、何気ない態度とかちょっとした仕草ひとつで、お互いに何を考えているかわかってしまったりもする。
「こ、小春も頑張ってたよなぁ。えらいぞー。第1戦も第2戦も、得点の半分以上は小春が取ってるもんな。姫乃ちゃんもすごく頑張っていたけど、それとは別に、やっぱり我が1組のエースは小春だよな~」
俺はそう言うと、拗ねたような顔で俺を見つめてくる小春の頭を、優しく撫で始めた。
なでりなでり。
ふわふわで柔らかい小春の髪を、そっと優しく撫でてゆく。
「あ……」
小春がわずかに俯くと、目を閉じた。
「えらいぞ、小春。さすが小春だ。がんばってるな小春は」
なでりなでり。
褒めながら頭を撫であげると、小春の顔が甘えてくる子猫のように緩み始める。
「そうですよ。小春ちゃんがお膳立てをしてくれてこその、私の初得点なんですから。小春ちゃんには感謝してもしきれません」
なでりなでり。
「えへへ、そう?」
「おうともよ」
「ですです」
なでりなでり。
「えへへー、だよねぇ? アタシがんばってるよねー」
俺と姫乃ちゃんかダブルら褒め褒めされ、さらには俺には頭も撫でてもらい、ついに小春の顔がにへらーと完全に緩んだ。
「この調子で次も頼んだぞ、エース小春」
「頼りにしているんですからね?」
なでりなでり。
「うん、任せてよー♪」
そう答えた小春の顔にはもう、拗ねちゃまモードの残滓は全く残ってはいなかった。
まったく、小春は甘えんぼな幼馴染みだなぁ。
今日も今日とて、俺の幼馴染みは素直で可愛いのであった。
◇
そして俺たち1組男子の試合はまあ普通に終わって、続く女子の第3試合。
ここまでの試合で、主にオフェンス面で小春との連係プレーで活躍を見せていた姫乃ちゃんだったのだが。
この試合ではさらに、ディフェンスでもしっかりと与えられた役目を果たしてた。
何もしない作戦・ディフェンスの巻である。




