第十六話 ソータ、行きまーす!
盛り上がってきたでしょ?
この回は僕の飛空船での初仕事。逃したら損だよ? 一世一代の大立ち回り……ではないけれど、ここも忘れられない大事な部分ではあることは確かだね。
エルマー国側の戦力? ああ、言ってなかったか。
エルマー国所属の飛空船は小型が23、中型が13、大型が4の計40隻が出陣。全戦力の内の6割は出したそう。ノア船長たちのようなエルマー国とは関係ない有志からは15隻が参戦。
合わせて55隻VS1000頭のワイバーンだと、だいたい1:18ぐらいの戦力比になるかな。
そんな戦力比の中、僕たちがどのように活躍するかお楽しみあれーー。
◇
ーーエルマー国:領空 アルファンド号:船内ーー
アルファンド号の後方上部に位置する区画に僕はノア船長に連れられた。
中にはこれまた多くの歯車と蒸気パイプが見受けられるが、何がどう動いて、どう使うのかよく分からないな。
「僕はここで何を?」
「お前には、これから”空撃士”になって働いてもらう」
「くうげきし?」
むむ……? 初めて聞く言葉だな。
それなりに勉強してきたつもりだけど、まだまだ知らないこともたくさんあるな。
「ふふん、あたしのやる事をよーく見てなさいよ」
テラリスがロッカーらしきものを開けて取り出したのは、一振りの大剣。
最初に目に付いたのは造形。
形はシンプルな両刃だが、金属っぽくないマッドな質感と炎を想像させる真っ赤な色が印象的。今も燃えているかのように明滅している……ように見える。
次に気になったのは、その大きさ。
柄から刃先までテラリスの身長に迫り、刀身の幅は30cmぐらいあるだろうか。
振り回すのだって一苦労しそうなものを背中に背負っている。
「これが気になるかしら? これはあたしの専用武器ーー灼熱剣レーヴァテイン!」
しかも銘があるのか。
「竜の魔石に、厳選された魔物の牙と爪や鱗を加えて鍛えられた自慢の業物よ!」
胸を張って自慢してくるテラリス。
魔物の素材で作られた剣って……モ○ハンの武器か。
「ずいぶん張り切っているな? そんなに後輩ができたことが嬉しいのか?」
「そ、そんなことないわよ! やっと暴れられるなー、としか思ってないから! 教えるのが楽しみとか、そ、そんなことは思っていないからね!」
ノア船長とテラリスが話している間、僕は首を傾げる。
巨大な大剣で一体何するんだろう? 大剣はワイバーン相手に有効かと思うけれども、飛んでる相手には届かないはず?
飛空船の上に陣取って、取り付いたものを追い払うのだろうか? それとも剣に魔法を乗せて衝撃波みたいのでも飛ばすのだろうか?
「いいから、早く開けてよ!」
「そう急かすな」
ノア船長が何やら操作を始めると歯車と蒸気の動く音が響く。しばらくすると壁が開いて外の光景が顕になり、同時に内部の機器が作動し外へ向かってレールらしきものが伸びた。
あれ? 何か見たことあるような……アルファンド号の発進レールによく似てる?
