少女の過去
どうも、雪月華です。
『俺の嫁は奴隷だけど何か?』第三話も楽しんで頂けたらと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
「かなり時間が掛かったな・・・これからどうしようか」
武器屋から出てきたグレイスは、ため息混じりに呟く。
それもその筈、オーダーメイドの注文をするだけで2時間も掛かってしまったのだ。
紙を書く間、店主のおじさんが居眠りをしていたほどだ。
時計を見るに現在時刻は18時過ぎ、そろそろお腹が空いてくる時間帯だ。
「夕飯は何処かで食べていこうと思ってるんだけど、何か食べたいものとかある?」
少女は少し間を置いて否定する。
遠慮しているのか?...別に気を使わなくてもいいんだけどなぁ。
「そうか、じゃあ適当にどこかに寄ろうか」
そう言って二人は歩きだす。
少し歩いて二人は手ごろな店へと入る。
昼間みたいに隣に立とうとした少女を、先に座らせてグレイスも席に着く。
文字の読めない少女の代わりにグレイスは、少女の食べたいものに合ったイメージの物を注文する。
料理が来る間にグレイスは少女に話しかける。
「なぁ、少し話をしないか?」
「・・・?」
グレイスの言葉の意図が理解できなかったのか少女は首を傾げる。
あれ、分かりずらかったかな。
「いや、お互いの話をしないかな~って思って」
それを聞いた少女は、『あ~』とでも言うように頷いた。
お、理解してくれたみたいだな。
「じゃあまず、君の歳から教えてもらえるかな」
それを皮切りに、料理が来るまでの間お互いのことを話し合った。
少女の名前は、エレイナ。歳は16。3歳の時にエレイナの住んでいた村が襲われ、命からがら逃げ果せた森の中で行き倒れているのを猟師の夫婦に拾われて、5歳まで夫婦の子供として育てられた。しかし、ある日その家が山賊に襲われて、夫婦は殺され、エレイナは捕まってしまった。捕まったエレイナは幸か不幸か、身体を弄ばれることは無く、奴隷商人へと売られて、グレイスに買ってもらうまであの店で売られていたらしい。
「そんな事が・・・」
少女の生涯に涙が零れそうになるのを堪えていると、料理が運ばれてきた。
「・・・続きは食べてからにしようか」
「そう・・ですね」
少女もそれに同意して、二人は互いに料理に集中する。
それからしばらくして、料理を平らげた二人は、店を出て宿屋へと向かう。
向かう途中の公園で催したのでグレイスはトイレへ、用を足している間もグレイスはエレイナの事を考えていた。
3歳で村を襲われ、5歳で奴隷となった。それから約10年も奴隷として売られていた。
今まで、なに不自由無く過ごしてきたグレイスには想像も出来ない話だった。
そんなことを考えながらエレイナの下へ戻る。
「いいじゃねえかよ、俺らと一緒に行こうぜ」
そんな声がグレイスの耳に入ってきた。
声のした方に視線を向けると、数人の男が一人の女の子をナンパしていた。
なんだただのナンパか・・・ってそうじゃねぇぇえ!あれどう見てもエレイナじゃねぇか!
心の中で絶叫するグレイスを見つけてエレイナが縋る様な視線を送ってくる。
それに気づいた男達も釣られるようにグレイスに視線を向ける。
男達の視線にうろたえるグレイスだったが、エレイナの少しホッとしたような視線に奮え立たされる。
「あの、僕の連れに何か」
そう下手に出て聞いてみた。
「何こいつwこの子の連れ?ww無いワーww」
「マジそれww全然釣り合ってないワーwww」
男達はグレイスを煽るように言う。
「そうですか、では、僕達は急いでいますので」
だが、当のグレイスはそんなことは意に介することなく、エレイナの手を取って男達から離れる。
「・・・」
そのグレイスの様子を見て、男達は唖然とする。
それもそうだろう、自分たちのことを無視して一人の小僧がナンパしていた子を連れて歩き去っていくのだから。
「おい!何無視してくれてんだよ!」
逆上した男の一人がグレイスに殴りかかる。