誰の子?
2人ぼっちに出てきた、タカとシュンが共演したドラマはどんな話だったか?を想像して書いた作品です。私の彼役がシュン、画家役がタカと明記してあります。
母親になって、一つ分かった事がある。
子供を守る母親はなりふり構わないって事。
そう考えると、行動は褒められたものでは決して無いが当時の愛子の気持ちと不気味さが少し分かる気がする。
以下、あの時タカに聞いた話からの愛子の心理を私が勝手に想像したものだ。
【主人が元の彼女に戻ってしまい、子供が出来た。あんなに自分と娘を愛してると言ったのに。幸せにすると言ったのに。貴方はこれから元彼女と夫婦になって新しい子供を私の娘より愛するんだよね?許せない、許せない。必ず金持ちの男を捕まえて見返してやる。
元彼女の弟が絵画教室にをやってると聞いた。チャンスだ。弟に張り付いてなんとか脅迫してやる。嫌がらせしてやる。簡単に諦めるものか。そもそもなぜ私が身を引かなくちゃならないのだ?
その絵画教室に、イケメンかつ金持ちの彼氏と一緒に世間知らずの女がのんびりと入会して来た。恵まれた彼氏がいるくせに、絵画教室の講師にまで色目使っている。こいつらも、目障りだから誘惑して金でも引き出して振り回してやろう。別れたらラッキーだ。うんと苦しめ❗️
教室に若い大学生がいるが、こいつもお嬢さん風の独身女に夢中だ。誘惑して振り回してやろう。】
ざっとまぁ、こんな感じだろうか?
愛子は復讐と言うより、娘に父親が居なくなって、今後の不自由な生活をするかも知れない事に心を痛めていた。きっと。
もし私だったら?
シュンが元彼女に戻って子供を作り、私とユナを捨てたら?シュンの再婚した相手の弟が、思いがけず手の届くところにいたら?私が幼いユナを置いて、夜も働からかなくてはならなくなったら?
私も、もしかしたら愛子と同じような行動をとるかも知れない。それはまさに、家族を愛していたからこその未練であり、慟哭であろう。
そんな私の回想とは裏腹にユナは無邪気に元気に育ってくれている。ほとんどソウルで育ったが、私達が日本語で話すので、日韓、両方の言葉を混ぜごぜに話すのが愛らしい。
笑いごとでは無く、そろそろどんなスクールに入れるか思い切って日本に帰るか、真剣に考え中だ。
音楽は好きみたいなので、お約束のピアノはやらせようかなと思っており、その日は天気も良く、江南をウロウロしていた。
するとユナが前から画用紙にクレヨンやら色鉛筆やらで、書きなぐるのは好きなのだが、
『オンマ〜、ナ クリム ペオゴ シッポン....』
“ママ、私絵が習いたい”
と、言った。
まさか?
私は血が凍る気がした。
ユナはもしかしてもしかして、タカの子?あの時の?あのたった一回交わっただけの?
冷静に何回も考えて計算してみる。が、焦りすぎて良く思い出せないし、ソウルに来てからすぐに妊娠したので、前後の記憶がなんだか抜けている。
もし、タカの子供だったら?
私は幼いユナを残して、この広い漢江に飛び込むしかない。どんなにシュンがお人好しな善人でも、それだけは許されまい。
【日本人女性、ホームシックか?幼な子を残して漢江に身を投げる】
そんな新聞記事の見出しまで頭をよぎる。
待て待て待て。そんなはずは無い。
そう、ソウルに来て生理になった時に、シュンがいつ妊娠しても良いように、これからは毎月キチンと排卵日を手帳に付けておいてね?と、珍しく細かい事言ってたんだった....そうだそうだった。
落ち着け、落ち着くのだ。
私は、タカとのあの時の自分の心理を思い出して見る。
【シュンの画像の事がやっぱり割り切れなくて、それでもシュンを信じてソウル行きを決心した私。そして気持ちのどこかに、やはり愛子と何かあったのでは?と言う疑念は消えてなかった。
タカは成り行きではあったが、絵画教室退会の話を言いに来た私に、初めて自分の手の内と言うか、悩みを見せた。タカにそのつもりは無かったろうが、私はタカに弱い所を見せられたので、タカの懐に一瞬入った気がした】
タカとのたった一回の交わりは、私もタカも、上手く表現出来ないが、そう....泣いているようだった。勿論本当に泣いたのでは無い。そんな温もりが伝わって来た。傷を塞ぎ合うなような。そして禁断の味を知った私はいけない、いけないとの思う一方、心から幸せだった。このままこの人と落ちてしまいたいと本気に思った.............................
ユナがベゴシッボ〜お腹空いたと言ったので、我に返る。私は何だか少し涙組みながらマーケットで、手当たり次第にいろんなものを買い漁った。シュンの好きなワイン、チョコレートやケーキ、高級チーズにメロン....
今日はお祝いだ❗️
完全に過去を封印し、これからの私達家族の前途に向かって。思いっきり騒ぐのだ。
紫陽花は土の酸度によって、花の色が変わると言う。シュンの色に染まり、タカの色にも染まりたいと一瞬でも願った馬鹿な私。でもこれからは、いずれ日本に帰る日が来ても、私はシュンとユナだけを見てしっかり生きていける。
そうだ、紫陽花の鉢も買ってくか。マンションのベランダに置こう。雨に濡れてさぞ綺麗だろう。
ユナがシュンの子で良かったですね。もう過去にお別れしないとね!