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17話 散歩

ユーダリルダンジョンの9階層でボアファングとラッシュブルの肉料理に舌鼓を打ち。

大量にあった料理もみるみるウチに減っていき最後には綺麗サッパリ無くなった。


初めて2人と会った日。あの時は俺の胃も小さくて全然量が食べられなかったが今では結構な量を食べられるようになった。

とはいえ、アリシアにもアリスにも食べた量は遠く及ばない。

相変わらずこの2人は細いクセに尋常じゃない量を食べる。それとなくアリスに聞いた事があり、その時に言っていたのは厳密に言えば食べる必要は無い。空気中の魔力を吸収しているからエネルギー自体は補給出来るので餓死する事も無い。

食事を魔力に食べた傍から変換出来るそうで・・・実質、無限に食べる事が出来るそうだ。

ただ、その光景を(はた)から見ていると物理法則を無視している様にしか見えないので違和感しかない。


「2人共食べるの好きだよね」

「生きる意味ですからね~」

「お恥ずかしい限りです」

「美味しそうに食べるから見てるこっちも幸せな気分になるよ」


本当に美味しそうに食べる。余りにも美味しそうに食べるからつられて俺も食べてしまう。

その結果、胃が拡張されてどんどん食べる量が増えている。


見た目年齢は20歳前後ではあるが実年齢は35歳。アラサーを卒業してアラフォーになっている。

そうなるとそろそろ成人病等が怖くなってくる。

心配になってアリシアに尋ねると。肥満も状態異常になるから状態異常耐性スキルのおかげで問題無いそうだ。当然、その他内臓疾患や風邪等にも対応しているらしい。


言われてみれば、全然風邪もひかないし体調を崩す事が無くなった。


食後、狩りを再開しヌララグスとモスビーを狩りまくった。


「ずっとここで狩るの?」


払い除けるだけで倒せてしまうので、ここで狩りを続けても戦闘経験にはならない気がする。


「もうそろそろ大丈夫です」

「もっと潜る?」

「いえ、一旦街に戻りましょう」


という訳でアスガードに戻ってきた。

冒険者ギルドでヌララグスの肉を買い取って貰い。アイテムボックスの中はかなりスッキリしたがボアファングの肉もラッシュブルの肉も蜂蜜も1つたりとも売らずにアイテムボックスの中に収納されたままだ。


「ありがとうございます」

「いえ」


ヌララグスの肉の買い取りは意外と喜ばれた。

理由としては買取額としてラッシュブルの肉が1番高く、次いでボアファングの肉。ヌララグスの肉はラッシュブルと比べると2/3程だそうで。3階層から持ち帰る事が出来るラッシュブルの肉と8階層のヌララグスの肉。どちらを持ち帰る?という話でヌララグスの肉の買い取りは滅多に無いがコアなファンが居て稀にクエストとしてヌララグスの肉の納品もあったりするらしい。

クエストは今出ていないので追加報酬は無いがランクアップの査定にプラスにしておくと言われた。


そして、ヌララグスの肉があるならば蜂蜜も持っているだろうという事で。蜂蜜も買い取ると言われたがアリシアによって拒否された。

蜂蜜は常設クエストなので買い取り額も高いのに・・・。


冒険者ギルドを後にして再び金の稲穂亭へと向かい宿を取った。


「厨房?別に構わないが」

「別途料金をお支払いさせて頂きますので」

「んー、作ったヤツ。俺にも食わせてくれるならいいぞ」

「でしたら振る舞わせて頂きます」


アリシアは厨房を借りて何か作るようだ。アリスは買い物に出掛けて、俺は1人する事がなくヒマになってしまった。


「ちょっと散歩に行ってくる」

「お気を付けて」

「はーい」


陽も傾き始めているのでそんなに出歩く事は出来ないが気分転換に散歩は丁度いい。

特に、ダンジョンという閉鎖空間に長時間居ると外に出たくなる。


適当にブラブラと歩くが来たばかりの街でどこに何があるのかも分かっていない。


「あれ?どこだっけ、ここ・・・」

「家具工房の近くですね~」

「!?」


突然、後ろから声がして飛び上がった。


「い、いつから・・・?」

「ん~、金の稲穂亭を出た時から?」

「最初じゃん!」

「帰ってきたらご主人様が出ていくトコだったから~」

「声掛けろよっ」

「え~」

「とりあえず、その荷物」

「ご主人様ありがと~」


両手いっぱいに抱えた荷物をアリスから奪い取りアイテムボックスに突っ込んでいく。


「どこ行くつもりだったんですか~?」

「適当に散歩だから目的地は無いよ」

「ふ~ん」


目的も無いのでそろそろ宿に戻ろうかと思ったが。少し先の家具工房の前に馬車が止まっていて何かを積み込んでいるのが気になったのでそれだけ見てから帰る事にした。


「あれ、何してるからだけ見てって良い?」

「は~い」



この思い付きを発端に俺とアリスが酷い目に合う事になるとは・・・この時、誰も予想だにしなかった。


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