2.真実
5月の中旬、また反乱計画が立てられた。
アリスも作戦立案室に呼ばれたがアリスはいつも通りいるだけで話など聞いていない。
くだらない。その程度の作戦は誰でも思いつく。そして、今日は気になることもある。
いつもなら声を発する竜は沈黙を決め込んでいる。
まるで、何かを隠し通すように…
会議はすぐに終わった。最後のみ竜は声を発したがそれは一瞬だった。
「アリス、話がある…」
部屋から出たところで彼からアリスに声をかけた。
「…良いわよ。少し移動しましょうか…」
アリスは歩き出す。少し歩けば他の者共が話し始める。姫と亡霊が歩いていると。
気に食わない。アリスは自分が姫と言われることも、竜が亡霊と言われることも気に食わなかった。
彼は確かに危険だ。それに、自分から償いのために地獄を見ることを望んでいる。だが、彼女にとっては弟のようなもの。そんな彼を死者とされることは黙っていられない。
アリスが人々に一言言おうとした時に、竜はアリスに向かって、首を横に振った。
アリスは歯を食いしばり、我慢してから中庭に出ると竜の方に振り向いた。
「話って?」
「夢を見た…」
そんなどうでも良いことを言う竜に少し苛立つ。しかし、彼はどうでも良いことを言うために人を呼んだりしないのは知っている。
「どんな夢?」
「AIと…一緒にいるんだ…」
「…それで?」
「思い出したんだ。俺が小さな時、一緒に遊んでくれた女の子がいて…その子は…人間には出来ないような事が普通に出来て、そしていつの間にかいなくなってた。ううん、今になって考えれば…あの子はAIで…大人に…処分された…」
彼の目は虚空を睨み、涙を流している。
アリスには彼の気持ちが分からなかった。アリスにとってAI達は憎むべき対象。それだけだった。
この手で何体葬ってきたか分からない。
でも、気になった。聞かない方がいい。絶対に。
でもーーー
「…どうするの?…これから…」
聞いてしまった。結末など、分かっているくせに…自分が嫌になる。ただただ嫌になる。明るい未来は見えないくせに。
「…AI達の所に行く…そして、あの子が誰だったのか…知りたい…」
あぁ、分かっていたでしょう?こうなる事くらい。私も人のことが言えないくらい馬鹿だった。気がつくと私は笑っていた。泣いてもいた。
私はずっと待っていた。この輪廻から抜け出す事を…
「竜、逃げよう…?二人で…。竜が亡霊でも…どんなに酷い人間でも良い。私にとっては…唯一の友達なんだから」
彼は静かにうなづいた…。