悪夢の始まり
勢いよく開いたドアから二人の少女が転がり込んでくる。
その様子を母は冷めた目で見ていた。
「・・・何なのですか?人の話を盗み聞きするとは」
母の威圧的な視線に二人とも申し訳無さそうに俯いた。
「グレイス、あなたはこんな常識知らずな者達と旅をするというのですか?」
その視線が俺の方へ向いた。
いや、怖いから。
「その常識知らずがなぜかはこれから説明するよ」
エレイナ達を横に座らせて俺は二人と出会った経緯となぜ常識知らずであるかを母に話した。
それを静かに聞いていた母は、ゆっくりと口を開いた。
「事情は分かりました。ですがその事情は、私たちが関与するわけにはいきません。あなたもそれは理解しているはずですよね?」
母の言葉に頷く。
「それは理解しているよ、でも今回は仕方なかったんだ。騎士に捕まりそうになって逃げる場所を考えたらここしか思い浮かばなかったんだ」
その言葉に母はため息をつく。
「だからといってここに問題を持ち込むのは筋違いでしょう」
「そう言われたら返す言葉もないです・・・」
そう俺が呟いた時だった。
玄関のベルがけたたましく鳴らされた。
「こんな時間に誰かしら」
お手伝いさん達はもう帰っているので母が玄関へと応対に部屋を出ていった。
その時、グレイスの背中に悪寒が走った。
それを感じたグレイスは玄関へと走った。
知っている、俺はこの感覚を感じたことがあるこの感覚は放っておいてはいけない、放っておいたら必ず 後悔する!
「母さん!開けちゃダメだ!」
「え?」
グレイスに声を掛けられてグレイスの方へと振り返る。
が、一歩遅かった。
少しだけ開けられたドアの隙間から腕が伸びてきて 母の華奢な体を捕まえた。