今の関係
皆さん、おひさ~。前回のあらすじよ~ん。
圧倒的青春傍観者系モブにイケメン?男子高校生からな、な、なんと告白がぁ~!
さ~て、これからこの恋はどうなっていくのかしらぁ~ん。やだぁ~、目が離せなぁ~い!
・・・って、違うわ!現実はこう!
いきなりお友達宣告されて、なんか助けられたとか言われて訳分かんないまま終わったの!現実逃避でおネエさんになるな!自分!
結局、断ったんだけど、いや、断ったはずなんだけど、毎日付きまとわれて正直うんざりです(泣)
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴る。
「あ、柳くん。江河さんに用?今呼ぶね。」
「江河さーん、柳くんのお迎えだよー。」
ああ!悪気のない声が僕の胸に突き刺さるっ!
「あり・・・がとう」
僕はそれだけをなんとか絞り出し、クラスメイトに背を向け教室から出る。後には忌々しい柳翔太とかいう男がついてくるのはもはや恒例だ。
そもそもを考えれば何でこっちが“ありがとう”を言わなきゃならんのだ!演習室に入りながらドアを閉める。え?後ろにあの男がいるだろって?だからドアをきっちり閉めるんじゃないか。何を言ってんだね、君は。
「ちょっと!なんで閉めるの!?」
片手でかたいドアを開けて柳が抗議する。しかし僕は全く悪いと思わない。
「分かってんだろ。つーか、何クラスの人と仲良くなってんだよ、てめぇはっ!」
「通ってたら知れ渡っちゃったね~」
軽~く言いやがるこいつに僕はがなる。
「お前が呼びゃーいいだろ!なのにクラスの、しかも女子を使ってさぁ!」
「江河さんって、女の子に弱いよね」
「分かっててやってるなら慎め!」
「いや。」
んぁ”~っ!(怒) こんな銀○、フルーツポ○チ侍みたいなしゃべり方じゃ僕の怒りは伝わらないっ!くそぅ!毎回毎回!昼飯のタイミングで来やがって!
そんなことを思う間に柳は首をかしげオブラートをビリビリに破り割いて言った。
「そんなに嫌がってるけど、江河さん。お昼一緒に食べるお友達・・・いるの?」
う”っ!こいつ・・・痛いとこ突いて来やがったっ!しかも、天然かよぉぉぉぉ!
「お前・・・いじめの理由って他にもあると思うぞ・・・」
「え?」
柳は首をかしげるだけでなく不思議そうな顔をしてこちらを見た。僕はこの鈍感に面倒臭さを感じて、怒る気力も失せ始めた。
「友達いなくてもっ!一人で食べるからほっといてよ」
「そんなさみしいこと言わずにさ。いないもの同士で食べようよ」
「黙れ。」
柳の言葉に被るか被らないかぐらいのスピードで言葉を放った僕は疲れ始めている。怒る気力なんぞとうの2行前に置いてきた。
そんな様子を察することなく柳は話を続ける。
「それに、そんなこと言ってるけど、江河さん、俺がが食べ終わるの待っててくれるし、」
「うるさい。」
「休み時間の終わりまで話聞いてくれるし、」
「う・・・うるさいっ。」
「誘ったらなんだかんだ付き合ってくれるじゃん。」
「う、うるさいっっ!黙れ、お前は!」
疲れた体に鞭を打ち僕は猛抗議をする。
「暇だから食べ終わるまで待ってるだけだし!話はほとんど聞いてないしっ!お前が捨てられた子犬みたいな雰囲気醸すから、注目浴びるから、こっちが悪いみたいになって・・・だからだもんっっ!」
泣くぞ、あ”ぁ”!?みたいな脅しを語尾の方に1滴。僕、悪くな~いもんっ。
「それに口調だって、だいぶ打ちとけてきたみたいだし♪」
脅しが全く効かずむしろ喜んでるこいつがめちゃくちゃ癇にさわる。
「お前に気ぃ遣ってどーすんだよ。おめぇのこと傷つけようが、どーだってよくなったから素になってんだよ。」
「つまり、心置きなく話せるってことでしょ?」
うわぁ、今自然と肩がガクッとなったぁ。危うく弁当落とすとこだったんだけど~?
