表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/92

第55話 勇太プレゼンツ・姫乃ちゃんスペシャルシュート

 それでは今の姫乃ちゃんの動きを説明しよう!


 そもそもたった9日でできることは、限られている。

 それも運動が超苦手な姫乃ちゃんだ。


 あれもこれもやるのは逆立ちしたって不可能だった。


 その前提のもと、姫乃ちゃんはまず、身体を動かないで自身が囮となる演技と声賭けを、この9日間ひたすら練習してきたのだが。


 やはりどこかで囮作戦が看破されることを想定した俺は、囮作戦と並行して、この一連のシュートアクションを姫乃ちゃんに教えたのだ。


 姫乃ちゃんのアクションはたった3つ。


 ボールを持った小春がゴール前の特定の位置にいて、そこから出された緩いワンバウンドのパスを、ずっと陣取っているゴール左斜め下でもらうのが、最初の1つ目だ。


 そして2つ目が、左足を軸にしたピボットターンで90度左回転。


 最後の3つ目は、ジャンプはせずに膝のためをしっかり使った両手シュートでボードを狙い、当たった跳ね返りでゴールネットを揺らすこと。


 これが囮作戦が見破られたときの対策として、俺が姫乃ちゃんのために用意し。


 何百回、何千回とめげずに反復練習し続けた姫乃ちゃんが、ついに習得した――とまではいかないがある程度できるようになった――たった1つの必殺シュートだった。



 姫乃ちゃんはボールキャッチがめちゃくちゃ苦手で、強いパスやノーバンのパスはどうしてもキャッチができずに弾いたり、身体に当ててしまう。


 ドリブルをしたら、ボールがすぐにどこかに行ってしまう。


 ジャンプはほんの一瞬、小さく浮くだけ。

 しかも空中で目をつぶってしまう癖があるので、ジャンプ中に何かをするというのができなかった。


 そんな運動が苦手な姫乃ちゃんのために、姫乃ちゃんにできることを俺が厳選し、できることだけを最低限だけ足し合わせて形にした、これが勇太プレゼンツ・姫乃ちゃんスペシャルシュートなのだ!(ドヤァ!)


 そのたった1つの必殺シュートが、ここぞの場面で見事に火を噴いた。


「あの位置からのシュートだけを、ひたすら練習したもんな。ナイスゴールだ姫乃ちゃん」


 つきっきりで姫乃ちゃんの練習に付き合ったこともあって、まるで自分のことのように嬉しくなってしまい、なんかもう目頭が熱くなってくる俺である。


 ちなみになんだけど、少しでも何かがずれると、まったくシュートは入らなくなる。

 パスが練習と違う位置から来るだけで、姫乃ちゃんはそもそもボールをキャッチすることができない。


 本当にピンポイントであの位置からのみ。

 しかもキャッチできる緩いワンバウンドのボールが、ノーマークで来た時だけ。


 姫乃ちゃんはこの必殺シュートを決めることができるのだ。

(と言っても練習での成功率は5割くらいだったが)


 もしこれが部活レベルならすぐに対応されてしまうだろうが、あいにくとバスケ部は審判にかかりきり。

 ここにいるのは俺も含めて全員がシロウトだ。


 姫乃ちゃんの活躍のトリックは、最後まで見破られることはないはずだ。


 この試合、勝てる――!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