交渉②
王城 謁見の間
普段ではあり得ない程の静寂がその部屋に流れていた。
「グレイス・ミュードラントよ、其方今、何と申した」
「後ろの二人は私めの奴隷である、と申しました」
はっきりとそう告げると、その場にいたグレイス達以外の全員がざわめき出した。
しばらくしてざわめきの中から一人の男が歩み寄ってきた。
「グレイス・ミュードラント、一つ聞くが…
貴様その言葉にどのような意味があるか分かっているのか?」
全身から溢れ出す凄まじいほどの威圧、俺の目の前にいるこの男こそがこの王国最強の矛、現国王近衛騎士団 団長 ゼルビノス・コルタントその人だ。
あまりの威圧によってエレイナ達だけでなく、王城で会ったことがある筈のアリエステまで震えている。
「はい、我が国アリエステ王国では奴隷売買は重罪。販売した人物及び、購入した当人の両人は厳罰、奴隷はその場で解放した後、王国の預かりとなる。
その際、当事者が自白したか否かは罰の重さには考慮されない。
なので、私は今奴隷売買をしたことを自白したということになります」
グレイスが言い終えると、部屋の端で控えていた衛兵達が数人近寄ってきた。
その時視界端で重鎮達が笑みをこぼしたのが見えた。
…そういうことか。
「意味がわかっているのなら問い直す必要もあるまい。
グレイス・ミュードラント、お前を奴隷売買禁止法違反で拘束させてもらう」
ゼルビノスの一言で周りの騎士がグレイスを拘束する為に近寄ってくる。
その光景を、エレイナ達は顔を青くさせて見ていることしか出来ない。
絶体絶命、そんな状況が予想外の所から発せられた言葉によって解消された。
「この茶番はいつまで続くのかの?」