「そうとるか・・・。まあ、とにかくだ。もう、あんたに関してどーでもよくて、気を遣う必要がなくなったから、こうなってるだけ。仲良くなった訳じゃねぇし、友達だとは思ってねぇから。ただの同学年、ただの同級生!」
「ふ~ん。まぁ、同級って言っても歳は1つ上だけどね。」
「そうだな。」
柳は留年してしまってるらしい。友達を作ることに失敗し孤立。学校に行きにくくなりズルズル休み続けて今に至る。むしろ学校をやめていてくれたらこんな面倒なこと起きなかったのに・・・なんて思うのは許してくれ。思想、考えることは自由なんだと現代社会で習ったぞ。
「江河さんさ、」
「ん?」
2人とも適当な席につき弁当を広げている。ちなみにこの演習室には僕ら以外に人はいない。男女が2人きりでいればそりゃ入りづらいだろう。
「部活決めた?」
「あ”あ”?おめーに教える必要ねーだろ。」
「俺はね、テニス部なんだ。」
「聞けよ話をっ!」
全く会話が成立しない柳にまた大きな声で叫んでしまう。こいつ・・・いい加減にしろよ。なんなんだよ。
僕はしっかりと座り直し弁当のおかずを口に入れながら話をする。もちろん、話すのはちゃんとごっくんしてからだよ。
「ったく・・・、ソフトテニス部だっけ?へー入るんだ。女子ソフト。」
「男子ソフトだよっ!まぁ、去年間違えられて勧誘来られたけど・・・」
マジか・・・。ナイーブなとこだったのか。すまん。まあ、口には出さんが。
「それで、江河さんも一緒にどうかなーって」
「嫌だけど。」
「えっ!?」
「何驚いてんだよ。むしろ、驚かれてることにこっちが驚くわ」
目を大きく見開いて驚く柳に淡々と答える。もう、力の入ったツッコミは疲れた。
「なんで?今まで俺の頼み断ったことないじゃんっ!」
「そりゃ、断るほどのこと頼まれてねーし、断ってもお前聞く耳持たねーし、運動苦手だし、初心者だし、そもそも運動部って選択肢がない。」
「楽しいよ!一緒に夕日に向かって走ろうよ!」
「どこのスポ根だ。体育会系のノリって苦手なんだよね。勝負事は勝てなきゃ面白くねーし。テニス部がどんなんかは知らんが・・・」
「知ってみよーよ!」
「つーか、選手で誘ってんだろ?」
「もちろん!」
「本気で?」
「本気と書いてマジだよ!」
「俺、女だけど?」
「あ・・・・・・」
この野郎!性別忘れてやがったな?いや、別にそこまで怒る気はないが。だって、まあ、こんな口調だし。
「ご、ご、ご、ごめんっっ!その、違うの!ちょっと頭から抜けてただけで!忘れてたとかじゃ・・・」
柳の慌ててる姿、初めて見た。いや、告白の時もこんなだったか?あんときは自分も慌ててたからな~。しっかしいつもやられてる分、ここで返すか。慌ててんの面白いしな(暗黒微笑)
「別に気にすんなよ。こんな口調だし、ま、忘れんのも仕方ねーよなぁ?」
「ほんと?」
「おう。仕方ねーよ。ほんと仕方ねー。でも、仕方ねーのと傷ついたかどうかってのは違う問題だよなぁ?柳くんよぉ?」
「やっぱ、怒ってるじゃん!」
「怒ってねぇよぉ。ただ、友達んなりたいって奴が、そいつの性別間違えるかって思うんだよなぁ。いや、もう、ほんと柳くんの発言なんてなんとも思ってないけどぉ~」
「ち、ちがっ・・・」
と、まあ、上記の通り反撃はできたのでここら辺でやめる。やりすぎは良くないしな。
「つーか、お前、ガチで男子ソフトの方に誘ってたのかよ。マジやべーな。」
「う”・・・。ん?でも待って。江河さんがマネージャーしてくれたら・・・うん、俺、青春できそうな気がするっ!」
知るか。勝手に巻き込むな。
「僕の関係ないところで、勝手に青春してくださーい。」
「む。じゃあ、どこに入るつもり?」
柳は少し頬を膨らませてこちらを見てくる。怪訝な顔・・・って言うんだっけ。こういう顔。納得していない柳が納得するように一応答えておく。
「放送部かなって。」
「放送部?」
「うん。美術・イラストも捨てがたいけど、無難に慣れてる方向で。大会とか、負けるとすぐふてくされるから、できるだけ負けたくないし。」
「そっか~。そこはアスリートみたいだね」
いや、アスリートはもっと凄い人達だろ。お前の中のアスリート像どうなってんだ。
「声のお仕事か~。俺は無理だな~。やっぱ、昔の事があるし・・・」
こいつ・・・自ら地雷に突入してったな。バカなの?
「ふーん、どうでもいいわ。なんの感想も思い付かないくらいちっせぇことだわ。」
「そう言うの江河さんだけだからね~?女の子みたいってほんとにバカにされたんだから!」
柳は拳を握りしめ、胸の前で上下に振る。そういう行動が女子っぽいんだろうが。
「だーかーらー、外見・声・言動・その他諸々での“女の子みたい”だろ?んなこと言ったら俺だって男と勘違いされてたっつーの。なにより成長期前の話だろ、それ。今のお前見て“女の子みたい”はねぇって。あって“おネエみたい”だろ。」
「いや、結局中性的だし。俺は男として扱われたいのー!」
「だったら男らしくするこたぁな。外見は別に男なんだから、あとは言動だろ。声は外見に合ってんだから変える必要ねぇよ。」
というか、少なからず僕は普通に男扱いしてるしね。これを女扱いはできんわ。虫酸が駆け巡るわ。・・・言い過ぎか。
「そろそろ昼休み終わるね。離れたくないよ、江河さん~。」
腕にすがりついてくる柳を払いのけて、僕は立ち上がる。
「触るな。触られるの苦手なんだよ。」
「もーつれないな~。今日も楽しかったよ!やっぱり俺の目に狂いはなかった!」
柳も立ち上がり、演習室を出ていった。僕は柳の背中を見ながら思う。
(お前がいなかったら、声をかけてくれなかったら僕はまだ独りぼっちだったかな。感謝・・・すべきとこなんだろうな。悪いな、こんなんで。)
それはまだ言えない。言わない。言うならばもっと先になるだろう。
(お前は大丈夫だよ。だって、もうすでにキラキラしてるから・・・)
久々の更新。まとめきれなかった・・・。
次からは日常に入っていきます。更新は新学期からになります。
毎度毎度長くなるな、これ。すみません。




