15話 三連星
パワーレベリングによってレベル自体は上がったが。その弊害として戦闘経験の無さや戦闘スキルの低さがある。
そこを補う為にユーダリルダンジョンでは俺の判断で戦闘を行い判断力を高める訓練を行う事となった。
「危なくなったら助けてくれるんだよね?」
「・・・・・・」
「え?」
「ご主人様お1人で判断し攻略して下さい」
「マジ?」
マジらしい。
ビビりながらユーダリルダンジョンを進むと1つ目のコウモリが現れた。
「アイバットです」
「う、うん」
名前しか教えてくれないみたいだ。
初心者向けの安価な装備らしいが盾にしろ剣にしろ、ゴロツキ冒険者達に奪われた20年振りの装備となる。
やっぱり盾があるだけで安心感があるし、剣があれば強気にもなれる。
そして、目前に現れたアイバットは俺に対してゆっくりと向かってきた。それを盾で払い除ける。
ポフッ───。
「如何ですか?」
「え?消えたよ?」
「はい」
ここ、ユーダリルダンジョンではモンスターは倒すと煙になって消えるらしい。
後に残るのは死骸ではなくドロップ品。
「へー、解体しなくて済むから便利だね」
だが、アリシアの言うドロップ品は無かった。
「進みましょう」
「う、うん」
言われた通りどんどん進む。アイバットが出る度に盾で払い除けては煙となって消える。
そうしてしばらく進むと階下へと下りる階段が現れた。
「こちらがセーフエリアとなっております」
「うん」
「休憩等の判断もご主人様がお願いします」
「わ、分かった・・・まだ進む」
「はい」
これまで何をするにもアリシアの指示通り、全ての判断をアリシアに任せてきた。
それを自分でしなければならないというのは中々にプレッシャーを感じる。
まだ大丈夫だろうけど、自分の判断で自分は疎か2人を危険に晒す可能性があると考えると何をするにも簡単には判断を下せないような気になってくる。
2階層も順調に進む。1階はアイバットしか出なかったが2階はアイバットとボアファングという名前のイノシシが出てくる。
アイバットは1階も2階も大差なくゆっくりと向かって来るだけで脅威ではない。
ボアファングはファングと名に付くくらいなので大きな牙が特徴だ。
身体も大きく、大きな牙を持ったイノシシがこちらに向かって突進してくると思うとかなりの脅威だ。
アイバットとは比べ物にならない。警戒レベルを引き上げないと!と、思ったがボアファングも突進とは言えない程にゆっくりと向かってきた。
アイバット同様、ボアファングも盾で払い除けると簡単に煙になって消えた。
何匹か倒し、アイバットから銭貨や綺麗な石がドロップしたがアイテムボックスを無駄に圧迫するから放置で良いと言われた。
綺麗に見える石だけど宝石ではなく綺麗な石なだけらしい・・・。
そして、ボアファングの方は肉と毛皮をドロップした。
毛皮は綺麗な石同様邪魔だから放置で、肉の方は全て回収するよう言われた。
売る事も出来るらしいがかなり美味しいらしい。
「3階層がお勧めです」
「そうなの?」
「はい」
という事なのでアリシアに従って1階2階の探索はそこそこに3階へと向かった。
「なるほどね」
3階層に現れるモンスターはボアファングとラッシュブル。
ラッシュブル。これまた名前の通り、突進をしてくる雄牛でコイツも角がある。
コイツも真っ直ぐゆっくりと突進してくるので難なく盾で払って煙になる。
ドロップ品もボアファングと同じく肉と革。なので、革を放置で肉のみをアイテムボックスに収納。
ボアファングの肉も美味しいがラッシュブルの肉も美味しいらしく。アリスから一旦帰って食べたいと提案されたがアリシアによって一瞬で却下されていた。
「この先は大したのは居ないので9階層まで一気に進むのが良いかもしれません」
「分かった」
アリシアが言うんだからそうなんだろう。そう思って脳死で従ったが・・・。
次の階層から現れだしたデカい猫は問題無かった。でも、その次の狼がちょっと問題だった。
これまではモンスターは単体で現れていた。稀に複数で現れる事はあっても群れという訳ではなくたまたま複数と遭遇した。そういった感じだったのが狼・・・ワードウルフというらしいが。この狼は群れで連携を取って来るのだ。
左右でフェイントを仕掛けてきたりジェットストリームアタック的なのを仕掛けてきたりと大したのは居ないと言うには憚られる様なモンスターが居たりもした。
にも関わらず大したのは居ないとアリシアが言い切ったのには理由がある。
これは俺の想像でしか無いし本人に聞くのはちょっと怖い。
きっとコイツらは肉をドロップしない。
簡単な理由だが恐らく外れては居ないと思う。




