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君に捧ぐ未来  作者: オールドマイン
7/8

犯罪者

 ナイ―ドに吹っ飛ばされて倒れていたイエールはゆっくりと何とか上体を起こす。

「な、何しやがるんだ!」

 イエールはやり返そうと立ち上がるもよろめいて再び倒れる。


「お前のような犯罪者が人々を不幸にしているんだ!」

 今まで穏やかにしていたナイ―ドが急に態度を変えてイエールを罵倒する。

「だったら警察にたてつくようなことしてないで警察はいれよ」

 イエールはナイ―ドから目を少しそらしつつぼそぼそとつぶやく。

「……、黙れ!」


「まあまあ落ち着けよ」

 今にもイエールにもう一度とびかかりそうなナイ―ドをいさめたのはビードだった。

「警察署の真ん前にいつまでもいるのはちょっとあれだろう。続きはここから十分離れてからやろーぜ」

「そうね、それに、カイルに早くいろいろ聞いておきたいことがあるしね」

 ルージュもビードに賛成して意見してくる。


「……、それもそうだね。冷静さを欠いていた。悪かったよ」

 ナイ―ドはビードとルージュに対して謝罪する。そして、床に横たわっていたカイルをナイ―ドは持ち上げる。


「ったく、謝る相手が違うだろーが、くそったれが」

 イエールは座ったままぼそぼそとつぶやく。


「じゃあ、行こうぜ」

 ビードはイエールに対して手を差し伸べる。それをぶっきらぼうにつかんで立ち上がる。それでもふらついてまともに動けなかったので、ビードに肩を貸してもらう。

「おいおい、なんだよあいつ。あれが世界一の医者に対する待遇か?しぶしぶついてってやるってのにありえねーだろ。あいつ外せよ」

 イエールは大きな声で言う。


「……、ふー……」

 ナイ―ドは深呼吸をし、目を閉じて静かに歩く。ルージュはイエールの方を一瞬向く。


「まーまーそんな気にすんなって。やられても自分で直せばいーじゃん」

 ビードは笑いながらイエールの背中をたたいて言う。

「いやそーゆー問題じゃないだろう!」

 イエールは怒りをあらわにしながらぶつくさと文句を言う。


 しばらく歩くと隣の町に到着した。


「じゃあ、とりあえずこの辺までくれば大丈夫でしょう。あとは人目につかない場所を探しましょう」

 ルージュはそういって一同はまた歩き出す。


「じゃあこの辺にしましょう」

 ルージュは人気のない森に入っていき、一同もそれに続く。


「まあ、とりあえず彼は拘束しておきましょうか」

 ルージュはロープでカイルの手足を縛る。


「で、こいつからは何を聞くんだ?」

 ビードはルージュに尋ねる。

「そうね、まずは……」


「その前に」

 ナイ―ドが割って入る。


「イエール君についてさっきの続きをさせてもらうよ」

「あー、そんなこと言ってたな」

 ビードは座り込んで言う。


「イエール君、君は犯罪者といっていたが、場合によっては僕が警察署に送りかえす」

「ちっ、まーた警察署に送り返す脅しかよ」

 イエールは相変わらずぶつくさといっている。


「まー、こいつの医者の腕は確かだし、警察の人間じゃないってだけでいいだろう」

 ビードは軽く言う。

「いや、犯罪者は人々に不幸をもたらしたからこそ犯罪者なんだ。信用できるかは怪しいだろう」

「だからそんなんだったら警察はいれよ。それとも入れてもらえなかったのか?というかお前こそ何者なんだよ。人の素性にうるさいくせに、警察に敵対しようっておまえも十分怪しいじゃないかよ。いや、そもそも警察に敵対って意味ではここにいる奴ら全員犯罪者みてーなもんだろう。現にこいつ拉致してるんだから」

 イエールは縄で拘束されたカイルを指さしながらナイ―ドに吐き捨てるように言う。


「……」

 ナイ―ドは一瞬黙る。


「そうそう、これから警察に対立するってんなら、結局俺らも犯罪者街道を歩むことになるんだからさ。そんなこと気にすんなって。それにこいつの医療技術はガチだからさ。居て損はないって」

 ビードが笑顔で割って入る。


「……、そうだね、確かに、僕らはすでに犯罪者だ。清廉潔白でいようと思っていた僕が間違っていた。すまない」

 ナイ―ドはイエールに対して頭を下げる。


「そうそう、分かればいいんだよ。じゃあ、さっき殴られた分やり返させてもらうよ」

「分かった。遠慮なくやってくれ」


 イエールは助走をつけて全力でナイ―ドの頬を殴る。ナイ―ドはびくともしなかった。

「遠慮はいらない。やってくれ」

 ナイ―ドはまじめな顔でイエールに対して言う。


「いえ、彼は全力のように見えたけど」

 ルージュがまじめな顔で横から口をはさむ。


「……」

 イエールはこぶしをナイ―ドの頬から離す。そして、うずくまる。


「どうしたんだい?大丈夫かい?」

 ナイ―ドはうずくまったイエールを気遣う。

「お前のせいで……、骨が折れただろうがー!」

 イエールはナイ―ドに向って大声を上げる。


「彼……」

 いつも表情をあまり変えないルージュだが、少し困惑したような表情を見せながらビードに小声で言う。


「……まあ、死んだらまた医者を仲間にすればいいでしょ」

 ビードも少し間があったが、いつものように軽く返答する。


読んでいただきありがとうございます~。よろしければブックマーク、評価していただけるとありがたいです~。

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