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11話 調書

ミズガルズは大きく綺麗な街で俺が20年間過ごしたヘルヘイムとは似ても似つかなかった。

ヘルヘイムは1年を通してほぼ晴れる事は無く薄暗い街で陰鬱な気分になる。

最底辺な生活を送っていたから余計にそう思うのかもしれないが・・・そんなものとは比べ物にならない程に煌やかな街並みだ。


「ご主人様~。あれ美味しそうですよ~」

「お?買う?買っちゃう?」

「買っちゃいましょ~」


謎に観光地テンションになってアリスと2人で買い食いをしたりして満喫している。


宿に戻ると大量の食料に消耗品が所狭しと積み上げられていた。


「お、おぉ・・・」

「アイテムボックスにお願い致します」

「うん。もしかして、もうダンジョンに?」

「はい。そろそろ疲れも取れた頃かと思いまして」

「俺とアリスは観光とかしたけど、アリシアはずっと働いてたみたいだし大丈夫?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですので」

「うーん・・・1日だけ、明日だけ皆で回らない?」

「1日くらい良いでしょ~」

「そうですね。ご主人様がそう仰られるのであれば」

「やった~」


珍しく気を使えたと思ったが・・・これがまた一波乱起こす要因の1つとなってしまった。


アリシアの予定では明日からダンジョンに行く予定だったらしいが。明日は1日観光に充てて色々な場所を巡り英気を養った。

そして、宿に戻ると荒らされていた。

高級宿なのでセキュリティもしっかりしているはずなのだが部屋に置いてあったカバンは中身を全てひっくり返されベッドまでひっくり返されていた。


あまりの衝撃に固まっていると。


「小用が出来ましたので少しばかり出掛けて参ります」


と、アリシアが深く礼をして部屋を出ていった。


「あ~、やっちゃたね~」

「どういう事?」


アリス曰く。冒険者ギルドで対応された欲しい欲しい言ってた何とかってヤツが犯人っぽい。

確証は無いけど、何かやってきそうな雰囲気があったそうだ。


とりあえず宿の従業員を呼んで現状を見せると別の部屋を用意するから移るように言われた。

が、アリスにそれは止められた。

証拠隠滅の恐れがあるからアリシアが戻るか責任者が来るまでは現状保持すべきだと。


しばらくすると宿の責任者がやってきて正式な謝罪を受け厳正な調査を行う事を確約された。


そして、アリシアが帰ってきた。

冒険者ギルドのスリュムの首根っこを押さえて。


事のあらましは・・・。

弱そうな主人と美しい2人のエルフの従者。

きっと弱味を握っているのだろう。だから、それを奪えば2人を自分の物に出来る。

それで手駒の冒険者を使って宿を荒らさせたそうだ。


これにより、主犯のスリュム、実行犯の冒険者3名、冒険者から賄賂を受け取って部屋に入れた宿の従業員が逮捕となった。


「俺が1日観光しようとか言った所為だよなぁ・・・」

「悪いのは犯罪を行った者です」

「それはそうだけど・・・」


あまりにも間が悪くて、自分を責めてしまうのは仕方ないと思う。

何故、そんなにも落ち込んでいるかというと。

信用ある冒険者ギルドの職員が犯罪に関わっていた事に対する調査なので何度も事情聴取を受けダンジョンに行く事も他の街に移動する事も禁止され宿に缶詰にされていて気が滅入ってしまったのだ。

余罪もあるだろうからと調査は長引き・・・余罪なんて俺達には関係無いから開放してくれと訴えるも被害者というのは得てしてそういうものだと言われてしまった。

運が悪く被害を受け、その上で無駄に拘束され、被害に見合った賠償もされず、何のメリットも無ければ失うものしかない。申し訳ないがそういうものだと調査に当たっている騎士団に言われた・・・。


宿代も滞在費も全て冒険者ギルド持ちとはいえ1ヶ月近くミズガルズの高級宿に缶詰にされダンジョンにも行けず観光も出来ず食べ歩きも出来ず散々だった日々もようやく終わった。


「それではビフロストダンジョンへ参りましょうか」

「うん」


冒険者ギルドのお偉方に見送られビフロストダンジョンへと足を踏み入れた。


「海だっ」

「ご覧になられた事がおありで?」

「うん、元の世界でね」



海はそこまで身近な存在ではなかったが夏休みの家族旅行で毎年海には行っていた。

元の世界に残してきた家族達はどうしているだろうか?両親ももう60を回っているはずだ。

もしかしたら今会ったとしてもお互いに気付けないかもしれない。

俺も14歳から34歳になり・・・見た目は20歳前後になったとはいえ、それでも両親が俺を最後に見た時から6年程経った姿のはずだから分からない可能性は高い。


海を見て、そんな感傷に浸っていたが実際に眼の前に広がっているのは・・・半裸の冒険者が網を振り回していたりと・・・そんなセンチメンタルなんて吹き飛ぶ様な光景だった。


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