サイドストーリー 転生うさぎと転生うさぎのマネージャー
63.5話のおまけサイドストーリーと同じ内容になります。
三章から四章の間の、トワが神獣達の領域を回って礎の核の改修についての話をするお話です。
「ちょっとぉ~!聞いてないんだけどぉ~!?フェニだけずるいわよぉ~!!」
月の領域の中心にある聖樹フローディアの大樹の前にある大きな広場に設置されたお茶会の席で、突如フェンリルさんが叫びました。
理由はとても簡単で、わたしがフェニさんにこの前の礎の核改良後はどうだったのかを訪ねて、フェンリルさんとオロチさんがその話を聞いて怒っているようです。怒っているというよりは除け者にされて拗ねているというべきでしょうか。
「そんなに便利な改良が出来るとはの。トワ、今度は妾のところにもたのむぞ。明日でもいいぞ」
「それならぁ~、私は今からでも良いわよぉ~」
「貴女達、少しはトワの負担のことも考えなさい」
「・・・いえ、別に大した手間ではないので構わないのですが」
わたしが「・・・大した手間でもないですし、今からでも良いですよ」と言うと、フェニさんがにっこりと笑顔で圧をかけてきました。ふぇ、怖いです。
「私が、ダメだと、言っているでしょう?トワは少し黙っていて」
「・・・ア、ハイ」
「おぬし、ますますトワに対して過保護になっておらぬか?」
わたしを黙らせたフェニさんに、オロチさんが呆れたような顔を向けます。わたしも同意見です。ちょっと過保護ではないですかね?
しかし、フェニさんは悪びれた様子もなくわたしを後ろから抱きしめました。
「仕方ないでしょう。こんな危うい子、好き勝手にやらせていたらこちらの身が持たないわ。だから、私が出来るだけ見てあげないと」
「まぁ、言わんとするところは理解出来るのだがの」
「・・・出来るのですか」
「出来るわよぉ~。それにしても、フェニは過保護だと思うけどねぇ~」
「貴女達がトワをいい様に利用しようとするからでしょう?」
「それはいくらなんでも人聞きが悪いわぁ~!」
「そうじゃ!妾達はすこ~しだけトワの知恵を借りようと思っただけじゃ!」
――それはいい様に利用しているのではないのでしょうか?
まぁ、なんなかんなとフェンリルさん達にもお世話になっていることに違いはありませんし、同じ神獣仲間ですし、普通の領域の管理は大変らしいのは聞いていますからね。手を貸すのはやぶさかではないのですが。
わたしがすぐ真上にあるフェニさんの顔を見上げると、フェニさんがとても困ったような顔をして顔を背けました。その様子を見たフェンリルさんがクスクスと笑います。
「あらぁ~。トワちゃんの上目遣いにやられちゃったのかしらぁ~?」
「リル。後で覚えておきなさい」
「ひぇ!」
「今のは自業自得だぞ、リルよ」
「・・・いつものことですね」
茶化してきたフェンリルさんを睨みつけて黙らせたフェニさんが、はぁっと深く溜息を吐いて、わたしの髪を優しく手でといていきます。なんだかこういうの前の世界でよくやられていたような気がしますね。懐かしい感じがします。
「トワが協力したいと言うなら止めないわ。けれど、私がスケジュールを組むからその通りにすること。いいわね?」
「・・・わたしはそれでもかまいませんけど」
視線を頭上に居るフェニさんの顔からフェンリルさん達の方に移します。礎の核の改良をしてほしいのはフェンリルさん達ですからね。彼女達がそれで良いのならばわたしは構わないのです。
わたしの視線の意図が通じたようで、フェニさんがそれで良いわよねとフェンリルさん達に視線を向けると、二人とも苦笑しながらも頷きました。
「別に急ぐようなものでもないからの。トワに無理がないように予定を組むといい」
「そうね。では、オロチが100年後ぐらい、リルが1000年後ぐらいで良い?ああ、ケイルもやってほしそうだったわね。後で都合の良い日を相談して」
「ちょちょっとぉ~!1000年は長すぎるわぁ~!!」
「そうじゃぞ!いくらなんでも横暴じゃ!!」
確かに、フェニさんの冗談だと思いますがちょっと長いですね。まぁ、1000年なんて、もっともっと永く生きている神獣からしたら大した時間ではないかもしれませんが。
「大した時間よぉ~!何を言っているのかしらぁ~!?その1000年の間にどれだけ魔力供給をすると思っているのぉ~!!」
「百年だって長すぎじゃたわけめ!一ヶ月以内で全部回れるじゃろう!!」
「はいはい。今のは冗談よ。ちゃんと考えて近くの日にトワを向かわせるから安心しなさいな」
フェニさんはわたしのマネージャーか何かなのですか?まぁ、いきなり連れ去られるよりは良いですか。
そして、フェニさんが決めたスケジュールの通りに、わたしは各領域に出向いて礎の核の改良を施しました。あ、ついでにケイルさんの領域で地下シェルターも作りましたよ。約束していましたからね。フェニさんには呆れられてしまいましたが、ケイルさんにとても満足してもらえるものが出来て、わたしも満足出来たのでオッケーです。・・・マネージャー(フェニさん)に長いお説教はされましたけどね・・・。