13話 金の稲穂亭
守衛さんに冒険者ギルドとオススメの宿を聞いてから街に入った。
「まずは冒険者ギルドに向かいましょうか」
「うん」
門をくぐり抜け少し歩くと直ぐに冒険者ギルドがあった。
これまでの冒険者ギルドとは少し様子が違っていて、マカロニウエスタンよろしくな扉を開けて中へと入った。
ここの冒険者ギルドはギルド内に食堂があるようでイートイスペースでは昼間から冒険者達が飲んで盛り上がっていた。
「すみません」
「はい」
ギルド職員さんへの対応は全てアリシアに丸投げしてボーっとギルド内を見回していると。
「なんだ?お前、ガキが良い女侍らせやがってよぉ」
ヤバそうなヤツと目があってしまい、因縁を付けられてしまった。
こういう場合は無視するのが1番。職員さんも居るんだからきっと止めに入ってくれるはず。
「てめぇ、こっち見ろや。ぶっ殺すぞっ!」
後ろから肩を掴まれ、グイっと・・・いや、弱いな。優し~く引っ張られている。
「ぐっ・・・なんだ・・・?おいっ、てめぇ・・・ふんっ!」
トンッ───。
「うっ・・・」
ドサッ───。
「おそろしく速い手刀。私じゃなきゃ見逃しちゃうね~」
「え?」
「ウチの所属冒険者が失礼しました」
「あ、いえ・・・」
深く頭を下げ、謝罪をする金髪ロングの女性。恐らくここのギルド職員さんなんだろう。
頭を上げ、こちらを向くとびっくりする様な美人だった。いや、ウチのアリシアとアリスも美人だけど系統が違う美人だった。
「どうかされましたか?」
「あ、いや、大丈夫です」
「それでは失礼します」
「あ、はい」
再び頭を下げたのかと思ったら、少し屈んで手刀を喰らい気絶している冒険者の片足を掴み引き摺りながら歩き出した。
「あ、シフさん!この方達の対応代わって貰えませんか?」
「どうかしたの?」
職員さんがカウンターから出てきてシフさんに耳打ちする。
「分かりました。それじゃあリサちゃんコレお願いね」
「え?どうするんですか?」
「邪魔だから裏に捨ててきて」
「分かりました!」
と、冒険者の片足を渡した。
するとリサちゃんと呼ばれた職員さんは少し重そうにしながらも冒険者を引き摺り建物の奥へと向かっていった。ちなみに顔は下を向いていたので気が付いた時には地獄を見そうだ・・・。
「すみません、代わらせて頂きました」
「はい」
「こちらにいらしたのはユーダリルが目的でしょうか?」
「そうですね」
「それでしたらお願いがございます」
「お応え出来るか分かりませんが」
ユーダリルというのは、ここアスガードの近くにあるダンジョンで。そこの比較的深い階層のドロップ品を回収した場合は売って欲しいという事だった。
ユーダリルダンジョンが目的らしいが。今回も当然、俺は目的を知らされていない。
なので現時点で分かっているのはユーダリルダンジョンに行くという事。
うん、それくらいしか俺には分からなかった。
オススメの宿を聞いたところ。守衛さんと同じ宿の名前が挙がったのでその宿に向かう事になった。
「すみません」
「泊まりかい?」
「はい。3人2部屋で3日お願いします」
「飯は?」
「お願いします」
「朝晩2食。朝の6-8時、夜の7-9時。この時間に来れば飯が出る。来なきゃ出ない」
「はい」
「先払いで銀貨5枚だ」
「はい」
「ニーナ、ニーナー。お客さんだー、案内頼むー」
「はーい。今行きまーす」
ここのオーナーだろうか。熊のように厳ついおっさんが、見た目そのままのようなぶっきらぼうな接客をしていて大声で呼んだ相手は娘さんだろうか?熊とは似ても似つかない可愛らしい女の子だった。
「おまたせしました」
「おう、ニーナ。このお客さんの案内頼む。2の1と2の2だ。ほれ鍵」
「はーい。こちらになります」
赤毛をおさげにした女の子の後に続いて階段を上がる。
「トイレは1階にあります。お水が必要でしたら中庭に井戸があるのでそちらをお使いください。お湯は1日に桶1杯なら無料です。それ以上は1杯につき銭貨2枚です。今持ってきますか?」
「大丈夫です。ありがとう」
「はい。ごゆっくりどうぞ」
2の1が少し広くベッドも2つあったのでそちらがアリシアとアリスの部屋で2の2が俺の部屋だ。
少しショックだったのはお湯が貰えるという事はここに風呂は無いという事だ。
ビフロストダンジョンを通過して、潮風で髪もガシガシになっているし身体もベタついている。
洗うのであれば井戸で全身水浴びした方がサッパリするかもな。
「宿も確保出来ましたので公衆浴場に行きたいと思うのですが」
「お?あるの?」
「はい。先程、冒険者ギルドで場所を聞いておきました」
それから3人でお風呂に向かい旅の疲れを洗い流した。