「それじゃあ、行ってくるわね」
僕の疑問を他所に、これから散歩に行くかのような気軽さで所定の位置に立つと……猛スピードでレールを滑走、空へ投げ出され……そして視界から消えていった。
「テラリス!?」
テラリスの突然の行動に驚いた。
まさかの生身でスカイダイビング。自殺願望でもあるのかーーなんて思っていたら、テラリスが空中を昇ってきた。
大剣を横に、その腹の部分に足を乗せてバランスを取りながら立ち、そして刀身から炎が噴射して滑るように空を駆けていた。
眩い炎の軌跡を引く姿が、さながら炎という波に乗っているサーファーみたいだ。
剣から炎を生み出しているのは不思議な光景だけど、あれは魔石を使った武器って言ってたし、一種の魔法道具になるのか。
「人って魔法だけで飛ぶことができるんですね……」
魔法で空を飛ぶ……その姿は魔女を想像した。
テラリスは女性の魔法使いだから一応”魔女”ってことになるけど、箒で飛ぶ訳じゃないんだなぁ。何かイメージとちょっと違う。
何で箒なのかって? すいません、こっちの話です。
細くてバランスは取れないし武器にもならない? 確かにその通りです。
「今のように飛空船から飛び立ち、魔法による圧倒的な機動力と攻撃力をもって相手を倒す。それがテラリスの主な仕事だ」
へぇー、艦載機みたいなものか。
だけど、この戦場にテラリスみたいな魔法使いを見ていないな。
たまに甲板から魔法が放たれるのは見えるけど、魔法で飛んでる姿はない。
「空撃士は誰でもできる仕事ではない。そもそも魔法使いでないと務まらないし、飛行し続けるための魔法も限られている」
「確かに土魔法とかでは飛べなさそうですね」
土や岩を生成して操作する土魔法では推進力が生み出せないだろうよ。
で、あれの名前を空撃士って言うんだぁ。
…………。
「ま、まさか」
「そうだ。お前にはテラリスと同じことをしてもらう」
急すぎない!? もっと早く言ってほしかった……!
え? 言ったところで現場を見ないと理解できないし、逃げられても困る?
「いやいや、僕は飛行の訓練なんてやっていませんよ?」
「自分の重力に干渉できるのだろう? ならば問題ない」
「魔物の群れに僕みたいなヒヨッコを入れたら良いエサになると思いません?」
「周囲のワイバーンならテラリスが片付けて安全を確保しているはずだ」
決定事項だ、と言わんばかりにグイグイと僕の背中を押してくるノア船長。
ってか力強すぎ! 抵抗してるのにビクともしない……!
こんなところで機械の力を発揮されても困るんですけどぉ……。
「えーと……ほらっ、僕にはテラリスのような魔法道具は持っていませんし」
「お前の重力魔法なら魔法道具は必要ない」
「ええぇっ!?」
「あれはあくまで飛行を補助するための魔法道具だ」
ただ飛ぶだけなら、背中から高出力の魔法をブッ放させばいい。
そこから鳥や虫のような羽を持たない人が三次元の空中機動を行うには、手足のように角度を変えて稼動する推進力が必要になる。
しかし手足を姿勢制御に使いながらの攻防はバランスの面で難しいらしく、せめて手だけでも自由に使えるよう魔力で制御できる推進力が必要で、そのための魔法道具だそうだ。
「だが、お前はテラリスのような推進力を必要とせずに重力変化での移動ができるはずだ」
「確かにそうですけど……」
言っていることは合っているが……重力魔法について詳しいような気がする。
「分かったなら、ここに足を乗せるんだ」
「あのですね? 別にやりたくない訳ではないんですよ」
「しっかりレバーを握るんだ。そうしないと上半身が持っていかれるぞ」
「ただ、何事にも順序ってものがあるじゃないですか」
「あとは安全装置を解除して、このボタンを押すだけだ」
文字通り手取り足取り、子供に服を着せる親みたいにちゃっちゃっと準備を進められてしまう。
「あのー、話聞いてます?」
「準備はいいか?」
はい、聞いていないですねー。
何をビビっているんだ、と思う人は大勢いるかもしれない。
だけど考えてみてほしい。
”あなたにはこれからスカイダイビングをしてもらいます”。
”インストラクターが先に行ってますので、1人でお願いします”。
”パラシュート? そんなものはありません。あなた魔法ありますよね?”。
突然こんなことを言われたらさ、誰だって”ちょっと待て”ぐらいは言うでしょ?
いくら空が大好きだからって無駄に命を捨てるつもりはないよ?
