第44話 球技大会の選手に選ばれてしまいガックリくる姫乃ちゃん
高校生になって初めてとなる中間テストを、かなりいい成績でクリアし、
「俺たちは自由だ!」
「ウィー・アー・フリー!」
「えっと、あの……ふ、フリー!」
再び手に入れた自由を、意気揚々と満喫していたある日。
その日はロングホームルームがあって、我が校の恒例行事の新入生の初夏のビッグイベント、球技大会の出場選手決めが行われた。
競技はバスケットボール。
雨でもやれて、交代も自由で、なにより比較的天の入りやすいバスケットボールは、球技大会にはもってこいなのだそうだ。
そしてロングホームルームでいろいろと話し合いをした結果、男子は俺が、女子は姫乃ちゃんと小春が、出場選手に選ばれた。
俺と小春はわりと運動神経がいい方なのでいいとして、姫乃ちゃんは運動がかなり苦手だ。
なのになぜ選ばれてしまったかというと、うちのクラスの女子はインドアの文科系がとても多かったからだ。
聞くところによると、姫乃ちゃんよりも運動が苦手な子までいるそうな。
それも複数人。
さらにはちょうど部活の新人戦の時期なのもあって、運動部はそっちにかかりきりだったり、運悪く怪我をしていて参加できない生徒が何人かいたり。
そういう様々な要因が重なりに重なった結果、出場できる生徒が大幅に限られてしまい、本来なら「運動が苦手で応援で頑張ろう組」に入るはずだった姫乃ちゃんに、お鉢が回ってきてしまったというわけだ。
しかも姫乃ちゃんは、女子にしては背が高く細身で、手足もスラリと長い。
いかにも「バスケできます」な雰囲気を醸し出しているので、白羽の矢は立ちやすいよなぁ。
もちろん本人はまさか、選手に選ばれてしまって、完全に意気消沈してしまっていた。
「ひめのん、元気だしなよー。ガチの大会じゃないんだし、なんとかなるって」
いつもの帰り道で、小春が姫乃ちゃんを優しく慰める。
「私が運動は苦手って、みんな知ってると思うんですけど……」
しかし姫乃ちゃんはというと、もう見るからにがっくりしていた。
「あはは……。まぁどうしても人数が足りなかったから、しょうがないよ」
「勝つことよりも、クラスで協力して一つのことに取り組むことが大事だって、先生も言ってたしさ。気楽にいこうぜ姫乃ちゃん」
姫乃ちゃんを励ます小春に、俺も加勢に入る。
「もちろん、選手に決まった以上はがんばりますけど。うまくやれる自信はまったくありません……。はぁ……どうして……」
しかしやっぱり姫乃ちゃんは肩を落としながら、大きなため息をついてしまった。
テスト勉強の時に見せていた自信満々の余裕は微塵も感じられない。
どんよりと足取りは重く、歩くスピードもいつもよりも遅かった。
何とかしてあげたいのはやまやまだけど、男子の俺が女子の試合に出るわけにもいかないからなぁ。
「練習ならいくらでも付き合うからさ。ほら昔、逆上がりの練習をした時みたいにさ」
だから俺はそう提案した。
考えたってどうしようもないなら、とりあえず練習あるのみだ。




