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サイドストーリー 死神と帝国潜入

71話~の長い間の期間、Sランク冒険者のゼロが帝国領土に潜入していた時の話です。


よくトワの記憶から抹消されている可哀想な人ですが、活躍度はかなり高いのです。忘れないであげてください。











 帝国領土に潜入した俺は〈殺戮の悪魔〉の能力で体を透明にした状態で目的まで走っている。



――折角の機会だから、街の状態とかも見たいんだが・・・



 トワからはゼストがどこかに潜んでいるはずだから気を付けろと言われている。恐らくはグレンのじいさんの心臓を取り込んで強くなっていると予想されるらしい。俺では正面から戦っても勝てないと言うわけだ。



 そもそと俺は奇襲による暗殺が得意だから、正面から戦うなんてことはしないのだが、危険は可能な限り避けることに間違いはない。俺は可能な限り早く帝国領土から脱出出来るように最速のルートを駆けた。



――これだけ魔物が多いと隠密系のスキルを全部使っていても襲われそうで怖いな。



 帝国領土に入ってすぐに気付いたことは、異常なくらいの魔物の多さだ。まるで帝国全体がダンジョンにでもなってしまったのかと思ってしまうくらいに沢山の魔物が居た。しかも、お互いに争いあうようなことが無いから、これら全てが操られているのだろう。全く笑えない状況である。



 ま、よっぽどのことでも無い限り、魔物なんかに俺の隠密行動がバレるわけないけどな!



 予想通り、彼の隠密スキルを破れるような魔物は居なかったため、道中の怪しい街の調査も始めることにした。



「街全体がダンジョン化してる?どっかのダンジョンコアでも強奪したのか?」



 どこかのダンジョンのコアを街に持ってきてダンジョン化させるなんて、普通に考えても正気とは思えない所業だ。ゼロは調査を続行することにした。



――お?あれは・・・



 偶然か、街のそこそこ広い広場に見覚えのある相手を見付けてしまった。



 元Sランク冒険者で『狂気の魔術師』という通り名で有名な男。そう、ゼストだ。



「この街のゲートも完成したか。やれやれ。悪魔王とか言っていたが、自分の作戦が上手くいかなかったから俺に尻拭いさせるなんてな。まぁ、せいぜい利用させてもらうだけだが。・・・よし最後に帝都に戻ったら試運転をするか」



 悪魔王の作戦というと、恐らくはシャドウを世界中に撒いて魔力を集めることだな。今頃はトワがあちこちに行って詰めの作業をしているところか。俺もさっさとシャドウを倒しに行かないとな。



 俺はゼストにバレる前にそっと街から逃げ出して先を急ぐことにした。



 しかし、帝国内にこれだけの魔物を量産したのならば、ここで魔力を集める方が効率が良いと思うんだが・・・わざわざ別の場所で集めるのに他の意図があるのか?それか、ゼストが何か仕組んでここの魔物は養分にしないように話をしたのか。なんでも構わないが、悪魔が完全復活したら国一つなんてあっさりと滅ぶらしいし、碌な事にならないのは目に見えている。って、もう帝国は滅んでいるな。悪魔ってマジで碌な事しねぇな。



 帝国西部にある深い森の中。ここには北側の森にしかない特産の薬草の群生地もある現地では有名な森なのだが、人の出入りがなくなったせいで魔物の数が急増しているようだった。自然の発生の魔物なためか、ここでは生存競争が普通に行われているせいで、ちょくちょく変異種になりかけの強力な個体を見付けたため、ついでに排除しておく。



――さてさて、標的は・・・あれか。



 元はワーウルフだろうか。魔族にもワーウルフ・ヒューマンという種族が居たな。同種扱いしたら殺されそうだが。



 そのワーウルフは狼が二本足で立っている魔物だと思ってくれればいい。説明すると簡単だが、魔物の個体としては単体でBランク相当の狼系の中でも上位の強さを誇る魔物だ。そのワーウルフが姿形はそのままに、影のように揺らめいている状態で森の中を彷徨っていた。周囲に魔物は居ないことから、既に殺されたか、異様な気配を察知して逃げたかだな。



――なんでもいいか。任務の遂行をするとしよう。



 俺は隠密系スキルを全活用した状態でワーウルフの背後の木の枝の上に立ち、ミスリル糸を収納袋から取り出して〈操糸〉スキルで操ってワーウルフの四肢を縛り動きを止めた。



 ワーウルフが糸を引きちぎろうとして意識が傾いた瞬間に、〈影魔法〉で影の中を移動して音を立てずにワーウルフの背後を取り、〈遮音〉スキルで全ての音を遮断してワーウルフの心臓部にある核を短剣で貫いた。



 〈殺戮の悪魔〉の能力、〈殺傷能力強化〉により短剣を突き立てた瞬間にワーウルフの胸に大きな穴が空いて、核だったと思われる石板の欠片を粉砕した。影のワーウルフの体が解けて消えていくのを確認して、俺は短剣を仕舞う。



――依頼完了。帰るか。・・・!?



 突如頭の中で〈危険予知〉が働いた俺は即座にその場から移動をしようとするが、すでに足が動かなかった。足元を見てみるといつの間にか地面が氷漬けになっていて、俺の足も一緒に凍っていた。



「くははは。よう。久し振りだな『死神』」


「やっぱりお前か。気付いていて逃がしたのか?」


「半分は勘だがな。街のダンジョンコアを弄っていた時に侵入者の反応があったんだが、俺の索敵能力では全く察知出来なかった。だから、お前が帝国に侵入しているんじゃないかと思ったんだよ。シャドウ狙いならば必ずここに来ると思っていたぜ。いやいや。見事な暗殺で危うく見逃すところだったぜ」


「相変わらずよく喋るガキだな」



 グレンのじいさんとはそこそこ馴染みもあったし、仇をとりたいところなんだが、魔力量的から総合的な能力を予測しても、正面から戦って勝つのは難しいな。不意打ちで倒せればラッキー程度か。



 最初は俺を捕まえて薄ら笑いを浮かべながら見下ろしていたゼストだったが、だんだんと怪訝そうな顔になり、やがて興味を失ったような無表情になって舌打ちした。



「チッ、分身体か。本体はもう逃げたか」


「さすがだなゼスト。こんなに早く気付くなんて思わなかった。ただ、スキルの分身体じゃなくて影魔法の分身体だけどな」


「シャドウを殺したところまでは本体だったはずだ。いつの間に変わりやがった」


「内緒だ。じゃあなゼスト。お前さんとは戦わないように言われているんでね。俺はこのまま帝国から出るわ」


「ハン。次は必ず殺す。覚えておけ」


「へいへい。おー怖い」



 ゼストと数度言葉を交わしてから、影魔法で作られた俺の体はそのまま影の中に溶けるように消えていった。いや、俺が消したんだが。



 既に森から脱出していた俺は、ゼストに居場所を気付かれないように注意しながらその場を速やかに離れていく。



 ゼストがグレンのじいさんの心臓を取り込んだのは間違いないな。あの魔力の多さはヤバ過ぎる。それでも、トワ達神獣ほどでは無かったが。人側からしたら十分に脅威足る存在だろう。それと、今の帝国の状態も報告しないといけない。帰りにも出来るだけ情報を集めたいな。



 帰りの計画を頭の中で立てながら、俺は夜の闇に紛れて姿を消した。




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