スリア魔術学校
「初めまして。受験者ですか?」
試験会場……というか、スリア魔術学校前に立っていた女性に声を掛けられる。
澄んだ空の様な青色の瞳と長い黄金の髪が特徴的な、優しそうな声をした女性だ。
「はい。」
紅陽が答え、白月が紅陽の後ろに隠れる。
「では荷物を預かります。持ち物は何にしますか?」
この後にボディチェックをして、ここで申請した以外の武器が出てくると失格になってしまうらしい。
「私はこの短剣、彼女はこの本を」
と言い、紅陽が短剣を、白月が子供向けの魔術教本を見せる。
「えっ……少々お待ち頂けますか?」
どうやら受け付けの人だったらしい金髪の女性が、驚いた顔で奥に行く。
「どうしたんだろうねぇ?」
紅陽が横に立つ白月に尋ねる。
「どうしたもこうしたも、そりゃこんな大切な実戦で使い物にならない武器持ってきたら驚くでしょ」
呆れ顔で白月が答える。
そりゃそうか、と紅陽が納得したところで先ほどの金髪の女性と白髪の似合う背の低い老人が奥から歩いてきた。
「朱那、この子たちか?」
白髪の老人が横にいる金髪の女性ーー朱那に話しかける。
「はい」
答え、1歩下がる。
「さて、キミ達はこれから起きる事を分かっているのかい?」
穏やかな老人が笑顔で問う。
「あい!!」
元気に手を挙げて、紅陽。
「実戦試験ですよね?」
後ろから怯えたように、白月。
「そうだ。そして、相手は実戦経験のあるような相手だ。装備も無しに戦うのかい?」
真剣な顔で優しく老人が尋ねる。
「分かっています。これで充分です」
紅陽の後ろから顔だけ出して白月が答える。
「……そうか。それなら構わないよ。それで登録しよう」
少し考える様子を見せた後、老人が受付に入って行く。
「紅陽と白月で良いのかい?」
ペンを持った老人が問う。
「うん!」
「大丈夫です」
紅陽と白月が同時に答える。
「登録は終わったよ。じゃあこの腕輪を着けて中庭に行きなさい」
と言い、銀色の輪っかを差し出す。
「ありがと!」
紅陽が受け取り、白月にも渡す。
「……ん? これ……」
「どうしたの?」
「いや……説明きいてからで良いや」
と、悩む白月と紅陽は中庭へと進む。
「ふむ……」
白月と紅陽が中庭へと消えた後、白髪の老人が呟く。
「如何なさいましたか?」
老人が悩むのは珍しく、朱那が不思議そうに尋ねる。
「あの白髪の少女、気付いておったと思ってな」
「なるほど……珍しいですね。最近は全く居ませんでしたのに」
「まぁよい。業務の続きだ。今年も志望者だけは多いからの」
と言い、受付業務に戻った。