第3話 〜紅い館と湖の近く〜
ではどうぞ‼︎
〜望side〜
「うぅ…?」
まだ朦朧とする意識の中、引きずり出されるような感覚に陥って私は目を覚ました。
伸びをして辺りを見回すとまず見慣れない建物が目の前にあり、思わず目を見開く。それは洋風の館のようで、かなり大きかった。それだけではなく、館全体が真紅に染まっている様に紅く周りの自然とは世界が隔離されているかのような、しかし不思議と違和感は感じなかった。
夢でも見てるのかな?そう思って頬をつねってみるけど痛かった。どうやらここは現実みたいだ。
でもこんな現実味がない景色を見ていると、夢の国にでも迷いこんだみたいだな。ついでに動物と喋ってみたいとか思いながら、不安で仕方が無かった。全く知らない土地で、一人きり。それだけで現実逃避ってできるんだね。
そういえば、なんでこんな所にいるんだっけ?
確か、紋華と悠花と心映と私の4人で待ち合わせて森に行ったんだった。そこで私は蛇を見つけて、木の枝にぶつかって…
そこから記憶が無い。多分その後私は倒れたんだろう。
でもそうしたらここは一体どこだろう?みんなは?どうして森の中にいたはずなのに野原の真ん中にいるのだろう?
再び際限なく分かるはずが無いだろう疑問が出てくる。
しかしここで唸っていても仕方ない。そう思い、湧き上がる疑問を払いのけて私は立ち上がった。
目指すのはあの紅い洋館。あそこに行けば何か分かるはず。
私は湖の近くの野原を後にした。
例の洋館の方向へと足を進めること数十分。私は巨大な館の門の前にいた。
この洋館は近くで見ると目を痛めそうな紅に染まっていて、遠くで見ていた時とは比べ物にならない程だった。
とりあえず誰かいないかなと門の方向を見ると、中国の民族衣装っぽい服を着たお姉さんが門の壁に寄りかかっているのが見えた。
早速第一住民発見だな、と思い私はお姉さんに近づいていった。
「あの…ここは何処です…か…?」
近くに来てみて分かったが、このお姉さんなんと立ったまま寝ているのだ。
これでは話のしようが無い。というかそもそも門番の意味が無い。
「おーい、門番さーん…」
「おーい…」
「…はっ‼︎いや咲夜さんこれは違うんですあのだから頭ナイフだけは止めて下さいいーー!!」
「えっ?…いやとりあえず落ち着いて?」
なんか必死に弁明し始めた。頭ナイフとか凄い事言ってた気がするけど気のせいだよね、うん。
あと咲夜さんって誰だろう?
「あの…?」
「えっ」
「…」
目が合い、沈黙。みるみる内にお姉さんの顔が赤く染まっていく。
「…ぁあ、え、えっと…今の、見てた?」
こくんと私が頷くと、その女性は顔を覆って悶絶した。余程恥ずかしかったのだろう。私がおろおろと困っていると、そのお姉さんはハッとこちらを見たあとに慌てて姿勢を正した。
「こほん、…えっと、ここに何か用事ですか?」
「え、いや…用事というか、ここの地名を聞きたいのです…」
そう言うとそのお姉さんは驚いた顔をした。
「…ここを知らない?それに、その服装は…貴女、もしかしなくても外来人でしょう?」
「外来人?」
私が首を傾げていると、女性は納得したように頷き、
「ああ、これは長くなりそうですね。今紅魔館入館の許可を取るので少しここで待って頂けませんか。」
「あ、待って下さい」
「なんでしょう?」
「名前だけでも聞かせて貰えると助かるのですが…」
「ああ、全然構いませんよ。私の名前は紅 美鈴。この紅魔館の門番を勤めています。貴女の名前も教えて頂けませんか?」
「美鈴さんですか…私は望です。」
「私の事は美鈴で良いですよ。それでは」
美鈴はお辞儀をした後、紅魔館へ走って行った。
望の話です‼︎
次回は誰だそうか…