少女の在る意味
そんなこんなで宿屋へとたどり着いたグレイスは、二人分の部屋を取る。
が、エレイナがそれを止める。
「? どうした?」
「・・部屋・・一人分でいい」
その言葉にグレイスは耳を疑った。
「・・な、何だって?」
「泊まる部屋、一人分でいい」
聞き間違いじゃ無かった。
「で、でもそういう訳には・・女の子なんだし」
女の子という単語に反応して、エレイナの顔が赤くなる。
「それでもいいんです!」
顔を真っ赤にしてエレイナは言う。
「・・・わかったよ」
その勢いに負けてグレイスは渋々(しぶしぶ)了承する。
グレイスは一部屋だけチェックインするとエレイナを連れて部屋へと向かう。
部屋に着いたグレイスは、エレイナにベッドに寝るように言って、自分はソファに横になる。
エレイナは、グレイスとベッドを一瞥すると、ソファで横になっているグレイスの手を取り、ベッドに押し倒す。
「お、おい、何やってんだよ」
グレイスの言葉を無視してエレイナは服を脱ぎ始める。
それを見たグレイスはエレイナの腕を掴んで止めさせる。
「駄目だ」
「どう・・して・・」
グレイスの言葉に傷ついた表情のエレイナは、悲しそうに尋ねる。
「逆にエレイナはどうしてこんな事にまで思い至ったんだ?」
「・・私は、あなたの奴隷です。それなのに、助けられて・・どうすればいいのかを考えたら・・・」
「そうか・・・」
「だから、私は―」
その先を口に出そうとしたエレイナの口を塞ぐ。
「それでも駄目だ、それだけは許さない」
「・・・分かった」
エレイナの答えを聞いてグレイスは安心する。
「分かってくれてよかったよ」
ホッと息を吐くグレイスにエレイナも安心して睡魔へと身を委ねた。
「安心して寝るなんて子供みたいだな」
そう言ってグレイスは、笑みを零した。
規則正しい寝息が聞こえる宿屋の一室。
その部屋に蠢く人影。
コートのようなものを羽織ると、ベッドで寝息を立てている人物に近づき
「・・・ごめんね。」
と小さな声で呟いた。