愛子さんとリュウ君
2人ぼっちに出てきた、タカとシュンが共演したドラマはどんな話だったか?を想像して書いた作品です。私の彼役がシュン、画家役がタカと明記してあります。
リュウ君からラインが来た。“もう退社する頃?近くにいるんだけど。‘’
リュウ君はニコニコしながら駐車場で待っていた。サンローランのシャツをさらっと来て、だらしなげに巻いたマフラーがかっこいい。これまた超目立つわぁ。社内のみんな好奇心丸出しの顔で通りすぎる。
『いやぁ、あれから利佳さん教室に来ないからさぁ。僕気にしちゃって。タカ先生も様子見て来いって言うし』
私はあのクリスマス会があってから、年明けのレッスンにまだ顔を出してなかった。シュンから聞いた愛子の話や百合の過去話など、ちょっとみんなに距離を置きたい気持ちもあった。でも、リュウ君の悪ふざけなんて、今、顔見るまで正直忘れていた。
『ゴメンねぇ。風邪引いたり、友達の結婚式の準備があったりで、これでも土日忙しかったの。シュンも出張続きだったし。』
と、ソツなく答える。
リュウ君は少しホッとしたように
『実はさ、ちょっと聞いて欲しい事あって。』
『何々〜〜。せっかく来てくれたし今日は、お姉さんが奢ってあげよう!愛子さんのお店行く?』
と、ワザと言う。
『いやいや、あの店はパス。しばらくいいや』
ふーん?
百合さんといつも行く居酒屋に移動する。
『あの日、シュンさんと利佳さん帰った後、みんな凄かったんだ。もう気狂い騒ぎもいいとこ。由紀子おばさんと百合さんがタカ先生を挟み打ちでしょ?タカ先生、2人に代わる代わるキスされながら飲んでたからね?愛子さんはゲラゲラ笑って見てたから、まぁ、酔っ払いは見慣れてるんだろうなって』
うんうん。だいたいその場の様子が想像つくわね。
『で、タカ先生なんかいざとなったらさっさと1人で帰っちゃって。そしたら愛子さん、当てが外れたのかな、僕にこっそり、送ってくれない?って言うのさ。それってどう言う意味だか分かるよね?』
私は惚けて答えた。
『一緒にタクシーで帰ろ!じゃないの?』
『全く。ぶりっ子だなぁ。つまり帰りホテルに寄って行きましょうって意味さ』
はっ。私だってそれぐらい分かるわ!
しかし愛子って何者なんだ?
タカと寝てるかはまだ確証無いけど、シュンにも同伴頼むし、大学生のリュウと寝たいって?つまり欲求不満ってやつ?身体が鎮まらないってやつ?身体が鎮まらないのは由紀子さんの方じゃなかったのか?
私はちょっと身を竦めた。私だっていつかは経験するかもしれない、女としての心と身体と怨念との戦いだよね?
『で、どうしたわけ?愛子さん美人だし、バツイチ独身だし、大学生が遊ぶにはもって来いじゃないの?』
『イジメるなって。僕、その一言ですっかり酔いが覚めちゃってさぁ。じゃぁ、みんなでお茶して冷まして帰りましょって、提案して、近くのファミレスに移動して........』
さすが、リュウ君大人だわ。
『由紀子おばさんなんてこれからカラオケカラオケ騒いでるし。愛子さんは僕にガッカリしてシラケた顔してるし、百合さんなんか急に機嫌悪くなっちゃって参ったよ。』
あれあれ?百合さん、どうしたんだろ?タカが帰っちゃったから?
『愛子さんってさ、ちょっと変じゃない?僕の観察したとこ、タカ先生とシュンさんは狙ってるとは思ってたんだ。でもシュンさんには利佳さんがいるわけだし、一回り下の僕にまでちょっかい出すのは普通じゃないと思うよ。そこまで欲求不満なのかな。男欲しいなら出会い系だってある訳だし。子供もいるんだよね?いつも1人で留守番させとくのかな?』
そっか。私はシュンにちょっかい出された事にだけ腹を立て、愛子の娘までは思いやれなかった。
『タカ先生も何気に愛子さん贔屓に見えるし、相談し辛いんだよね。何処と無く愛子さんをかばってるように感じるんだ。』
私もそれは感じていた。恋愛以外の何かがタカと愛子の2人の間にある気がする。
それに........と、リュウは続けた。
『僕、百合さんが好きなんだ。百合さんの前で、愛子さんみたいな変人に構われたく無いんだ。えへ。言っちゃった。シュンさんにも言わないでよ。僕の片思いだから。全然相手にされてないしね!』
と、大学生は酔った顔をますます赤くして言う。
そっかぁ。百合さん、モテるなぁ。まだタカを狙ってるのかなぁ?違う気もするし。ちょっと本心読みづらいんだよね?
何れにしても、これ以上愛子からの被害をお互い被らないよう微妙に注意しようって事になり、来週からまた教室に顔出す約束をして、リュウ君と別れた。
うーん。愛子さん怖いですね?これ以上何かあるとみんな、こじれちゃいそうね!