解決したと思ったら…
「よっと」
転移した先で二人を降ろす。
「大丈夫か?」
降ろした後も固まったままの二人が心配になって声をかける。
テレポートは便利な能力だがごく稀に精神を置いてきてしまうことがある危険な能力でもあるのだ。
「だ、大丈夫」
そう言ったエレイナにシェートも頷いて安全確認が出来た。
二人とも問題がない様で何よりだ。
「大丈夫なら二人ともお風呂に入っておいで」
流石に風呂の入り方は知ってるよな。
「タオルは風呂場のタンスの引き出しの中にあるか ら、着替えは流石に女物は持ってないから今日は俺の 寝巻きを使ってくれ。 あ、風呂場はそこの扉を出て左 に行った突き当たりのドアだから」
「わかった、ありがとう」
シェートは一言お礼を言うと、何故か真っ赤な顔をしているエレイナを引きずりながら部屋を出て行った。
足音が聞こえなくなると口からため息が溢れた。
「さて、明日からどうしようかな。警備兵から逃げた訳だし街に行くのは危険だよなぁ」
街の南側に商業が盛んな街があるが、入国検査が厳しいという噂だし、東の街は歩いて行くのには遠すぎるし、そうなると西の街になるんだよな。
グレイスが渋るのには理由があった。
西の街サンタグリーチェは第三次産業を生業として栄えてきた街だ。 それだけを聞くとごく普通の街なのだが、サンタグリーチェには男という性別の者が存在しないのだ。
一般論からすると女性しかいない街がどうして男も無しに子孫を残し繁栄してきたのか理解が出来ない筈だが、まあこの話はするべき時が来るので後回しにしよう。
サンタグリーチェには女性しか存在しないため、男の立ち入りを禁止している、しかしその禁止条例にも抜け穴がある。
検問所での検査の際に女装をし、オネエのふりをすればかなりの確率で検問を抜けることが出来るのだ。
「そんなことしたくないんだけどなぁ」
その時だった、
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
家中に響き渡るほどの悲鳴が聞こえた。




