第13話「わっ、なに-? ユータ照れてるの-? 可愛いー♪」
「わっ、なに-? ユータ照れてるの-? 可愛いー♪」
「男子は女子に褒められると照れる生き物なんだよ、ほっとけ」
そうでなくとも小春は可愛いんだからさ。
俺じゃなくても、小春に褒められたら全世界の男子が照れるからな?
言ったら調子に乗りそうだから言わないけど。
「勇太くんはかっこいいですよ。今も昔も」
「ひ、姫乃ちゃんまで……。その、2人ともありがと」
両サイドから美少女二人に褒めちぎられて、なんとも心がそわそわしてしまう俺である。
「あ、あとね! 一番の思い出があってー」
「なんですか? 聞きたいです」
「中学3年の時の球技大会なんだけど、バスケで決勝戦の最後にユータが超かっこいいシュートを決めて、うちのクラスが逆転優勝したんだよねー」
「わっ、そうなんですか? 勇太くんは運動が得意でしたもんね。さもありなんです」
「アレは俺の人生で一番輝いた瞬間だったなぁ」
もちろん俺個人としては、姫乃ちゃんを助けたことが圧倒的一位な瞬間なのだが、アレは世間的には俺の一番オワッテル瞬間なので除外しないといけない。
「その時の動画あるよ? 見る?」
「本当ですか? すごく見たいです!」
「そう言うと思って、もうラインで送っといたからー。これで何度も見返せるよー」
「はやっ!?」
スマホを取り出した時にはもう終わっている、そんなレベルの一瞬の早業だった。
やるな小春。
っていうか、そんなパッと分かりやすいところに保存してたんだな。
そんなに何度も繰り返し見るようなもんでもないだろうに。
お前、俺のこと好きすぎだろ――なんちゃって。
「早きこと小春のごとし、ってねー」
「今のを見せられると、頷くしかない」
「ありがとうございます。あのっ、今から見てみてもいいですか?」
「もちもち。せっかくだしみんなで見ようよー」
「俺も久しぶりに見てみるか。俺の人生最高の瞬間を」
立ち止まって、姫乃ちゃんのスマホを3人で囲む。
そこにはゴール下で、ジャンプしてパスに飛び付き、そのまま着地することなく空中でシュートを放つ体操服姿の俺が映っていた。
いわゆるアリウープだ。
残り時間もほとんどなかったし、着地するとディフェンスに囲まれそうだったので、バスケ漫画で見た感じに、ダメもとでそのまま撃っただけなんだけど。
思いのほか綺麗に入ってしまったんだよな。
本当にたまたまなので、2度と再現できないと思う。
それこそシュートを撃った俺が一番驚いたまである、文字通り奇跡の一投だった。
「すごい……、勇太くんカッコいいです……」
「でしょでしょ? しかも決勝戦の決勝ゴールだからねー」
「目の前で見てみたかったです」
「だってー、ユータ。高校でも頑張ってねー」
「さすがにこんな機会はもうないかなぁ」
こんなのが当たり前のように起こるとか、俺はどこのラノベ主人公だっての。
無茶な要求をしてくる小春に、俺は苦笑せざるを得なかった。
「さてと、姫乃ちゃんはこの後、予定があるんだろ? そろそろ行かないとだ」
「そうでした」
俺は過剰に盛り上がる2人を促すと、歩き始めたのだった。




