使い捨て
「まあ、骨折くらい自分ですぐ治せるでしょ」
ビードは笑いながらイエールの肩をたたいて言う。
「いや、まあそうなんだけどな」
イエールは痛がりながらもさらっと返す。
「すまない、こんなつもりではなかったんだが」
ナイ―ドはイエールに頭を下げる。
「おいおい、仲間の骨を折るなんてひどい奴らだな」
カイルが目を覚ましたようだった。
「ふふふ、あんたなんか味方に撃ち抜かれてるだろ?」
ビードはにやにやと笑みを浮かべながらカイルに対して答える。
「では、尋問を開始しましょうか」
ルージュはカイルの目の前に移動する。
「10年前の二つの剣術道場の大量変死事件。警察は何か隠しているわね。真相は?」
「……」
カイルは沈黙を貫く。
「黙ってちゃ分かんねーだろ?えー?」
ビードはカイルの顔を蹴り上げる。
「ぐふっ」
「知ってる情報はさっさとはいておいた方がいいぜ。俺らも意味もなく拷問する趣味はないんでね」
「ふん、ごろつきどもが、体制側に逆らったお前らに未来はないよ、ふふふふ……」
「あーあ、これは長引きそうだね。おい、左腕は治ったか?死にそうになったら治療頼むぜ」
「そんな早く治るか!」
イエールは左手を治療しながらビードに怒鳴る。
「ははは、警察から出ても、拷問用の治療係か」
「うっせーぞこら!」
イエールはビードと同様にカイルの顔を蹴り上げるがカイルはびくともしない。
「ははは、まったく君の非力さには昔から笑いがこらえきれんね」
「ごちゃごちゃ無駄なことはいいから質問に答えろ!」
ナイ―ドが連続でカイルの顔にけりを入れ、帯刀していた刀を抜刀し、カイルの耳を切り落とす。
「がー!」
「はー、はー、次は首を切り落とすぞ!」
ナイ―ドは大きく息を乱して、カイルに向って迫真の勢いで言う。
「まあ落ち着けよ、こーゆーのは初めてか?お前が取り乱しちゃ尋問になんねーだろう?」
ビードはナイ―ドの肩に手をかける。
「はー、はー、そ、そうだね。ありがとう」
ナイ―ドは数回深呼吸をする。
「ははは、大丈夫なのかね、君。無理はせん方がいいよ」
「無駄口はいいから早く答えなさい」
ルージュは落ち着いたトーンで話しかけ、あっさりとカイルのもう片方の耳を切り落とす。
「がー!君の方は肝が据わっているようだね。若いお嬢さんのくせして」
ルージュは無表情で次にカイルのくるぶしから下を片方切り落とす。
「がー!」
「学ばないようね。イエール君、止血お願い」
「本当人使い荒いな、あんたらも警察も。止血くらい素人でもできるだろう。俺はこぶしが折れてんだぞ」
イエールはカイルからそこそこ離れたところにすでに移動していてそこから反論する。
「僕がやるよ」
そういってナイ―ドがカイルの止血をする。
「事件について知っている情報を全部吐くまで苦痛が長引くだけよ。こっちには名医もいるみたいだし、死ぬことは当分無理みたいよ」
ルージュは無表情で淡々とカイルに言って聞かせる。
「私が君たちごときに屈すると思うかね?殺したま……」
バーン!
突然カイルが内側から爆発した。
「おっと、危ない危ない」
ビードは素早くかわして無傷だった。
「うっ」
ナイ―ドはルージュを抱えて爆発から距離をとっていた。ルージュは無事だったようだが、ナイ―ドは少し傷を負っていて、吐血もしていた。
「あ、ありがとう。大丈夫?」
ルージュはナイ―ドに対して礼を言う。
「いや、仲間ならば当然だ。それにこっちは大丈夫だ」
ナイ―ドは若干苦しそうに答える。
「お前、運よく離れててよかったな」
ビードはイエールに近寄って笑いながら言う。
「まあな、お前もかわせるとは思わなかったよ」
「甘く見すぎさ。はははは」
ビードは大笑いしていて、イエールはそうでもなかった。
「それより、この辺にいるんじゃないのか。起爆させた奴が」
イエールが間を置かず言葉を放つ。
「そうだ。それを探さなければ」
ナイ―ドは周りを見回す。
「あれだな」
ビードは指をさす。
「すぐに追うとしよう!」
ナイ―ドが先んじて走る。それに続いてビード、ルージュ、そしてさらに大きく後ろにイエール。
「おい、ちょっと待てー!はーはー」
イエールが後ろから大声で叫ぶ。
「逃げるチャンスじゃねーのか?」
ビードが笑いながら答える。
「ふざけるな!もう俺も一味として認識されてそうなんだから今更単独行動できるか!」
「すぐ殺されちまいそうだもんなー、お前」
「はー、はー、俺は、お前ら脳筋とは、はー、違うんだよ」
イエールとその他はそのまま距離が開いていく。ルージュは後ろを少し振り返るもすぐに前を向いて走る。ビードとナイ―ドは前だけ見て走っている。
しばらく走るとナイ―ドは目的と思われる人物に追いつく。そこには二人組、男と女がいた。
「速いな」
二人組のうちの一人、男の方がナイ―ドに対して言う。
「ごほっ!ごほっ!はー、はー」
ナイ―ドは吐血する。行きも乱れている。
「ふふふ、爆発のダメージが尾を引いているのか?女をかばったりしなければな」
「君たち、仲間を爆発させるなんて正気なのか?」
「君たちはどうせ彼を殺すつもりだったのだろう?」
男の方は笑みを浮かべて腕を組みながら答える。
「……」
「まーそういじめてやるなよ」
ビードがナイ―ドの肩に手をかけて相手の男の方を向いて言う。
「そうだね、彼は甘ちゃんみたいだしね」
相手の男は答える。
「ふふふ、確かに、でもそうじゃない」
「?」
相手の男は少し不思議そうな顔をする。
「あんたらもどーせ爆弾が埋め込まれているんだろう?さっきの爆発で内心恐怖を覚えただろう?それを掘り返してやるなってあんたらを憐れんでいるってだけの話だよ。はははは」
ビードは大笑いする。
相手の男は大笑いしていたビードの口にナイフを投げる。
ビードはナイフを人差し指と中指とで挟んで受け止める。そこからナイフの中からさらに小型のナイフが飛んできて、ビードの舌に突き刺さる。
「がはっ!」
「無駄口をたたく奴は嫌いでね」
相手の男がビードに対して向かってくる。
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