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2話 最期

冒険者ギルドからの扱いは地に落ちた。

いや、扱いが180度変わったと言うべきか。


貴族、もしくは貴族に匹敵する地位を持つ高ランクの冒険者。

そんな人達が怪我をした時の回復要員。


但し、パーフェクトヒールという名前が本当にパーフェクトなのか。

どこまでの怪我なら治せるのか。病気にも対応出来るのか。呪いや毒、スキルに依るデバフ等にも対応出来るのか。


いざという時の為に検証も出来ない。

何故ならば2/3という事は残りが2回しか無いという事だから。


もしかしたらどんな怪我でも治せるかもしれない。でも、それがガセだった場合・・・俺のパーフェクトヒールをアテにした貴族がもし助からなかった場合。

その場合は冒険者ギルドをも巻き込む責任問題になる。


そこで冒険者ギルドが俺に対して取った対応は・・・。

無かった事にする。パーフェクトヒールなんてスキルは知らない。冒険者からそんなスキルの報告は受けなかった。という事にしたのだ。


その結果、俺はギルド内でも孤立して誰もパーティーを組んでくれなくなった。

最初のパーティーが全滅したのも俺の所為という噂のオマケ付きだ。


そうして俺の底辺異世界生活は幕を開けた。


冒険者の主な収入源はダンジョンに出没するモンスター達から剥ぎ取った素材や魔石だ。

素材はモンスターに依って買い取り対象になる部位は異なるがどのモンスターでも共通しているのが魔石だ。

基本的にどのモンスターも心臓の位置に魔石があり、魔石をエネルギーとして動いている。


魔石を砕いてしまえば完全なる急所なので討伐は出来るが魔石に依る収入が無くなってしまう。

そんな魔石の値段もモンスターに依ってピンキリで。ダンジョンの低階層に出るモンスターの魔石はパンが1つ買える程度の買い取り額にしかならない。


何故、そんな説明をしているかと言うと・・・俺がその低階層の雑魚モンスターから出る魔石を集めて生活費を稼いでいるからだ。


低階層は戦っても金にならないという事で大抵のパーティーは雑魚モンスターを無視する。

とはいえ、向かって来るならば斬り捨てるしかない。

そして、そんな雑魚モンスターをわざわざ解体して素材を剥ぎ取り魔石を回収する訳も無く。

ただただ斬り捨てられている。文字通り斬って捨てられている。


その捨てられたモンスターから二束三文の素材を剥ぎ取り魔石を取り出す。

そして、それを冒険者ギルドで買い取って貰い日々の生活費に充てる。


一発逆転を夢見てそんな底辺の生活に耐え忍んでいた。

必死に金を貯めこんな生活から抜け出そうと試みるも・・・冒険者達からスカベと呼ばれギルド職員からも見下され・・・殴られて金を奪われても助けてはくれない。

武器も防具も奪われた。雀の涙程の貯金も奪われた。


もはや尊厳すらも無い。


そんな生活も気が付けば20年経って居た。


こんな人生ならばもう終わらせてしまおう。

なけなしの貯金を使って最後の晩餐を・・・と、思うも門前払い。


小汚い格好をしているのもあるだろう。

臭いが問題なのかもしれない。

でも、それ以上に俺はこの街の全ての人から見下されている。


最期にまともな食事を。と、思ってもそんな事すら叶わない。


あちらの店を断られ、こちらの店を断られ、最期なんだから・・・最期に美味しい食事を。

そう思いあちこち回ったがどの店も門前払い。


気付いた時にはこの街で近付いてはいけないと言われている危険なエリアに入り込んでいた。

犯罪者の巣窟であり違法な商品を取り扱った店等が立ち並ぶエリア。


最早、まともな物が食べられれば何でも良いや。と、やけくそ気味に気になった建物に入ると。


「いらっしゃいませ。本日はどういった商品をお求めで?」


こんなまともな対応をされたのは何年振りだろうか?


「えっと、ここは何の・・・」

「奴隷商にございます」

「ど、奴隷・・・」

「はい。戦闘奴隷に愛玩奴隷に何でもございます。お客様はどういった奴隷をお求めでしょうか?」

「えっと・・・」

「そうですね。まずはご覧頂きましょうか」


有無を言わせぬ雰囲気に何も言えず後を着いて行く事しか出来なかった。


「こちらの奴隷は元Bランクの冒険者でして。多少の制限はございますが戦闘に置いては当店随一にございます」

「は、はい・・・」

「こちらは没落貴族の一人娘でして。まだ生娘ですのでそこそこ値は張りますがいかがでしょうか?」


この街にこんな場所があったなんて。

20年も居たはずなのに全然知らなかった。


「ふむ。ご満足頂けない様ですね。失礼ですがご予算をお聞かせ願えませんでしょうか?その金額に見合った奴隷をご紹介させて頂きます」


予算・・・俺にそんな物があるはずもない。


「これが俺の全財産だ」


ポケットをひっくり返すと銅貨と銭貨が鈍い音を立てて床に転がった。


「なるほど。それでしたらこちらへどうぞ」



どうせ終わらせるつもりの命だ。

最期に美味い物を食いたかったがそれももういい。


いつの間にか現れた屈強な男2人に挟まれ奴隷商の後ろを着いて行く様促された。


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