第46話 予想を超えてはるかに壊滅的だった姫乃ちゃんの運動神経
翌日の体育の時間。
球技大会に向けて、男女一緒に一丸となってクラス練習をしたのだが――。
姫乃ちゃんの運動神経の悪さ度合を完全に見誤っていたいたことを、俺はすぐに思い知ることとなった。
姫乃ちゃんは本当に一生懸命にバスケをやっていた。
さすが姫乃ちゃん、苦手な運動も当然のように真面目に取り組んでいる。
宿題一つとっても苦手教科を後回しにしがちな俺とは違って、頭が下がる思いだ。
だが、しかし。
まじめに取り組んではいるんだけれど。
なんていうかその。
率直に言って、なんて褒めたらいいか小一時間悩むくらいに、姫乃ちゃんの運動神経は壊滅的だったのだ。
ドムドムドム!
「あわわ――っ!」
ドリブルは3回も突いたら明後日の方向に跳ねていってしまうし。
「あ、きゃっ!?」
パスは投げるのもキャッチするのも、かなり危うい。
今も小春の投げたなんでもないパスを取ろうとして、上手く取れずに落としてしまった。
そしてシュートは推して知るべし。
「いきますね、えいっ!」
気を取り直した姫乃ちゃんが真剣な表情で放った両手シュートは、しかしエアボール。
つまりはゴールリングにもバックボードにも当たらずに、ドムンという鈍い音を立てて、ゴールとはかなりずれたところで床に落ちてしまった。
「ぁ……」
体操服姿の姫乃ちゃんが、涙目になりながらがっくりと肩を落とした。
姫乃ちゃんはそのままボールを拾ってクラスメイトに渡すと、意気消沈って感じでとぼとぼと俺のところに歩いてきて、言った。
「ううっ、下手ですみません……私の身体にはきっと、運動神経が通ってないんです……」
「まだ初日だからさ。ここからここから。本番までに少しでも上手くなろうよ」
「はい……がんばります。はい、がんばります……」
まるで自分に言い聞かせるように、姫乃ちゃんは同じ言葉を2度繰り返した。
そんな姫乃ちゃんとは対照的に。
小春はというと初日の練習から華麗なプレーを連発し、既に女子チームの中心選手になりつつあった。
「ダブルクラッチ成功♪ 見た見たユータ? いぇい♪」
1on1の練習で、ドライブで鋭く切り込んでからの、華麗なフェイントシュートでゴールネットを揺らし、満面の笑みでピースを向けてくる小春。
「小春、ナイッシュー!」
「ふあっ! 小春ちゃんはすごいですね! 今、空中でグワグワってなりましたよ!」
バスケ部顔負けのスーパープレイを目の当たりにした姫乃ちゃんが、感嘆の声をあげる。
「空中でシュートフェイントを入れるダブルクラッチって技だな」
「ダブルクラッチ、名前からしてカッコいいですね」
「小春は昔から運動神経がいいからなぁ」
「どうやったらあんな風に動けるんでしょうか……はぁ……」
そして自分と比較して、姫乃ちゃんはまたもやガックリと肩を落としてしまう。
「さすがに小春の真似は難しいからさ。姫乃ちゃんは姫乃ちゃんのできることをやっていこうよ」
「……そうですね。頑張ってみます」
その言葉通り、その後も姫乃ちゃんは誰よりも一生懸命に練習したものの。
一朝一夕ではなかなかうまくはいかず、姫乃ちゃんは完全に自信を喪失してしまったのだった。




