転生したけど、楽しんでます
世間では、最近「悪役令嬢転生モノ」というジャンルが流行っている。
それはもう、小説やらマンガやら、果てはアニメまで。花のJKであった私も、いろんな作品を見てきた。もともと乙女ゲームなどが大好きだったためかどんどんハマり、もし私がこのゲームの悪役令嬢だったら~なんていう妄想までしていた。
そんな悠々自適なオタクライフは、唐突に、そして思いもよらぬ形で幕を閉じた。
いわゆるトラ転である。私はちゃんと青信号を渡っていたのに、あの運転手め。なんて愚痴が漏れてしまう。
ともあれ、私はこの前世の記憶を持ったまま、転生してしまったのだ。私が前世でプレイしていた乙女ゲーム、「Glorious Flowers」の、主人公に。
主人公の名前はアイリス。こげ茶の髪に紫の瞳を持つ、平凡な女の子。……といっても、一応貴族である。この国では一番爵位の低い男爵家の一人娘。高等学院…現代でいう高校からストーリーは始まり、学院で出会うイケメンたちと恋に落ちる……それが、今の私だった。
それはもう驚いた。物心がつき始めた頃からだんだん前世の記憶が蘇ってきて、この体で6歳を迎えたあたりで、事の重大さに気づいた。前世に残してきた父さんと母さんは恋しいけれど、そもそも前世の私は死んでしまったのだから……と、何年もかけて現実を認識し、ここ数年で、ようやっと今世を楽しもうと思い始めたところだ。
そんな私が、今何をしているのかというと……
「待ってくださいローザ様!!今日こそ!今日こそランチを!!ぜひ!ご一緒に!!!!」
「ぜっっったいに嫌よ!!ついてこないで頂戴!!!!」
悪役令嬢様に、振られまくっていた。