23話 ダンまち
3人でユーダリルダンジョンへと入り。訓練も兼ねて俺が先頭を歩きサクサクと進んでいく。
「次の丁字路を右です~」
ルート選択はアリスに任せている。
まだ低階層なので俺も1度は通ったはずだが覚えていない。
石畳で出来た入り組んだ迷路を1度通ったくらいで脳内マッピングなんて俺には出来無いから。
アリスは覚えている上に探索スキル持ちなので。最短ルートでモンスターも少なく冒険者の居ないルートを教えてくれている。
「そろそろ休憩にしましょうか」
まだ始まったばかりなのにアリシアから休憩の提案があった。全然疲れていないのに。
そんな考えが顔に出ていたのかもしれない。
「そこまで急ぐ必要もありませんし」
「うん」
「無理して先に進むよりも、休憩を挟みながらの方が効率良く進めたりするのです」
「へぇ~」
アイテムボックスから木製のコップを取り出し、そこに水魔法で水を注いで貰う。
「クッキー食べませんか~?」
「え?今?」
「そうですね。折角ですからゆっくりしましょうか」
アリシアから許可が下りたので・・・椅子とテーブルも出し。ティーポットにティーカップ。
完全にティーパーティーの装いとなった。
石畳に囲まれていて閉塞感があり、アリシアが魔法で照らしてくれているがランプの様な灯りでLEDは疎か蛍光灯程も明るくない。それを除けば優雅なお茶会だ。
「誰か来ます~」
「!?」
「こ、こんにちわ」
「な、何してんだ・・・?」
「いえ、ちょっと休憩を・・・」
「ダンジョンでか・・・?」
「はい、まぁ、ちょっとやりすぎですよね・・・」
「ちょっと・・・ちょっとか?まぁ、通して貰うぞ・・・」
「はい、どうぞどうぞ」
ここよりも下層を狩り場にしている冒険者パーティーが通過していったが・・・やっぱりこの休憩は異質だろう。
アイテムボックス持ちでもない限りは難しいだろうし。軽装の男が1人にメイド服のエルフが2人。どう考えても訳の分からないパーティーだから困惑するのも当然だと思う。
紅茶とクッキーで気分もリフレッシュしたので、そこからも順調に階下へと進んでいく。
そして、何度かの小休止を挟み、簡単な食事休憩も挟み、本格的な休憩を取る事になった。
「これどうなんだろうね」
これは超短時間で無理を言って作って貰った新戦力だ。
家具工房で何の気無しに言ったらアリシアが食いついてその場で親方に作って貰ったら親方の反応も良くて3つ作って貰ったのだ。
そう、ビーチチェアを。
折りたたみ式で軽量だからこそ持ち運びも楽。
そして、座ったり寝そべる部分は布なのでクッション性も高い。
ダンジョンのセーフエリア、石畳の上で寝る場合。
暑ければひんやりしていて気持ちが良いかもしれないが寒い時は底冷えがして本当に辛い。
それが、ビーチチェアであれば浮いていて通気性も良いので影響を受けにくい。
暑ければそのまま、寒ければ敷布団を敷けば温かくなる。
「これは良いですね」
「うん。でも、一晩寝てどっか痛くなったりしないか確認しないとね」
ベッドとは違うから腰だったり肩だったりが痛くなる可能性もある。
石畳の上で薄い布に包まって寝るよりは100倍マシだとは思うけど。
ビーチチェアの効果は多分にあったと思う。
身体に残る疲労が段違いで一晩寝れば全回復する。
床で寝る場合はどうしても微妙に疲労が蓄積されていく。
1日2日であれば問題無いと思う。荷物を増やす訳だから費用対効果として短期間であれば持ち込む手間や帰りに持てるドロップ品の量が減る事を考えると微妙なラインだが長期ダイブとなると持ち込んだ方が確実に効率が良いと思う。
もったいなく感じるが最悪の場合は使い捨てでダンジョン内に放置して帰って来ても良いと思う。
そこまで値が張る訳でもないし。
ダンジョンに快適性を求めるのは間違っているだろうか。
そうして快適にユーダリルダンジョンの攻略を進めた。
序盤は比較的スピード重視で結構飛ばしたが、途中からはゆっくりまったりと攻略している。
「こんなゆっくりで良いの?」
「このくらいが疲れも溜まらずに丁度宜しいかと」
アリシア曰く。
序盤は他の冒険者とバッティングする可能性も高く。不用意な接触を避ける為に序盤はスピード重視で攻略を進めたそうだ。
「次の階層でしばらくドロップ品を集めようかと思います」
「分かった」
その階層から現れだしたモンスターはケルンという名前の牛だった。
表皮が全て岩で出来ていてシルエットが牛なだけで、これはロックゴーレムとかに分類されるじゃ?とは思ったがちゃんと牛らしい。
そして、ドロップはルナモンドというアーモンド状の赤い宝石とケルンの肉。
「これはどうする?」
「一応、嵩張らないですし収納をお願いします」
ルナモンドも売ればそこそこの値段になるらしいがアリシア的にはケルンの肉の方が重要らしい。
表皮の硬さに反して肉は脂が乗っていて柔らかく美味しいそうだ。
アリシアは相変わらず、ダンジョンでも肉を求めていた。




