「テーマ:時間」
桜吹雪と共に、感情が溢れ出す。気がつけば僕は彼女に見惚れていた。15歳にして初めての恋、というものである。
彼女について知っていることとすれば、僕が毎日通るであろう道で同じ時間、歩いていること。つまり近所に住んでいる、ということである。お近づきになりたいと考えても簡単に行動出来ないのが、恋という複雑怪奇な感情の難点だ。なぜこうも矛盾した気持ちが同時に出るのか?
気がつけば僕は22という歳になっていた。彼女は最近もこのあたりを歩いているが、頻度が少なくなった。もちろん、彼女に対しての気持ちは変わらない。……!?彼女がこちらに近づいてくる!後ろを振り返るが誰もいない。間違いなく僕に用があるようだ。意を決して、彼女を見る。
「……あなた、この7年間ずっと同じ時間にいたわよねぇ……」
「にゃあ〜……」
「どこの猫なのか知らないけど……あなたのお陰で、救われてたの。最後だから、こんなこと、言えるけど……」
「……」
「あなたはもう、長く無さそうね……それじゃ、行かなくちゃ」
「にゃ……」
あぁ、行ってしまう。そう思うと同時に、ここ最近で随分鈍くなってきていた手足の感覚が一気に無くなってゆく。地面に、うずくまる。あぁ……なんだか眠気が——
薄れゆく意識の中で、彼女を想う。……なぜもっと早く、こちらから行動しなかったんだろう。そうすれば、もっと早く、こんなにも温かくて、心地良い思いができたというのに。
7年前と同じように、感情が溢れ出す。その刹那、桜吹雪が魂をさらっていった。