第4話 〜森と狼と魔法使い〜
悠花の話です
どうぞ‼︎
〜悠花part〜
すごく簡略的に分かりやすく言おう。
…私は今、命の危険に晒されている。
冗談じゃなくて、本気だ。今のご時世生命の危険なんてそうそう感じはしないだろうが、それでも私は本当に危機感を感じていたのだ。
今足を一瞬でも止めたら私の命は既に無いのだろう、もう激しく動悸を起こし今にも倒れてしまいそうだったがそれでも止まる事なく走り続けた。
すぐ後ろに迫る唸り声と足音。こいつが今の状況になった元凶だ。
そう、私は何故か巨大な狼に追いかけられていた。
片耳だけに付いている青いイヤホンが揺れ、時々視界の隅に映るが、そんなこと気にしてられなかった。
左耳に大音量で流れて来るボス戦のBGMが、今の状況の非現実性を増幅させている。巨大狼に追いかけられて逃げていくなんてなんとも滑稽だが、実際その状況になって見ると全く笑えないし余計な事は全く考えて居られなかった。
「くぅ…っ‼︎」
そもそも何で起きたらいきなり襲って来るんだ‼︎
狼って人間を食べるものだっただろうか?
いや、そもそも襲う個体自体が狂犬病にかかった奴だったような。
だとしたらこの狼は狂犬病ってやつなのか?全く運が悪い。
思考を巡らせるも、当の元凶はただ追ってくるだけだ。
木々の間を縫って少しでも距離を開こうとするが、狼も同じルートを通り近づいて来る。
刹那、いきなり視界がぐるんと反転した。
倒れていた細い木につまずき、体の前面が地面に叩きつけられる。
狼は目の前まで迫っていた。もう駄目だと思った時、一つの異変に気がついた。
狼が怯えていたのだ。
全く訳が分からずぽかんとしていると、両耳に音楽が流れて来た。
慌てて下を見てみるとさっきの衝撃でイヤホンが機器から外れている事に気がついた。
機器からは先程のボス戦のBGMがまだ流れていて、狼を一度ちらっと見ると私はそれをバッと取り立ち上がる。
どうして狼が怯えたかなんて知った事ではないが、これは好機だ。
そう思い直ぐに地面を蹴って逃げ出そうと思ったがその前に狼は何故か子犬のように縮こまり、尻尾を巻いて逃げていった。
後に残ったのは、状況について行けず目を見開き唖然と立ち尽くす少女と未だに音楽を垂れ流し続ける機器だけだった。
あの事態からとりあえずそこら辺に倒れている木に腰掛け、青いイヤホンを探し出して装着した。この方がなんとなく落ち着くのだ。
音楽を聴きながら息を落ち着かせて体力を取り戻す。
あんな奴がこの森に沢山いないとも限らない。
そんな得体の知れない森ならさっさと抜け出したいが、まずは体力とすり減った精神の回復に努めるべきだ、という考えから今の状況に至る。
〜少女休息中〜
大分体力も回復してきた。そろそろ行こうかなと立ち上がり、歩き出す。
こうやって見ると意外と神秘的な森だ。不思議なキノコがあり絶対毒もってるだろうな、と思いつつ顔を近づけてみた。
淡くオレンジ色に光るこのキノコは、何て名前だろうか。
出来れば持って行きたいが、無闇に触ると危険な気がする。結局そのキノコは諦め、再び歩き出した。
しかし、不運はこの私を放って置いてはくれないらしい。背後に気配を感じ、振り向くとさっきの奴より少し小柄な黒い狼が三匹程唸り声を上げて襲いかかってきた。
「グウゥゥ…」
「なっ」
全くついてない。先程に続き、また逃走劇が始まるのか、と絶望した。
取りあえず三匹の狼から慎重に距離をとり、身を翻して一気に足で地面を蹴って逃げ出す。
狼等はそれ程すばしこくは無かったものの、連携を取って四方八方から襲って来る。
なんとかそれをぎりぎりで避けながら私は走って逃げて行き、しばらくして巻けたかな?と思い後ろを振り返ると、狼はすぐそばまで迫って来ていた。
「そこを退くのだぜ‼︎」
突如上から声が聞こえ、黄金のレーザーの様な光の粒子が狼達を飲み込んだ。
「…へ?え?」
当然私はいきなりの出来事に対応出来なかったのだが、上に誰かいる?と思い頭上を見ると、金髪の少女が八角形の箱を片手に構えて宙に浮く箒に乗りニカッと笑っていた。
「危機一髪だったな!」
少女は地面に降りて来てこう言った。
「私の名前は霧雨 魔理沙、普通の魔法使いだぜ‼︎」
……全く意味が分からなかった。
こんな感じで続きます。
次回は心映part‼︎
感想やアドバイスなど貰えると執筆速度が倍になります。
なので一言でも書いてくれると嬉しいです。
なるべく3日以内に書き終わるようにしますがな。
では次回まで‼︎