暗躍する者達
グラントイス帝国
「彼奴が動き出したというのは本当か」
「はい、今年はあの者が16になると年であり、アリエステ公国の間者から聞いた話によりますと、今年から冒険に出た冒険者を最短で5年間入国禁止にするとの事ですので、こちら側へ誘い入れるにはちょうど良いかと思われます」
「成程な・・・」
冒険に出たら本国へは帰る事ができない状況で、こちらへ誘い入れるのは容易な事だろう。
しかし、この国へと誘い入れた場合、5年間は問題無いだろうが5年経った後は、本国又は家族の者からの返還要求があるかもしれない、そうなった場合はこちらに拒否権はない。一人の人間の行動を制限する権利は我々には無いからだ。それを可能にする為には、この国に滞在するだけの価値があるとその者に思わせる必要がある。
「陛下、その者についてもう一つご報告が御座います」
「何だ」
「その者は最近、数人の女を侍らせているようでして、その女共にかなり執心しているようなのです」
「つまり?」
「つまりその女を捕え、人質として本国へと帰られなくするのです」
成程な、我が国の大きな資金源として利用し、搾り尽くしてから女を返してやるという寸法か、悪くない考えだ、上手くいけば我が国は世界有数の発展国になる事ができる。
貧困国である我が国にはどうしても欲しい人材であることは間違いない、多少のマイナスはプラマイすればプラスになる、ならばこの手でいくのが一番成功率が高い。
「・・・良い案だ。あの者がこの国へとやって来たらそのようにするが良い」
「はは、有難きお言葉。それではあの者が入国した際にはそのように」
「報告はそれだけか、であれば下がって良いぞ」
「はっ、失礼いたします」
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この国にいたら俺まで頭が悪くなりそうだ。
どいつもこいつも物事の上辺のことしか考えない、今回の作戦でも上手くいけばかなりの利益になるだろう、だがこの作戦には大きな穴がある。
前提条件として、女を容易に確保できる事が必要になる。
間者の報告によると、アリエステ公国の王国守護騎士なる者も今年16になるらしい、しかもその守護騎士はその者の幼馴染だという、皇帝もその事は知っているはずなのだ、だが今回の作戦が通るということは皇帝がその事を考えに入れていなかったという線が濃厚で、他の大臣達と全く一緒なのだ。
「・・・魔王様も酷い命令をする。
この国を人間界進出の足掛かりにするなんて、こんな馬鹿ばっかりの国なんてどう利用すると言うのか」
誰もいない廊下に溜息が溶けていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回ようやく冒険へと旅立ちます。
冒険回を待っていた方お待たせいたしました。
それでは、次回もお楽しみに!