第36話 それぞれの選択
「なんだよ? なんで笑ったんだよ?」
「ふふっ、なんでもありません。じゃあこのミニ苺タルトにしますね」
「もう決めるのか? 小春なんてまだまだ決まりそうにないし、もうちょい時間をかけて選んでも損はないと思うぞ?」
小春を見ると、受験でもしてんのかってくらいに、それはもう真剣な顔で選んでいる真っ最中である。
あれだな。
いつもはロピアのプリンアラモードを決め撃ち一択で悩まないから、逆にそれ以外を選ぶとなると時間がかかるんだろうな。
幼馴染みの俺には、小春の心の内が手に取るようにわかった。
なんてことを考えていると、姫乃ちゃんが言った。
「いいえ、これにします。だって勇太くんが、私の好みに合わせて選んでくれたんですから」
「そっか。気に入ってもらえてよかったよ」
「こちらこそ、古い話を覚えていてくれてありがとうございました」
姫乃ちゃんがミニ苺タルトを、大事そうにそっと掌に載せながら、またふわりと笑った。
まるで天使のような笑顔だった。
その後。
俺は抹茶シュークリームを選び──「期間限定20%増量!」という言葉に惹かれた──あとは小春だけとなって。
うんうんうーんと悩んでいた小春がついに心を決めた。
「じゃあこれにしよっと。ロピアのプリンアラモード。やっぱりこれだよね♪」
「そんだけ悩んで、結局そこに落ち着くのかよ」
別に小春が何を買おうが小春の自由なんだけど、思わずツッコんでしまった俺である。
「だってこの子、美味しいんだもーん♪」
「それだけ愛されてたら、開発者も嬉しいだろうよ」
「ふふっ、メーカーさんにお客様の声を伝えないとですね」
「それはもうしてるから」
「いや、してんのかよ」
「さ、さすがです」
どうやら小春のプリンアラモードへの愛はガチのマジのようだった。
というわけで俺たちは各々のスイーツを購入した。
ちなみに小春の分だけでなく、姫乃ちゃんの分も俺が払った。
「私の分は自分で払います」
と姫乃ちゃんは主張したんだけれど。
「小春にだけ奢るのはちょっとアレだろ? 姫乃ちゃんには毎日、お弁当も作ってきてもらってるしさ。それと遅ればせながら、姫乃ちゃんとの再会祝いってことで」
あーうん。
最後の一言はさすがにちょっと、キザ過ぎたかもしれなかった。
ああもう、いいだろ別に!
俺は姫乃ちゃんにカッコつけたかったんだよ!
98円のスイーツをおごるくらいでつくカッコなんてたかが知れてるけど、なんかちょっとイイカッコしたかったの!
お年頃なんだ、わかるだろ?
「でしたらありがたく頂戴します。ごちそうさまです勇太くん」
「ユータありがとね。ごちー♪」
姫乃ちゃんと小春から素敵な笑顔と感謝の言葉を貰って、まんざらでもない俺だった。




