その中にあるもの
グレイスのその言葉を聴いた他のお客さんとスタッフ達は大慌てで店から出て行った。
「貴女も早く逃げて!」
エレイナも逃げていくお客さんに言われるがまま店から出る。
店から出たエレイナは近くに居た人に聞く。
「何で皆さん逃げているのですか?」
すると聞かれた女性は、目を丸くする。
「あんた何言ってんの!グレイスさんを怒らせたらここら一体荒野になっちまうんだよ!?」
それを聞いたエレイナは来た道を戻る。
「ちょっとあんた!?危ないよ!」
その声を振り払ってエレイナはグレイスの下へと急ぐ。
「グレイス・・!」
エレイナが店内に足を踏み入れた瞬間。
目の前が真っ白になった。
―「あ~あ、皆逃げちゃった」
グレイスはおどけたように男達に視線を向ける。
「あ?てめぇ舐めてんのか?」
それに男達は思いっきり機嫌を悪くする。
そんな男達を見てグレイスは笑みを零す。
「そりゃあ、見下したくもなる・・・実力に差がありすぎるんだよ」
それを聞いた男達は更に機嫌を悪する。
「調子に乗るなよ糞我鬼が!」
叫びながら男達はグレイスに向かって殴りかかってくる。
グレイスはそれを冷めた目で眺めると、目を閉じる。
拳はグレイスの顔面に思いっきり入る。
「っふ、口ほどにも―」
「口ほどにも無いな」
「は!?」
驚いている男の拳を掴み捻り上げる。
「な、何で・・おま・・」
逃れようとして腕を引くが抜けない。
「だから言っただろう、実力に差がありすぎるんだ って」
グレイスは掴んでいる腕を指でも差すかのような軽い動作で横に振る。
すると男は車にでも跳ねられた用に吹っ飛んでいく。
店の壁を破り道路を20メートル程転がり止まった。
「お、おい。冗談だろ・・・?」
「覚悟しろ。冗談なんかじゃ表せない絶望をお前達に見せてやる」
それからは一方的な暴力だった。
男達は逃げようと走り出すも、動いたものから次々と吹き飛ばされていく。
恐怖で立ちすくんでいる者にもグレイスは容赦なく襲い掛かる。
しかもそれが終わったのは、瞬きを一つするかしないかの間の話だ。
冷静になったグレイスは自分の周りで横たわる男達を眺めて
「・・また・・またお前は俺に戦えと・・・そう言うのか・・」
悲しそうに、誰かに語りかけるように呟く。
『―』
「っ!?・・冗談だろ・・・こんな・・・こんな呪われた力で・・・・何が救えると言うんだ!」
『―』
「黙れ・・」
『―』
「黙れ!黙れ!黙れ―!!」
グレイスが叫んだ瞬間、グレイスの内側へと向かっていた力が外側へと放出された。