監視
エレイナは目の前で起きている状況が理解できずに、驚きの表情でグレイスを見ている。
「これで契約は解除だ、何処へでも好きなところへ行くといい。金については気にしないでいい」
そう言ってグレイスはエレイナの手に皮の袋を握らせる。
エレイナはそれが何か理解し、グレイスに返そうとした。
だが、グレイスはそれを制するとエレイナに背を向ける。
「・・・じゃあな」
それだけ言うと、グレイスはエレイナから視線を切って歩き出した。
エレイナはその背中を眺める事しか出来なかった。
「・・・これで良かったんだよな」
先ほどの爆心地から少し離れた商人街。
どこの建物も店になっており、店じゃない建物を探 す方が難しい位だ。
そんな中で誰も反応しないと分かっているが、グレ イスの口からそんな言葉が溢れる。
さっきの件で俺が普通の人間じゃ無い事はバレちまったし、あの力を使った以上は、政府からの追っ手が 来るはずだ、それを考えるとこの判断は間違って無い。
ー無いはずなんだ・・・なのに何だこの気持ちは。
「ー!?」
そんな物思いに耽っているとグレイスは自分に向い ている視線に気づく。
全部で4人か。
政府の奴らが2人、素人が1人、もう1人はー
最後の1人を確認すると、グレイスは笑みを零し、全員の視界から消える様に路地裏へと入る。
監視者も当然の様について来るが、一瞬の隙をつい てグレイスは、隣の家に窓から侵入し、家の中を突っ 切りもう一つ隣の家へと入る。
それで素人の監視は消える。
家から出て、残りの3人の位置を確認すると、今朝の武器屋へと向かう。
店に入ると店主が驚いた様に出迎え、店の隠し扉へと案内してもらう。
最初は怪訝な顔をしていた店主だが、事情を話すと快く案内してくれた。
別れ際に店主に伝言を伝え、店を後にする。
それで監視の目は無くなる。
グレイスは夕焼けに染まり始めた空を見上げ、ため息を吐く。
「面倒臭せぇ」




