第4話 妙に上から目線の幼馴染みと朝食を食べる話。
なんてドタバタエロコメディを、朝っぱらからやらかしてしまった俺と小春だったが。
まだ顔は少し赤いものの、小春はいつも通りに接してくれた。
母さんと3人で一緒に朝食を食べる。
俺の向かいに小春、その隣に母さんという席順だ。
(小春は俺の母さんと仲がいいので、食事も一緒なことがよくある)
今日の朝食は、ジャガイモとレタスのマヨネーズサラダ、目玉焼き、ソーセージ、ロールパン、カフェオレ、デザートにりんごとバナナのヨーグルトというメニューだった。
和風派の母さんが作ると、おにぎりと味噌汁と玉子焼きなことが多いので、今日は小春が作ったんだな。
小春はかなりの料理上手なのだ。
「あんたね、朝から小春ちゃんにエロいことするのはやめなさいよ。そんな子に育てた覚えはないわよ」
「してないから。俺は普通に寝てただけだから」
食べ始めて早々、いわれのない疑惑を追及された俺は、無実を訴えたのだが。
「いいんです、お母さん。ユータも男の子だから、これくらいはおおめに見てあげてください。お年頃ですから」
小春が妙にお上品ぶった口調で、そんなことを言いやがった。
「小春ちゃんは本当に大人の女の子ねぇ」
「いえいえそんな。アタシなんてまだまだですよ」
「ほんといい子ねぇ。それに比べてうちの息子ときたら、いつまで経っても子供のままでねぇ。小春ちゃん、この子がまたバカなことをしでかさないか、少しだけでいいから気にかけてあげてね」
「どうぞ、ユータの面倒はアタシに任せてくださいお母さん」
「なんかさっきから小春が、妙に上から目線なんだが……」
「だってアタシの方が誕生日早いしー。もう16歳だしー」
「4月生まれと7月生まれだから、たった三カ月しか変わらないだろ」
俺だってもうすぐに16歳になるんだ。
「そんなこと言って、口元にサラダのマヨネーズがついてるよ。もう、だらしないんだからー」
「うわ、マジか」
「まじまじ。取ってあげるからジッとしててね」
小春は「もう、しょーがないなー」と言いながら腰を浮かせると、右手を伸ばして俺の口元を人差し指で拭った。
そのまま指をペロリと舐める。
指に付いた白濁液を舐めとる小さな赤い舌が無駄に扇情的で、俺は何とも形容しがたい羞恥心と、少なからぬ興奮を覚えてしまった。
「さ、サンキュー……」
「どういたしましてー」
「……」
「……」
なんだか緊張してしまって、言葉が出なくなる俺。
小春はすごく可愛いんだから、そういう男心を揺さぶるようなことをするのは良くないと思うな!
「きょ、今日の朝ご飯は小春が作ったんだろ? 美味しかったぞ」
「えへへ、ありがとー。そうそう、カフェオレどうだった?」
「カフェオレ? そういや、いつもより飲みやすかった気がしたような? マイルドだったっていうか。なにか変えたのか?」
「この前、苦いのは少し苦手って言ってたでしょ? だから今日はいつもより牛乳を多めにしてみたんだよね。気に入ってもらえてよかったー」
「お、おう……」
どうやら俺のためにわざわざ微調整をしてくれたらしい。
しかもそれをすごく嬉しそうに報告してくれるのだ。
俺はなんかもういろいろと恥ずかしくなってしまって小春から視線を逸らすと、妙にニヤついている母さんと目が合ってしまった。
「な、なんだよ母さん。ニヤニヤしてさ」
「別になにも? 青春っていいわねぇって思ってただけよ?」
「そんなんじゃないってーの」
恥ずかしさを誤魔化すためにぶっきらぼうに言いつつ、フォークをザクっと力いっぱいリンゴに突き刺して、口に入れる。
「素直じゃないわねぇ」
「まぁまぁ、ユータもお年頃ですから」
「やーねえ、もう」
「ふふふふー」
というような割といつも通りの朝食を終えると、俺と小春は高校の入学式へと向かった。