「心の準備がもうちょい必要ですかね」
「仕方ない。今回は己がボタンを押してやろう」
「そういうことじゃなくて……」
今までは足を着く地面がある前提で重力魔法を使っていたんだ。
常に魔法を纏いつつ空中に居続けるなんてどうすればいい。
「勢いはカタパルトに任せて、お前はただ前に”落ち続ける”ことを意識しろ。そうすれば上手くいく」
アドバイスは嬉しいですが、せめてちょっとでも練習を……。
「覚悟はできているのだろう?」
「た、確かに言いましたよけど」
「なら、行ってこい」
「ちょっ、まっ! 重力魔法、方向変化ーー展開ぃいいぃぃぃぃ!?」
ボタンが押されたと同時に重力魔法を発動。
圧縮された蒸気が解放され、足場がバネのように飛び出して僕の身体が運ばれる。
叩きつけられる強烈な風圧、あっという間に移ろう景色。気づいたらもう空中だった。
「えっ!? あ、マズイマズイ……!」
このまま何もしなかったらカタパルトの勢いが失速して落ちてしまう。
とにかく前に進まなきゃ! ああっ違う、重力魔法だから落ちないと進まないんだ。前へ進みながら落ちるって何だ!? えーと、えーと……。
……いや、落ち着くんだ。カタパルトの勢いはまだ失ってない。この状態のまま、いつも通りに魔法を使えばいいんだ。
前へ前へ……落ちろ落ちろ……。
身体全体が凄まじい風で圧されている中、恐る恐る目を開いた。
「お、おおぉっ!」
と、飛んでるよっ。
落ちることなくーーーー感覚的には落ちているのだがーーーー広大な空をこの身1つで飛んでいるよ。
アルファンド号のブリッジから見ていた時とは違う。街を眼下にジャンプしていた時とも違う。
どこを見ても空が広がっていて、空の一部になったかのような一体感。
太陽の光に流れる雲が反射して、空全体がチカチカとまぶしく光る。
光を照らされ、風を受け、暖かさを感じ、永遠に続きそうな広さが無性に愛おしい。
果てしない空の広さを目の前にすると、自分自身の矮小さがより鮮明に分かる。
ちっぽけだからって悲観的な気持ちになるのではなく、むしろこの世界で生きている実感が湧き上がる。
「あはは!」
思わず手を伸ばすが、それで空の端に届くはずがない。
そんなのは分かっている。届かないことを確認したかったのだ。
病室のベッドから苦しみながら伸ばしていた時とは違うことを実感したかった。
ずっと望んでいた空は夢に描いていた以上に自由で、改めて窮屈だった前世と訣別できたと僕は思う。
こんなにも世界は広いのか。
一体どこまで続いているのだろうか、果てには何があるのだろうか。
知覚できない先にある、まだ見ぬ場所へ今すぐにでも飛び出したい熱意が溢れ出てくる。
そうだ、僕はこれを求めていたんだ。
最初はちょっとだけ怖かったが、楽しんでしまえばもう大丈夫。
方向転換も難しくはない。
行きたい方向に”落ちれば”その方向に進んでいく。右へ重力の方向を干渉すれば、ガクンッと身体が右へと進んでいく。上にだって進める。重力を加えれば加速するし、軽減すれば減速。
よし、魔法を途切れさせないことだけ気を付ければ何とかなりそうだ。
「へぇ、上手く飛べてるじゃない」
飛行、というより落下制御をしつつ空を楽しんでいると、テラリスが隣にやってきた。
「飛べていなかったら、教えることから始めないといけなかったわよ」
「教えるってどうやって?」
「落ちている所を……こう拾って、ワイヤーにぶら下げながら?」
「心臓に悪すぎる!?」
何その肝の冷えるアトラクションは。いや、どっちかって言うと拷問だよね。
しかもなぜか疑問系。やったことがないからできるか分からなかった?
