第43話 中間テストとその結果 ~醜いテスト戦争~
その後も俺たちは勉強会を定期的に行い、無事に中間テストを乗り越えることができたのだが。
なんと姫乃ちゃんは全教科総合で学年1位をとっていた。
成績上位10人は掲示板に特別に張り出されるのだが、その一番上に「二宮姫乃」という名前がどうだと言わんばかりに掲載されていたのだ。
「ひめのん、中間テストで総合学年一位だって! すごっ!」
「マジすっげぇぇ! やっぱり姫乃ちゃんは、頭が良かったんだなぁ」
なんとなくわかってはいたけど、こうして目に見える結果で見せつけられて、改めて思い知った俺である。
(おそらく小春も)
「勉強会でも、アタシたちが教えてもらうばっかりだったもんね」
「何を聞いても全部、わかりやすく教えてもらえたもんな。この結果は当然と言えば当然だよ」
べた褒めする俺と小春に、
「さすがにこれは、たまたまだと思います。中学の時も、総合1位なんてとったことはありませんでしたから」
両手を左右に大きく振って、謙遜して見せる姫乃ちゃん。
「たまたまでもまぐれでもすごいって。ねー、ユータ」
「ああ。そもそも普通はたまたまでもとれないもんな」
「だよね。普通は学年1位に縁なんてないよね」
「やっぱり姫乃先生と呼ぶべきだったか」
俺と小春は顔を見合わせると、一度こくんと頷いてタイミングを合わせてから、声をそろえて言った。
「「姫乃先生!」」
「は、恥ずかしいので先生はやめて下さい。それに、お二人もかなり点数は良かったんですよね?」
姫乃ちゃんは自分から話題をそらすためか、俺たちに話題を振ってきた。
「アタシは全教科87点以上だったよー。ちなみにユータは最低点が86点だったんだよね。はい、アタシの勝ちー」
するとなぜか小春が勝ち誇った顔で俺を見てきた。
だが待って欲しい。
「は? なんで最低点が1点違うからって、俺の負けなんだよ?」
「最低点は赤点にもかかわってくる大事な要素ですー。赤点2個で留年ですからねー」
「赤点ラインは40点だろ。そんな程度の低い話は俺には関係ないんだよなぁ。やっぱテストは合計点だろ。主要5教科の合計点なら、俺の方が1点勝ってたっての」
「勝ってるって言ってもたった1点じゃんかー。誤差でしょそれ」
「それを言うなら最低点が1点違う方がよっぽど誤差だろ」
「あ、あの、二人と少し落ち着いて……」
姫乃ちゃんが困惑した様子で仲裁に入ってくるが、これが落ち着いていられるか!
俺と小春は昔から成績がほとんど変わらない、宿命のライバルだ。
テストの点で理不尽にマウントを取られるわけにはいかない!
「そもそも保健体育とか副教科まで入れたら、アタシの方が合計点も上でしたー。はい、残念でした。アタシの勝ちですー」
「副教科で入れていいのは共通テストにある公民までだろ、常識的に考えて。公民だけを足したら、俺の方が合計点は上だっての」
「なにそれ、どこの常識? 教えてよ?」
「大学受験は、高校における絶対正義の基準なんだよなぁ」
「へー、ユータはもう大学受験のこと考えてるんだ?」
「それとこれとは話が別だろ」
「一緒ですー」
「ちがうってーの」
などと、幼馴染みあるあるの醜いテスト戦争を始めた俺と小春を見て、遥か高みにいた学年一位の姫乃ちゃんは、仲裁を諦めて小さく苦笑していたのだった。




