バラバラな仲間
ビードはカイルが自分に銃を向けるその瞬間に机の陰に隠れて銃弾をやり過ごす。
「おいおいいいのか?残り少なそうな寿命を俺に捧げる羽目になっても」
ビードは物陰に隠れたままにやにやとしたトーンでカイルに対して警告する。
「君の方も早くあきらめた方がいいよ。希望が絶望にかわるときこそ苦痛が激しいというからね」
カイルも笑いながら答える。
ビードは自分が片づけた警官の死体が近くにあることに気づき、それをあさる。
「なんだよ、弾は切れてるし武器もねーな」
ビードはその死体をカイルに向って全力で投げる。
「さっきも見たよ、ワンパターンだね」
カイルは投げられたその死体を刀で一刀両断する。カイルがその後素早く振り返るとそこには高速で迫ってくるビードがいた。カイルは笑って、防御態勢に入る。ビードは防御態勢に入ったカイルのさらに後ろに回る。
「なに!」
バン! パリン! 銃声が響き、窓が割れる。
倒れたのはカイルだった。カイルは腹に銃弾を一発もらって血を流す。
「まったく、ワンパターンなのはあんただよ。背後からお仲間に援護射撃してもらうって。俺が二度も同じ手をくうと思うか?本当に、警察は身内で撃ち合うのが好きなんだな~」
ビードはカイルを盾にして次の狙撃を用心しながら得意げに話す。
「……」
「なんだもう気絶したのか。それとも死んだのか。老人は生命力が足りないな、まったく」
カイルは血を垂れ流しながら無言で目も閉じられたまま動かなかった。
「とにかく早く運ばないとな。おっと、その前に手錠手錠」
ビードはカイルの体を調べる。
「お、あったあった」
ビードはカイルの腰のあたりに手錠の鍵を見つけ、自分の両手を拘束していた手錠を解除する。
そして、ビードは狙撃されないようにカイルを窓側に対してカイルが盾となるように、カイルを運んで建物から出ようとする。
「おいおい、お前何者だよ」
イエールがニコニコしながら狙撃されないように地面を這ってくる。
「お前のおかげでここから出られそうだぜ」
「へ~、そいつはよかったな」
ビードは答える。
「それにしてもお前おそいな~。そんなおっさんほったらかしてさっさとこの建物から出ようぜ~」
「こいつには用があるんだよ。先に行けばいいじゃないか」
「冗談じゃないぜ。まだ下に警察の奴らがいたらやばいんだよ。俺はお前みたいな武闘派じゃないんでね」
「ふふふ、犯罪者はやっぱり警察が怖いか」
ビードは笑いながらイエールに言葉をかける。
「うるっさいね」
イエールは不服そうな表情をするものの、ビードの後ろについて周りを警戒しながら進んでいく。
二人はそのまま進んで、そのまま建物の出口まで来た。
「なんだ、みんな騒ぎですでに逃げたのか。狙撃してきた奴も助けにこね~し、薄情だな。ま、いーか。これで晴れて自由の身かね~」
「なに言ってんだ。お前ここに丸1日もいなかっただろう。ま、お前のおかげで脱出成功よ。一応例はいっておくぜ。じゃあな」
イエールはビードに対して片手をあげ、別れの挨拶をする。
「おいおいちょっと待て、こいつが死んだら困るから、動けないけどぎりぎりしゃべれるって程度に治療してくれ」
ビードは笑顔でカイルの服の背中あたりをもってイエールの目の前につきだしそういう。
「え?いやだよ。その辺の医者に診てもらいな。じゃ」
イエールは笑顔で即答する。
その瞬間、ビードは空いた片手でイエールの襟をつかむ。
「うえっ」
イエールは一瞬首が閉まりうめき声をあげる。
「まあまあ、助けてやったんだから、今後は俺らの医者やってくれ。お前、世界一の医者なんだろう?」
「ふん、俺の技術はそんじょそこらで安売りできるものじゃないんでね。それに、お前みたいないかにも警察からマークされそうな危険人物と組めるか。わかったらさっさとはなせよ」
イエールはじたばたと暴れるも、ビードの拘束から全く逃れることはできない。
「あ、そうだ、じゃあ、いうとおりにしなかったら隣町の交番にお前を連れていくわ。こーゆーのでどう?」
「それじゃあお前もむしょ行きになるだけだろう」
「いや、俺は別に一人で逃げれるから」
「あー、くそくそくそ!放せこのやろう!」
イエールは相も変わらず暴れるも、ビードは全く動じることはなかった。
「決まりだな。これからは意味のある治療ができてよかったな。よろしく!」
ビードはにやにやというわけでは全くなく、シンプルな笑顔でいう。イエールは相変わらずぐちぐち言いながら暴れていた。
そしてビード、イエール、そしてカイルは建物の外に出た。
「あれ?」
ナイ―ドがビードに近づいてきた。
「なんだ?狙撃の奴か?逃げた方がいいと忠告はしといてやるぜ」
ビードはナイ―ドに向って余裕そうに笑いながら言う。
「彼は敵じゃないわ。仲間よ」
ルージュがナイ―ドの後ろから出てくる。
「おー、お迎えかい。手際がいいな」
「僕はナイ―ド・グリッツ。よろしくね。そっちのじたばたしてる彼は……」
「俺はビードだ。で、こいつは……、とりあえずいい腕を持ってる医者だ。これからは多少怪我しても大丈夫そうだぞ」
「おー、それは心強いね。よろしく」
「俺はイエール・イール。世界一の腕を持つ男だ!仲間にしようってのに名前を忘れるな!お前らも覚えておけよ!」
相変わらずイエールはじたばたとうるさかった。
「しかし、ビード君、これは、カイル・ボージュだよね?」
「あー、そうだよ。こいつから話が聞きたいっつうことらしいから連れて来たぜ」
「すごいな君。たった一人で警察内部からこいつを引き出すなんて……。予定以上の成果じゃないか。ねえ、ルージュさん」
「え、ええ」
ルージュは困惑したような笑顔でナイ―ドの呼びかけに一応答える。
「しかし、彼は放っておくと死んでしまうのでは?」
ナイ―ドはカイルの出血を見ていう。
「そうそう、早く治療頼むわ。世界一の医者さんよ」
「……、はあ、分かったよ」
イエールは断る選択肢はなさそうだと判断したようで、しぶしぶとカイルの傷跡を手当てする。
「しかし、彼もまた警察の建物の中から出てきたわけだけど、仲間にして大丈夫なのかい?」
ナイ―ドは小声でビードに対して尋ねる。
「ああ、大丈夫大丈夫。こいつは警察の人間じゃない。何せ犯罪者だからね」
ビードは軽くナイ―ドに対して答える。
「なんだって……」
「ん?」
ナイ―ドの小声のつぶやきはビードには聞こえなかったようである。
「おい、とりあえずこれで死にはしないぞ。ったくよ。この俺をパシリみたいに……」
カイルの治療を終えたイエールは相変わらずぐちぐちといいながら立ち上がる。
「えべれっ!」
突然イエールは顔面を殴られ、吹っ飛ぶ。殴ったのはナイ―ドである。
「このドクズ犯罪者が!」
ビード、ルージュは何が起こったのかわからず固まっていた。
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