第6話 〜竹の林と兎の少女〜
〜紋華side〜
どーも‼︎只今絶賛迷子中の夏凪紋華です‼︎
もう誰でも良いから助けて下さい‼︎
…いやもうほんと意味わかんないよ〜
森の中行ったら望倒れるし、いつ寝てたのか分からないけど起きたら森林が竹林に変貌してるし、さっきから見られている気がするし…
危害を加えないなら良いが、こっちは迷子なんだから道を知っているんだったら早く教えて欲しい。
と言うかさっさと出て来て欲しい。もう一回言うけどこっちは迷子なんだ。
それにしてももう一時間位この辺りを廻ってる気がする。いや、回っているつもりは無いし、寧ろ真っ直ぐに進んでいるつもりなんだけどずっと同じ場所に戻って来てしまう。
いやそもそもこの竹林は方向感覚が狂うような風景が延々と続いているから、もしかすると前に進んでいるのかもしれない。
そんなことはどうでもいいが、進んでいたとしてもいい加減疲れて来た。
一時間も同じ風景の道を歩き続けているのだから肉体的にも精神的にも疲れるのは当たり前だ。と思う。
竹林の中で一旦休もうかな、と思い始めた時不自然に開けた場所に出た。
辺りは多すぎる竹の所為で薄暗いがそこだけ日の光がはっきりと差し込んでいて、竹が倒れたようなものが幾つもある。竹の断面は触れてみると少し濡れていた。他のも同様。ということはこれ全部同時期に倒れたもので、あまり倒れてから時間が経って無いみたいだ。
地面には焼け焦げた跡があり、周りの竹も途中から焼き切った跡や燃えた跡が残っている。更に足跡があったのだが、ここで奇芸でもやらないとこんな足跡はつかないだろう方向に曲がっていたり足跡を辿っていくと途中からいきなり消えたり地面を滑りながら削った跡があったり散々だった。
地面は襲撃にでもあったような穴が二つ三つ空いている。
全く訳が解らずその場に立ち尽くして首を傾げていたが、幾ら考えた事で分かる筈も無く仕方ないので腰を下ろした。
が、すぐに立ち上がる。ここに足跡があり、竹が倒れたのも新しいとしたら近くに人が居るのでは無いだろうか?
この戦場跡(仮)が頼りになるとは思え無いが、周囲に足跡くらい残っている筈だ。
開けた場所の周囲を探していると案の定歩いていった痕跡があり、辿って暫く行くと足跡が消えていたが顔を上げて見回すと少し先に続いていた。
少し気になるが構わず進もう。一歩踏み出したその時、方向感覚が崩れて思考が吹っ飛んだ。
反射的に目を瞑ってしまったが、すぐに目を開き穴に落ちたのだ、と気付く。
穴の深さは身長の半分くらい。這い上がれないほどでも無いが、明らかに人為的なものだ。
これを作った奴に若干の恨みを持ちつつ落とし穴から上がろうとするが、その前に顔を覗かせている少女と目が合った。
「また馬鹿な人間が引っ掛かったウサ」
そう言って悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべて来た。こいつ、許さん…
「精々頑張って自力で這い上がって来いウサ」
「あ、待て!」
そう言うが否か、少女は脱兎の如く走り去って行ってしまった。そう言えば、あの少女は兎の付け耳と人参の髪留めを付けていた。コスプレ趣味でもあるのか?
そんなことより今はあの少女を追いかけよう。落とし穴の恨みもあるけれど、あの子はほぼ確実に道を知っている。
それ以前にまだ落とし穴に嵌ったままだった。早くしないと見失うから、さっさと抜け出す事にする。
手を地面に着けて高くジャンプする。4回程で何とか脱出に成功した。
あいつは精々頑張れとか言っていたけど私の運動神経舐めんなよ。
絶対に追いついて見せるから。
そのままあの子が走り去って行った後を追いかけて行った。
遅くなってごめんなさい。
明後日に試験控えているのに何やってんだ自分…