百合さんとタカ
2人ぼっちに出てきた、タカとシュンが共演したドラマはどんな話だったか?を想像して書いた作品です。私の彼役がシュン、画家役がタカと明記してあります。
百合さんは28歳で、私と一番年が近いし、OLさんで仕事も似たり寄ったり、しかも絵画教室に来たきっかけもあまり深い意味も無く、何となく楽にいられる人だった。ロングヘアのモデルさんみたいに格好いい人だ。物静かで。
毎回シュンと一緒に教室に通えた訳でも無く、百合さんと一緒になるといつも帰りは2人で居酒屋で一杯飲んだ。
『いいわね〜、あんな素敵な彼氏がいて、趣味も一緒だなんて。早く結婚しないと他のおばさん達に誘惑されるわよ?』
『そーですね。ありがたいです。でも、何と無く結婚の実感がわかなくて。まだ遊んでたいんですよぉ。家事も苦手だし』
私達は焼き鳥やお刺身やもつの煮込みや揚げ出し豆腐などをぱくつきながら、確かに結婚したら子供が大きくなるまでは、こんな風に絵を習ったり居酒屋で遊んではいられないわと、毎回盛り上がった。
『百合さんは、どんなタイプが好みなんですかぁ?タカ先生みたいなのとかぁ?』と酔って聞く私。
『ふふ。貴女、タカ先生に惚れてるでしょう?愛子さんとタカ先生の事なんてまるで刺すように見てるわよ、怖い怖い!よそ見してるんだったら私が貴女のシュン君頂くわよ?』
『うわぁ、冗談でもやめて下さい!百合さんに迫られたらシュンなんてイチコロですよぉ』
と、私は大真面目に反抗した。
百合さんはシュンより2つ年上だ。オトコってのは年が行くと若い子が好きだろうが、高校生あたりから20代後半あたりまで年上に憧れるのが多いのでは?というのが私の見解だ。しかも2つ上なんてのは一番程よい年齢じゃないだろうか?百合さんのノーブル雰囲気はシュン好みのはずだ。
その日、飲み過ぎた私も百合さんもちょっと口が軽くなっていた。
『あのね?貴女が決まった彼氏がいるから打ち明けるのよ?絶対秘密だからね?』
と、百合さんはちょっと勿体をつけた。
『私ねぇ、大昔だけど、タカ先生と一度寝た事あるのよ』
私は思わず飲んでいたレモン杯にむせた。
『.........』
『10年前の話。タカ先生って高校の1つ先輩なの。あのお面でしょ?サッカーも上手いし、あとこの画廊の跡取りだって言うんで昔から引く手あまたよ。彼の事知らない人はいなかったはずよ。』
私は恐る恐る聞いた。
『百合さんの元彼ですか?』
『違う違う。彼女は知らないわ。いなかったんじゃない?私は初体験のお相手を彼に頼んだって訳』
くうぅ。羨まし過ぎだろ?
私は黙って先を促す。
『彼は初めてだったのかしら?よく覚えてないのよ。夢中だったし。若いって怖いわね。タカはその後東京の美大だし、私はそれから受験だったしそれっきり。この教室の案内をネットで見た時は驚いたわ』
うわぁ、呼び方もタカ先生からタカに変わったし....
『タカ先生との再会どうでした?』
『私ももしかしたら忘れてるだろなっと思ったの。私も忘れてたし。そしたらこの前、お前随分痩せて見違えたな、ビックリしたよ。なんて言うのよ。ふざけたオトコでしょ?まぁ、昔の思い出ね?』
と、百合さんは満足そうに笑った。
いやいや、私の酔い、すっかり冷めたから....
しかも極め付け
『私、貴女のシュン君の方が好みの顔なの。一度だけお願いしたらダメかしら?独身の思い出として』と言うもんだから冷めに冷めた。
いやぁ、女は怖い。綺麗な女はやっぱり怖い。
あれま?おとなしそうな百合までも?美人はやっぱり過去有りね?