第19話「ねぇユータ……もっと触ってみる?」
「あ、いや、その、これはだな……」
しどろもどろになる俺。
客観的に見れば、今の俺は小春が寝ぼけているのをいいことに、同世代の中でもトップクラスを誇る魅力的なお胸をまさぐっていた、スケベ幼馴染みである。
たとえ幼馴染みであっても、許される行為ではなかった。
……ど、どうしよう(泣)
しかし小春は俺の予想に反して、上目遣いで恥ずかしそうに、
「もー、ユータのえっちー」
とつぶやくと、布団の中に潜って顔を隠してしまった。
その拍子に小春の胸元から俺の左手がスポット抜ける。
ホッと一安心すると同時に、俺はいいようのない気恥ずかしさに襲われていた。
な、なんだよその反応。
「ちょっとー、ユータがえっちなんですけどー!」とか言って、逃げ出すように俺の母さんに報告に行くのがいつもの流れだろ?
俺は混乱しながらも、何はともあれまずは謝罪の言葉を告げる。
「ごめんな、小春。寝起きでボーっとしてて、どういう状況かよくわかっていなくてさ」
「いいよいいよ。ユータが寝ているところに勝手に潜り込んじゃったアタシも悪いんだし」
「えーっと、そもそもなんで潜り込んできたんだ?」
「なんかユータが気持ちよさそうに寝てたから、ちょっとだけお邪魔しようかなーって思って。ダメだった?」
小春は顔の上半分だけをにゅうっと布団から出すと、上目遣いで俺を見ながら問いかけてくる。
「ダメじゃないけど、さっきみたいな事故もあるしさ?」
「そーだね」
「いや、そーだね、じゃなくてな?」
「だから事故でしょー。寝ぼけてたんだからしょうがないじゃん?」
「まぁ、そうではあるんだけど。俺以外で同じことがあったら、なんかちょっとモヤるっていうか」
「もー、ベッドにもぐりこむことユータにしかしないですぅー。だから安心していいよー」
小春は照れたようにつぶやくと、えへへと小さく笑った。
「お、おう。そうか。うん、えっと、ありがと」
な、なんだよ。
さっきから小春が甘えたモード全開なんだが?
小春の一挙手一投足、一言一言が可愛すぎてドキドキしすぎて、俺はどうにもペースを乱されっぱなしだった。
と、そこで会話が途切れる。
会話が途切れてもなお小春はじっと俺の目を見つめてきたので、俺も無言で見つめ返した。
小春の可愛い顔が目の前にあって、布団の中で密着した身体からは、小春の熱が伝わってくる。
心臓の音がうるさいほどに大きくなっていた。
これ、小春に聞こえちゃっているんじゃないか?
しばらくして、小春が口を開いた。
「ねぇユータ……」
今日一番に甘えた声。
脳に染み入るような蕩けボイスだ。
「ええっと、どうした?」
「もっと触ってみる?」
「えっ? 触ってみるって、え――っ」
えっ、だって、えっ?
それってつまり、ええええっっ!?
「興味あるんだよね?」
「いや、それは、その、ないわけじゃないんだけど、その……」
「えへへ、嬉しいな」
嬉しいな!?
今、嬉しいなって言った!?
小春の言葉に俺は激しく動揺していた。
だって、だって、えええええええええええええええっっっっっっっ!!!???
ど、どどどどうする!?
だって小春が嬉しいことをしないのは、小春を嬉しくなくならせるわけだから、よくないよな!?
でも付き合ってもいない幼馴染みの胸を散々触った後に、もう一度お触りするのは倫理的にどうなんだ!?
男として最低じゃないのか?
くっ、俺はいったいどうすればいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
しかしそこで小春がにんまりと笑った。
「冗談ですぅー。ユータはさっきから、何を想像してたのかなー? もー、ユータのえっちー! すけべー!」
「ちょ、おい小春! 俺をからかったな!?」
「すぐにえっちなこと考えるユータがいけないんですぅー」
言いながら、小春はベッドからするりと抜け出して床に降り立った。
上は白いブラウス、下はなんとスカートをはいていなかった。
ピンク色の可愛らしいショーツがなんとも目に眩しい。