……良かった。ぶっつけ本番で飛べて。
「どう思う?」
「ん?」
「アンタは飛空船に乗りたがっていたけれど、こうして魔法で飛ぶのも悪くないでしょ?」
突然テラリスが真面目な顔で聞いてきた。
じっ……とこちらを見つめて、まるで何か試しているみたいだ。
まぁ何にせよ、正直に答えるけど。
「めっっっちゃ、楽しいな!」
理屈抜きで超楽しい。
大好きな空を自由に駆け回れるのがこんなにも気持ちいいとは想像以上だ。
僕が願っていたのは”空を飛ぶこと”であって、正確に言えば飛空船に乗ることじゃないんだけどね。
ただ、この世界に来て飛空船のことを最初に知ったから、それが目標になった訳で……まさか魔法で飛ぶ”空撃士”という存在があるとは思わなかった。
最初はどうなるかと思ったけど、やってみないと分からないものだね。
これはクセになる。止められないわぁ。
「アハハ、よく分かっているじゃない」
答えを聞いたテラリスが朗らかに笑う。
「でも楽しいだけで済むほど、空は甘くないわよ?」
「分かってるさ。足手まといにはならない」
その言葉に気を引き締める。
僕がこの場にいるのは空を楽しむのではなく仕事のため。それを忘れてはいけない。
「良い覚悟ね。あたしたちの仕事は船を護衛しつつ、上位個体を探索・討伐することよ」
ワイバーンが火を吹くのは、着火機能を司る器官が体内にあるのではなく、魔法を使っているからだ。
ほとんどは本能に従って火球を放つだけだが、中には火炎放射器のように断続的に吹きつ続けたり槍のような形に変化させて放つなどの知恵を働かせて工夫を凝らす個体がいる。そういったものを上位個体と呼ぶ。
強力であるが故に素材も上質で買い取り額が高くなるのだが、小さな群れを統率して連携するため、大きい飛空船だけでは荷が重い。
そこで、飛空船の援護を受けつつフットワークの軽い空撃士が相手取る訳だ。
「さっそく行くわよ。ついて来れなきゃ置いていくからね!」
刀身から炎を勢いよく噴射させてアルファンド号の前へ飛び出るテラリス。
ぬぅ、速いな。速度が自由落下に任せてる僕とは加速力が大違いだ。
だが、そこへ行く手を阻むように数頭のワイバーンが飛来。何発もの火球が襲いかかる。
「邪魔よ!」
前傾姿勢でさらに加速。対面からくる火球に臆することなく、わずかな体重移動で方向を制御して火球同士の隙間をスイスイと駆け抜けていく。
火魔法で生成した剣を両手に持ち、肉薄したワイバーン容赦なく首を切り落とす。
大口を開けて食いちぎろうとしてくる噛みつきにも華麗なターンでヒラリと躱して、無防備な背中から首を落とす。
鋭い爪で掴み掛かろうとしてきても、足を斬り落とし、流れるような動作で首も落とす。
挟み撃ちしてくる相手でも意に介さず、時には剣を投げ、時には鞭のように振い、次々とワイバーンを討ち取っていく。
「僕だって……!」
ワイバーンをものともせずに戦っている姿に見惚れそうになるが、ボサッとしている暇はなく、どんどん進んでいくテラリスに本当に置いてかれそうになる。
このまま何もしない訳にはいかない。
まずはテラリスに火球を放とうとする個体に目を付け、そいつに向けて急降下。
「ハアァッ!」
なんちゃってライダーキックが背中に命中し、体勢を崩したワイバーンの火球はあらぬ方向へ飛んでいく。
「ギャッ、ギャッ」
邪魔されたことへの怒りなのか、意識が僕の方へ向けられる。
対峙して改めて見るとデカイ。僕の小さな拳がどのぐらい通じるのだろうか。
それに人とは違う混ざりっ気のない純粋な殺気に当てられそうになる。
いいや、僕だってやれるんだ! たとえ魔物との初戦闘がスライムじゃなくてワイバーンというハードモードだったとしても……!
