グレイスの在り方
白い世界に色が戻った時、グレイスは絶望を感じた。
「・・また・・・また、この景色・・・」
グレイスを中心として広がる爆撃にでも遭ったかのような荒野。
その瓦礫の中から飛び出してくる人影が一つ。
それに反応したグレイスはその影に向かって、回し蹴りを繰り出す。
―が、その蹴りは当たることはなく、グレイスはその影に押し倒される。
「っく!・・・!?」
押し倒してきた影を殴り飛ばそうとしたグレイスは見覚えの在る赤茶色の頭に拳を止める。
「・・エレイナ・・・なのか・・・?」
グレイスが問いかけると、エレイナはグレイスを開放しゆっくりと立ち上がる。
・・・。
・・・。
「エレイ―っ!?」
声をかけようとした瞬間、グレイスの視界が空へと飛んだ。
そして地面へと落ち、もう一度エレイナを視界に捕らえる。
その一連の流れからグレイスは投げ飛ばされたのか と思った。
―視界の中に首の無い自分の身体が無ければ。
(え?・・今、何が・・・?)
混乱したグレイスが今起きた状況を整理していると、目の前で立ち尽くしていたエレイナが、糸の切れた操り人形のように力なく崩れ落ちた。
(今度は何だ!?次から次へと・・・)
愚痴を零しながら倒れたエレイナに目を向けると、グレイスは、エレイナの首に刺さっている小さな棘のようなものに気がついた。
あれは・・・針か・・?
グレイスがそれに気づくと二人の近くにある瓦礫が音を立てて崩れ、その中から外套を目深に被った男が現れた。
男はゆっくりとエレイナに近づくと懐から鎖で繋がった二つの輪っかを取り出した。
「―ッ!」
男の取り出したそれを視界に捕らえたエレイナの顔が恐怖と絶望に染まった。
・・・ギチッ・・・ギチッ
男は絶望に染まるエレイナの顔を見て口元にいやらしく笑う。
・・ギチッギチッ・・ギチッ・・
そしてエレイナの腕を持ち上げ、その華奢な腕に輪っかをはめた。
すると、エレイナの瞳から光が零れて地面に弾けた。
―ブツンッ
その時、グレイスの中で何かが千切れた。