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―5―

きりが良い所までにしたので、少し短めです。

 その日出されたのも、大盛りの焼きそばだった。

 今日のはソースは使ってなくて、塩胡椒だけで味付けしてあった。

 それでもやっぱりしょっぱかった。

 野菜は相変わらずカット野菜のそのままだし、ところどころ火が通っていない。

 そんな塩焼きそばを二人ですすった。

 今日は梶屋の方が多く食べていた。

 というより、あたしがヤケ食いしなかっただけだけど。


 晩御飯の後、あたしは梶屋に断って家を出た。

 部屋の中で一日干した服は、まだ若干湿っていたけど着られるくらいには乾いていて、それに着替えて外に出た。

 梶屋に借りた傘をさし、思いのほか遠くなかった山田のうちを訪れた。

 チャイムを鳴らすと、山田が玄関を開けて荷物を受け取った。

 山田が好き勝手言ってたけど、気にしないことにした。

 ただ一言、

「あたしのことはどうでもいいけど、梶屋クンは関係ないよ。あんまり言ってると、後が怖いんじゃない?」

 とだけ言っておいたら、山田は黙った。

 梶屋は、うちの学校では有名な不良だ。

 それに対して山田は、ただの優男だから、目をつけられると困るのだろう。

 調子に乗ってそのことを忘れていたようだ。

 そんな山田んちを後にして、梶屋のところへ帰った。

 梶屋は、大きなボストンバッグを担いで入ってくるあたしを見て、少しだけ止まった。

 でもすぐに何もなかったみたいにそっぽを向いた。

 考えてみたら、今の格好は、これから居座りますよって感じに見える。

 何も言わないってことは、ひとまずはここに居てもいいってことなのかな。


 九時くらいになると、不意に梶屋が立ち上がった。

 梶屋の家にはマンガとかゲームといった遊ぶものが何一つなくて、二人してラジオの音だけを聞きながら寝っ転がっていたときだった。

 その辺に転がってる財布とかケータイをズボンのポケットに放り込み、玄関で靴をはく。

「どこ行くの?」

 身を起こして尋ねるあたしに、首だけで振り返って、

「バイト」

 と言った。

 それだけ言って、傘を持って出て行った。

 その日はそれっきり、帰ってこなかった。

 梶屋が出て行った後、なんとなくあたしは帰りを待っていた。

 自分のボストンバッグに入っていたマンガを読み返したりしながら、深夜まで待った。

 でも、梶屋が帰ってくることはなかった。

 気が付いたらあたしは寝ていて、玄関の開く音で目が覚めた。

 外が幾分明るくなっていて、もう朝なのだと分かる。

 梶屋は放り投げるように靴を脱いで部屋に上がり、畳に転がって動かなくなった。

 あたしは、おかえりを言うのも忘れてそれを見ていた。

 寝転がった梶屋から、汗と土の匂いがした。


 なんとなく寝かせておいた方がいい気がして、あたしは静かに準備した。

 学校に行く準備だ。

 食パンを一枚生でかじり、ボストンバッグに入れていた制服に着替える。

 教科書とかいるものを手提げ袋に入れて、外に出た。

 本当は化粧とかもしたかったけど、梶屋を起こしてしまいそうで、顔だけ洗っておいた。

 早めに学校に着いて、トイレでメイクをする。

 教室に入るころには他にも人が来ていた。

 その中に友達もいた。

「あ、美佳ぁ。山田くんと喧嘩したんだって?」

 噂話が好きな子だ。ニヤニヤしながら真相を聞きたがるのはいつものことだった。

「まあね」

 あはは、と苦笑いしながら、適当に答える。

「でさでさ、今は梶屋くんといるってホント?」

 面白そうに聞いてくる。

「あー、まあ、いろいろあるの」

 下手なこと言うと、梶屋にも変な噂が立ってしまうかもしれない。

 気をつけようと思った。

 適当に逃げ回っていると、朝のホームルームが始まった。

 ホームルームの時間になっても、梶屋は来ていなかった。

 梶屋を探して教室を見まわすと、山田が目に入った。

 なんで梶屋がいなくてお前がいるんだと、よくわからない不満を感じた。

 結局梶屋が教室に現れたのは、お昼休みの前だった。

 終業のチャイムが鳴る直前、ガラガラと音を立てて扉を開けて、いつもの不機嫌顔で教室に入ってきた。

 いつものことなので、先生も特に何も言わない。

 ただ、文句のあるような目で梶屋を見ている。

 梶屋の登場で授業が止まっていると、そのままチャイムが鳴った。

 適当に話を切り上げて、先生は教室を出て行った。

 梶屋は机につっぷして、動かなくなる。

 いつもの風景だった。

カップ焼きそばもいいですね。

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