ワイバーンによる噛みつき攻撃が迫る。
腕ぐらい簡単に噛みちぎってしまいそうだ。恐ろしい。だけど、工夫もない直線的な攻撃だ。慌てるな、落ち着いて対処すれば大丈夫。
重力魔法、方向変化ーー僕は真横にスライド移動して回避。
「せいやっ!」
ガキンッと攻撃を空振って隙だらけの横っ面に、重力増加した重い拳でブン殴る。
鈍い音が響き、ワイバーンは牙がへし折れて数m先へ弾け飛ぶ。
「うげっ」
人とは違う感触に鳥肌が立ち、思わず不快な気持ちが声に出てしまった。
体表を覆ってる鱗はザラザラしているし、衝撃を守る分厚い皮はブヨブヨ、それに……清潔とは無縁そうな汚れが目立つ。そんなのに素手で触っちゃった。
……殴るのは控えて蹴り主体にしよ。
頭の中で戦闘法を模索しながら、距離を詰めていく。
魔物とはいえ、動物を殺めることに対しての忌避感はあまりない。
可愛さよりも凶悪さの方が優っているし、向こうは本気で殺しに来ている。下手したら僕が食われてしまう……それを考えれば躊躇なんてしていられない。
「ギャアッ」
拳打でよろけている所をさらに追撃を入れようとしたら、ワイバーンは身体をしならせ、体長の3分の1はある長い尻尾でなぎ払いをしてきた。
「むっ! 重力魔法ーー反重力、展開!」
見事なカウンター。しなやかな鞭のような尻尾に当たればただでは済まないだろう。
だが、僕は魔法を展開ーーその場でピタッと急停止。
目の前でビュンッと風切り音と共に尻尾が通り過ぎた。
進んでいる重力方向とは反対の重力を展開することで、勢いを相殺したのだ。
これはテラリスや飛空船のようなエネルギー噴射の反動による飛行にはできない動きで、重力魔法を使った無反動推進による飛行の強みだ。
僕はただ重力に従って落ちているだけ。だけどその重力を制御することで、慣性を無視した急発進・急停止・バック・旋回・ホバリングが可能となっている。
……まだ、行きたい方向に”進む”ではなく”落ちる続ける”ことに慣れないけれど、もっと上達すれば鋭角ターンを連続で繰り返すジグザグ飛行みたいなのもできるかもしれない。
「この隙に!」
擬似ホバリング状態から、前転宙返りーーそのままカカト落としを叩き込む。
尻尾を思いっきり振り抜いた状態で動けないワイバーンはまともにそれを受ける。
脳天直撃は痛いだろ? よく分かるよ。
重力制御ーー振り下ろした足の勢いを止め、即座に切り返す。
「これでどうだ!」
オーバーヘッドキックの要領で蹴り上げ、下顎を砕く感触と共に頭が跳ね上がる。
一瞬だけど意識が遠のいた瞬間に食らった強い衝撃に身体が吸収しきれず、頭が背中にくっ付きそうになるほど後ろへ倒れた。
ゴキッていう音も聞こえたから、首の骨が折れたのだと思う。
爬虫類のような瞳から生気が失われ、そのまま落下していった。
ーーワイバーン、討伐。
「よしっ!」
初めての魔物との戦いーー思っていた以上に緊張したけど、重力魔法でも十分に戦える。
そのことに確かな手応えを感じた。
胴体は翼を動かすための筋肉が集中しているが、頭部など端へ行くほど軽量化のためか筋肉は少なく打撃の衝撃がよく通るみたいだ。
頭が難しくても、倒すだけなら翼回りの骨折を狙って落下させるだけで十分かもしれない。
仕留めたワイバーンは……アルファンド号がワイヤーアンカー射出・拘束を行い、船内へ回収していった。
ブリッジの方を見れば、アイリスちゃんが拍手して喜んでくれていて、船長席に戻ったノア船長も大きく頷いていた。ひとまずは合格ってことだろうか。
「ふーん、やるじゃない。ま、あたし程じゃないけどね」
そう言うテラリスの手には自前のワイヤーが握っていて、数頭のワイバーンを吊ってあった。
僕が戦う前の分を引けば……僕が1頭を倒す間にテラリスは3頭か。
しかも討伐しつつ自分で回収も行っているのだから、実力の差を思い知らされる。
「先輩であるあたしに勝とうなんて10年早いわよーーということで、後輩は荷物運びを手伝いなさい」
「はいはい……かしこまり」
ズシッと指に食い込むほどの重さのワイヤーを受け取る。
「それの収納が終わったら休憩ーーと、言いたい所だけど次はあっちへ向かうことになりそうね」
ワイヤーのあまりの重さに重力魔法で調整しながら、テラリスが指差す方を見てみるとーー今にも墜落しそうなほどボロボロの1隻の飛空船がワイバーンたちに取り囲まれていた。
テラリスの飛び方は、エ○レカセブン
ソータの飛び方は、グラ○ティデイズ
を意識しています。