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12話 ATB

ミズガルズにあるビフロストダンジョンの上層階は主に食用の魚が捕れる。

小アジくらいの小さなサイズからカツオやブリのような1mを超えるサイズのものまで穫れるようだ。


ただ、それらは普通の魚ではなくモンスターなので気性も荒く体長1mを超えるモンスターが時速50km以上で体当たりをしてきたりする。

なので気を抜いた半裸の冒険者が体当たりを喰らう事故が後を絶たない。


とはいえ、そこまで確率の高いものでは無いので低ランクの冒険者にとっての主な収入源となっていて、ミズガルズの台所を支えているのも上層階に現れるこういった小型の魚型モンスターだったりもする。


もしも俺が召喚されたのがヘルヘイムではなくミズガルズだったなら。

早い段階でヘルヘイムに見切りを付けてミズガルズに移動していたなら。

こんなにも無為に苦しいだけの20年を過ごさずに済んだのではないか?そんな考えが頭をグルグル回り続ける。


「上層に用は無いのでとにかく進みましょう」


ここビフロストダンジョンは広い海のフィールドの真ん中に橋があり、そこを進むだけで階下へと通じる階段まで問題無く進む事が出来る。

進む事が容易な為、自身のレベルに見合わない階層まで進んで自滅する冒険者も後を絶たないそうだ。


とにかく進む。どんどん進む。しゃにむに進む。

そして、階段周辺はセーフエリアとなっていてモンスターも侵入して来ないので、階段に腰を掛けて食事休憩を取る。

そして、また進む。モンスターは無視して進む。

アリシア、俺、アリスの順番で。縦になって進む。

正面から向かって来るモンスターはアリシアが海に叩き捨てて進む。後ろから襲って来るモンスターもアリスが対応して進む。


「そろそろだったと思います」


どこを目指しているのかは分からないが目的地があったようだ。

聞いたところで教えて貰えないだろうと思い聞いていない。


アリシアの予言通り、階段を下りると先程までとは毛色の違う階層に辿り着いた。

ここに来るまでにスタートしてから3日程掛かっている。


「もしかしてここ?」

「はい」


これまでは主に海のフィールドが大半を占め。川や沼に湖にマングローブが生い茂る潮の干満があるフィールド等多岐にわたっていたが、ここはそれまでのどの階層とも違っていた。


それまで一面が水に覆われていたがここは普通に地面がある。

これまで通り橋はあるが地面に埋まっているので橋というよりは舗装された道といった感じだ。

そして、これまでと最も違う点としては湖畔に佇むお屋敷があった。


「用ってあのお屋敷?」

「いえ?」

「あ、違うんだ・・・」

「参りましょうか」

「うん」


違うとは言うが橋から外れてお屋敷のある方向へとアリシアは進んでいく。

そして、お屋敷の脇を通り過ぎて森の中へと入っていく。


ここでようやくずっと感じていた違和感に気が付いた。

モンスターが居ない。もっと言うならば生命反応が薄い。

森があり湖があり草原もある。でも、生き物が居る気配がしない。

その為、耳が痛い程に静かだ。


風による葉擦れの音しかしない森の中を進むとそこに現れたのは。


「虹?」

「はい」


足元から虹が生えている。そして、谷の向こう側へと架かっている。

虹の麓には宝が埋まっている。そんな話を聞いた事がある。


「もしかして、ここに宝物が?」

「??」


違ったようだ。


「ただの橋です」

「あ、そうなんだ・・・」

「では」


と、何の躊躇も無くアリシアが虹の橋に足を掛け、そのまま登っていった。

続いて俺も虹に足を掛けるとツルツルしてそうな見た目に反してしっかりと足が掛かった。

そして、ワンチャン・・・エスカレーターみたいに歩かなくても進みそうな雰囲気もあったが残念ながらそんな事も無かった。


そんな一喜一憂しているのを躊躇していると思われたのか。


「置いてかれますよ~」


と、アリスに背中を押されながら進んだ。


遥か彼方に見えた虹の橋も渡ってみればそこまでの距離では無く。数分後には向こう側に着いていた。


「これが本当のビフロストです」

「ん???」

「本来はこの橋の事をビフロストと呼ぶのですが。いつの間にかダンジョンの事を指す言葉に変わった様ですね」

「へー」


これも200年以上生きている生き字引としての知識か。


虹の橋を渡り、対岸の森の中を進む事数分、街道が見えてきた。


「もう直、街が見えてくるはずです」

「おぉー」


やっと壁も天井もある部屋で。そして、ベッドで寝れる。


街道の左側は針葉樹の森で反対側は見渡す限り黄金色に輝く麦畑が広がっている。

そして、ここの街道は定期的に馬車が通るのだろう(わだち)が出来ていてそこそこ足を取られる。



定期的に轍に足を取られながらもようやく街に着いた。


「見ない顔だな。身分証の提示を」


ミズガルズと比べると小さな街壁で門も小さいが守衛さんがしっかり居て、身分証の提示を求められた。


「はい」

「おおっ・・・Aランクが2人にBラン・・・ク?」


うん、見えないですよね。分かります。


「とりあえず、ようこそアスガードへ」



この街はアスガードというらしい。

ミズガルズと比べると地味で小さそうな街だけど美味しい物があれば良いなぁ。


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