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第4話 着物姿の者たちの正体

「……それで?」


「なんで儂等わしら、正座させられているのだ?」

「光成の曾孫は凶悪そうだぞ」

 着物姿の青年やご婦人や老人たちがクロエの前で正座でボソボソと内緒話をしていた。


「全部聞こえている」

 付喪神たちが正座したままビクッと飛び上がった。


「お前らはどこの誰だ?」

「儂等は付喪神だ!」

「つくもがみ?」

「長い年月を経た道具などに宿った神や精霊だ!」

「儂は茶釜」

「儂は千歳盆」

「儂はなつめ

「儂は帛紗ふくさ


 付喪神たちの一人称は見た目に関係なくわしだった。クロエに分かりやすいよう、それぞれが宿る道具を掲げてみせた。


おおじいちゃんの茶道の道具か」

「そうじゃ!」

「茶道具以外にもおるぞ!」

「クロエが怒るから隠れておるのじゃ!」


 クロエに睨まれて黙った。

付喪神たちはお喋り好きで余計な一言が特徴だった。


「全員、大じいちゃんと暮らしていたの?」

「そうじゃ!」

「光成は儂等を大切にしてくれてな!」

「梅のことも可愛いがっておったぞ!」


「大じいちゃんが亡くなった後は?」

「儂等と梅でこの家を守ってきたのじゃ!」

「クロエを待っていたのじゃ!」


「あのねクロエちゃん。みんな一緒にお掃除してくれたんだよ」

「淋しくなかった?」

「うん!」


もう怒れなかった。



「ご飯にしよう」


 大きなちゃぶ台にクロエ、梅、茶釜、千歳盆、なつめ帛紗ふくさが揃った。


「みんなお酒はイケるの?」

「全員多少は呑める」

「多少って、どのくらい?」

「ぐい呑みに1杯でいい気分じゃあ」


── 安上がりで良かった。



「イケる口なのは茶釜くらいかのう」

「儂は3杯くらいイケる!」

「茶釜はお茶の方が好きそうだけど」


「ど、どうして分かるのじゃ!」

「クロエにも神通力が!?」

 付喪神たちが焦っているが、ただの人間に神通力なんぞあってたまるか。


「茶釜といえばお茶でしょう…そもそも全員、茶道具だし」


「おお、クロエは聡明じゃのう!」

「大した推理じゃ!」

「名探偵じゃ」


── 付喪神ってチョロいな…。



「じゃあ乾杯しよう。みんなのことは、おいおい教えてよ」


 付喪神たちが日本酒をチビチビ舐めながら天ぷらをつつく。

「天ぷらなんぞ20年ぶりじゃあ」

「日本酒も20年ぶりじゃあ」

「美味いのう」

「ああ、美味いのう」


梅も上手に蕎麦をたぐっている。


「梅はお蕎麦が好きなの?」

「うん!みんなで一緒に食べると余計に美味しく感じるよ!」

「そっか。梅が揚げたかき揚げも美味しいよ」



意外とこの家は居心地が良さそうだ。

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