第22話 登校中に甘々美少女サンドイッチされちゃう勇太
「大したことでもないことに仰々しいネーミングをするのって、いかにも中学生だよねー」
「自分で言ったら世話ないぞ? 言っとくけど、これ言い出したの小春だからな?」
「あれ、そうだっけ?」
「そうだよ。というか去年の話なんだし、たかが1年じゃたいして精神性は変わってないだろ?」
たんに身分が中学生から高校生へと変わっただけだ。
だっていうのに小春は俺に嚙みついてきた。
「変わってますー。すっごく大人になってますー。ユータは違うかもだけど、アタシはもうすっかり大人ですー」
「はぁ? 俺だって実はめっちゃ大人になってるっての。大人勇太だっての」
当然、噛みつかれたままでは黙っていない俺。
小春の方がちょっと誕生日が早いからって、大人ぶられては困る!
(塾で知り合った相手から「双子の弟さん?」とか言われたこともあって、小春がお姉さんぶることを実は結構気にしているのだ)
「ふーん? 具体的にどこが?」
「え? そりゃまぁ……その。いろいろだよ。一言では言えないっていうか」
「ぷっ!」
「ちょ、なに笑ってんだよ」
「だっておかしーんだもーん」
小春が笑いながら人差し指で俺のほっぺをつついてきた。
小春の柔らかい指先がなんともこそばゆい。
そんないつも通りの幼馴染みのやり取りを小春としていると、
「安心してください。勇太くんはすごく大人っぽくなっていますよ」
姫乃ちゃんが援護射撃をしてくれた。
「ありがとう姫乃ちゃん。その調子でもっと小春に言ってやってくれ」
「もー、ひめのんは甘いなぁ。ユータってばすぐ調子に乗るから、あんまり甘やかしちゃだめだよー。適度に甘やかしつつ、シメるところはシメないと」
「あら、そうなんですね。なるほど、勉強になります」
「ちょ、ちょっと姫乃ちゃん!?」
なにその小春への謎の信頼感は?
君ら昨日が初対面だよね?
「ふふっ、冗談ですよ」
「そうそう」
妙に仲良しな2人は、俺を挟んで顔を見合わせると楽しそうに笑ったのだった。
2人して俺をからかって遊んでいたらしい。
すっかり仲良しなことで何よりだよ。
その後も歩きながら、他愛のない話をした。
でもどんなに他愛のない話でも、4年ぶりの姫乃ちゃんとのトークは、俺の心を嬉しさでいっぱいにしてくれた。
「今日から早速、授業ですね。予習もかねて教科書を読んでみたんですが、どれも中学までとは段違いに難しかったです」
さすが姫乃ちゃん、してくるように言われたわけでもなかったのにちゃんと予習をしてくる真面目さんだ。
「俺もチラッと見たんだけど、すぐ閉じちゃったな。まだ予習してこいとは言われてなかったし。今日からでいいかなって」
「アタシもちょっと見てやめちゃったー。暗記系はある程度覚えれば大丈夫だとは思うんだけど」
対して俺と小春は若干、不真面目さんである。
(不真面目って程でもないとは思うが)
「よかったら一度みんなで勉強会とかしませんか?」
「ありかもな。ついていけるかちょっと不安だし」
「じゃあ学校生活にある程度慣れてきたら、3人で図書館にでも行こうよ。自習室あるらしいよ」
「その時はぜひ誘ってくださいね」
「オッケーおけまる♪」
小春が可愛らしくウインクをした。
なんて学生あるあるトークをしながら、俺たちは平和に歩いていたのだが。
ガサガサッ!
通学路の脇の植え込みが大きな音をさせたかと思うと、そこから何かが突然飛び出してきた――!




