第5話 幼馴染みと高校のクラス分け。
電車に揺られること数駅。
高校最寄りの駅で降りると、俺たちと同じ真新しい制服をまとった新入生たちの群れに交じって学校へと向かう。
すると道行く生徒たちが――特に男子がチラチラと小春に視線を送っているのを感じた。
さすが中学時代はモテ女王と言われた小鳥遊小春だ。
入学式が始まる前から、抜群に目立っていた。
「でね、でね。新しい制服を着て、ユータがくれたシュシュを着けた写真を送ったら、みんなすっごく似合ってるって言ってくれたんだよねー」
しかし小春本人は全然それに気付いていないようで、楽しそうな顔で話を続けている。
今も小春の中学の時の仲良しグループから、例のシュシュが褒められたって話をしていた。
子供がとっておきのレアカードを自慢するみたいに嬉しそうだ。
「それは良かったじゃん。実際、似合っているしな」
ぶっちゃけ小春なら何でも似合うんだろうが、俺としても春休みに時間をかけてじっくり選んだ渾身の誕生日プレゼントだったので、こうやって何度も喜びを伝えてくれるのは、気恥ずかしさを感じる以上にすごく嬉しかった。
「ユータのことも褒めてたよ。意外とセンスあるんだねーって」
「ええっ? 俺がプレゼントしたってわざわざ言ったのか?」
「うん、言ったよ? 聞かれたから。隠す必要もないし」
「だって恥ずかしいだろ?」
「今どき異性にプレゼントするくらい普通だってばー。幼馴染みなんだし。それにユータからって自慢したかったしねー」
「俺からのプレゼントって情報が、どんな自慢になるんだよ?」
純粋に疑問なんだが。
自慢じゃないが、俺はモテるタイプではない。
モテ女王の小春と違って告白されたことは一度もないし、彼女がいたこともなかった。
「そこはねぇ? ふふふ……」
「なんだよその変な笑い方」
「変じゃないですー。とっても素敵な笑顔ですー。むふふっ」
「ま、同窓会でもない限り、俺が小春の友だちと会うことは、そうないだろうしな。いいっちゃ、いいか」
そんな話をしている間に、高校が見えてきた。
正門では生徒会役員たちが、
「入学おめでとう!」「今日から頑張ってね!」
などと新入生に向かって元気な声かけをしている。
その中を通り抜け、校舎入り口に張り出されていたクラス分け表を見る。
「えーと、どれどれ……」
「あ、同じクラスだよ。二人とも1組。やったねっ♪」
先に名前を見つけた小春が、俺の腕をからめとるようにしながら抱きついてきた。
二の腕に触れる小春の大きくて柔らかい胸の感触に、ドキリとさせられる。
「はしゃぎ過ぎだって。そんなくっついたら恥ずかしいだろ?」
「だってずっと一緒だったから、高校で違うクラスになったらどうしようって不安だったんだもん」
言いながらも、小春は俺の腕をささっと放した。
その顔はほのかに赤い。
今のは無意識のとっさの行動だったようだ。
他にもクラス分け表を見ている新入生がたくさんいる中で、男子である俺の腕を抱きとめるのは、さすがに恥ずかしいのだろう。
「実を言うと、俺も少しホッとしてるんだ。小春とはずっと一緒だったからさ。今さら別のクラスになるのは想像できなかったし」
「でしょでしょ? これで5年連続だし、もうこれ運命だよねー」
「さすがに運命は言い過ぎじゃないか?」
「ぜんぜん言い過ぎじゃないですー。これは運命ですー。だって5年連続だよ、5年」
小春が人差し指で俺のほっぺをツンツンとつついてくる。