うちの従業員はぬかりない
初投稿です読みづらかったらすいません
『ザ…ザザ…、西暦2901年、三月十二日午前4時44分…初めて人類がここに来てから600年、本日は晴れ時々曇り…放射線量は…、…、、魔素濃度…は…、、』
「なぁにが放射線量だ、こんな所でそんなもん聞いても意味ねぇってぇの、なぁイズ」
「まぁねぇ、放射線よりもここは魔素濃度の方が重要だからねぇ。別に聞かなくてもわかるんだけどこの”ラジオ”ってやつお気に入りなんだ。オヤジさん、はい、いつもの」
「おぅ、いつもありがとうよ。それにしてもお前の店は古臭い物から新しいもの、ガラクタまで何でも置いてあるよなぁ」
「それが売りなんでね、行商”シュレディンガー”をこれからもよろしくお願いしま~す」
「あいよ、また来る」
馴染みの客を見送りふと思い返す。
「人類がここに来て600年かぁ、第七世代の私にはわからないや」
ラジオをから流れてくる話に猫耳を澄ませる。
肩まで伸びたキャラメル色にオレンジのメッシュが、入った髪をなびかせながら紅い和服風の服を着た店主は、いつかの本で見た文章を思い出す…。
西暦2301年世界を失った日。
度重なる戦争…、核兵器の使用によって星が壊れ、空間は捻じれ、たどり着いた先は同じように結末を迎えた愚かな人々が集う世界の終着点…【ミラージュ】。
化学兵器によって壊れた世界、または魔法、或いは自然そんな世界の不純物を丸ごと飲み込むとか、どんなゲテモノ食いだと叫んだあの日が懐かしい。
でも、そんな世界でも変わらず人々の営みは続いている…。
「わからないまま世界で暮らしてる方が人々は案外平和なのかもしれないってね」
ラジオも聞きたいけど、そろそろイアが来るから準備でもしますか。自慢の縞模様の鍵尻尾をゆらゆらさせながら、せっせと店じまいを済ませるよう片付けはじめる。
「報告いたします、時刻は4時50分を指しました。次の目的地水都ミルヴァへの移動を推奨します」
「りょうかーい、イアちゃん早くない?」
「次の目的地にて、マスターとエネルギーの供給を約束しました」
あぁー…そういえばこの前ボーナス支給で、水都の高級エナジー約束してたわ。抜かりないな、この旧型美人ロボ。本当に旧型ですか?心なしか圧がすごい…ロボなのに…。
「マスター」
「わかってるよ、大丈夫。イアちゃんお店片付けるから空間魔法のスイッチ確認して魔素シールド解除準備。あと、向こうは放射線量が多いから専用のシールド切り替え準備お願い。終わったら出発するからケットシーのニャルゴ殿達に移動頼める?」
「了解しました、すでに準備は出来ています。ニャルゴ殿に連絡します。」
「…うそ、イアちゃん有能?」
…このロボ出来る!
ジャンクタウンで掘り出してきたかいあったわー、いやー魔科学仕様マジで神こんないい子。いったい誰が捨てたんです?馬鹿です?起動しないからってすぐにポイした奴ギルティー。
「…イアちゃん、私イアちゃんと結婚す「すみません、よく聞き取れませんでした。」
「そんな急に翻訳機みたいな返答ってある?!」
イアちゃん、仕事早いね…。高級エナジー効果そんなにすごいんですか?…おのれエナジー。
「おーい、イズにゃん。おいら達いつでも出発できるにゃー」
あ、我が商店最古参ニャルゴ殿。相変わらず良い毛並みでもふもふですね。今日もしましま決まってるよ?
「どもども、ニャルゴ殿いつもありがとー優秀で助かるよ」
「いいってことよ、水都での臨時ボーナス期待してるにゃ」
なんて?
「なんて?」
「イアから聞いたにゃ、水都についたら臨時ボーナス支給にゃんだって?」
お、おのれイアちゃん!!知らん間にボーナス支給三昧やんけ!!
「…まさかとは思うがイアにだけ「あははははまさかはははは。」
「高級マグロンきたいしてるにゃ」
…oh、今月はお茶漬け三昧だにゃ…。
「おめぇーら、次の目的地は水都ミルヴァだにゃ!高級マグロンたべほうだにゃ!!気合い入れて突っ走るにゃ!!」
「「「にゃー!!!」」」
「いってなぁああああい!!食べ放題いってないですよぉおお?!?!」
もしかするとこの世界で一番逞しいのはうちの従業員なのかもしれない。そう思いながら今日もシュレディンガーは空を駆ける。壊れて曖昧な世界の悪路を突き進む。空飛ぶ魚、ニンフや水妖の楽園へと。本当なら少しだけ観光する予定だったのに…。
くぅぅぅー!お魚確保に専念せねば!!
などと考えても仕方がない。そこにお客が待っている今日もまだかまだかと待っている愛しのお客様ー。
ボーナス分はぶんどりますわよ!!!
不定期投稿なんで期待しないでね!!!