懐かしい顔
「相変わらず集団で群れることが好きな種族よのう、人間」
小さい体から放たれるとんでもない圧力に騎馬達が怯え、慌てふためき出す。
精神力の弱い者は鬼の圧力に耐えきれずに意識を失って倒れていく。
連合軍の殆どが倒れ、辛うじて意識を保っている者が何人かいるが満身創痍で今にも倒れそうだ。
「おい、やり過ぎだ。
話しやすいようにしてくれとは言ったが、これでは話の証人が少ないだろう」
そう言って鬼の頭を小突く。
「仕方ないではないか、人間のレベルがここまで落ちているとは思わなかったのだ」
小突かれた頭を抱えながら恨みがましい視線を送ってくる。
そんな目をしても駄目なものは駄目だ。
「おい、グレイス。
儂らのことを忘れておらんか…やはり貴様か」
待ちきれなくてやって来た帝王スライムが、鬼を見て溜め息をついた。
「おぉ、懐かしい顔だのう。
お主、生きておったのか、冒険者に狩られたものと思っていたぞ」
おや、二人は知り合いなのか?
「アホ抜かせ、お主はグレイスの中からずっと見ておったじゃろうて」
「ふっ、やはり気づいておったか、気づかれていないと思っておったんじゃがなぁ」
「お主は昔から力だけは強かったが、力の制御はてんで駄目じゃったからな。
粗だらけの制御で儂らのような存在に気づかれないわけなかろう」
二人は旧知の仲のようで、軽口を叩き昔を懐かしんでいるようだった。
っていうか、盛り上がるのはいいんだけど、それじゃあ話が進まないから。
「二人共、昔話は後にしよう。ここには二人以外にもいるんだから」
二人の間に入るように話を切り上げさせて、鬼の圧力に耐えたブレイ達とこれからの話を始める。
「さて、これからの話しだが、厄災級の魔物 帝王スライムが人間にとって害を与えない魔物だという事がこの状況から分かるように確証された。
それによって、帝王スライム達とどのような関係を持つことが最適解なのか考慮する必要が生まれてきた。
そのことに関して、連合軍隊長としての見解を聞かせて欲しいのだけど構わないかな」
状況整理の結果、これからの連合軍はどう転がるべきなのかブレイに尋ねたのだが、その首を横に振った。
「私としては、帝王スライムが有効的な魔物であることが確認できたからこのまま軍を退こうと思う。
しかしながら、この場にいない者達からすればそんなことがあり得るとは到底思えないはずだ、だからこの件は一旦、国王の元に持ち帰りたいと思うのだが構わないか?」
「そういうことならばこちらとしては、大歓迎だ」
ブレイの言う通りだ、この場にいる騎士達は帝王スライムが友好的な魔物であることが理解できるだろう。
だが、魔物という存在は人間を襲うという点においては、この世に存在する全ての人間が思っている心理だ、その心理を持っている者達に友好的な魔物の存在を伝えたとしても、心理から外れているものを受け入れられる者がどれだけいるかは火を見るよりも明らかだ。
だからこそ一度、持ち帰り様々な意見を聞いてから答えを出すべきだろう。
それでも納得できないようであれば、帝王スライムに王宮まで出向いてもらって実物を見せればいいことなのだから。
その後は、これからのことについて打ち合わせをしてブレイ達は帰っていった。
ブレイは去り際に
「グレイス・ミュードラント!私はお前を絶対に認めない。
次会うときは必ず捕まえてやるからな覚悟しておくことだ!」
ブレイ、お前とは長い付き合いになりそうだ。
連合軍が見えなくなるのを確認してから帝王スライム達とエレイナ達の元へと帰った。
因みにエレイナとシェートはスライム達と遊んでいた。
…戦いになるかもしれなかったのに呑気だなおい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回は特に告知事項などはないです!
次回 帝王スライムが…
お楽しみに!




