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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第二章 デスゲーム開始
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97話 駄々っ子セレナ

 あれから2戦して、火炎瓶もソーンも無くなったので今日はこれで終了だ。


 レベルが高くなると、そう簡単にレベルが上がらなくなるから辛い。


 そして、クレイジーラット討伐が1000匹を超えたのでコンバットレーションを入手していた。

 大量発生した時に火炎瓶でまとめて燃やしていたおかげだろう。


 セレナのおかげで一気にレベルが上がったのは行幸だった。



 ダンジョンを出ると、弟子達3人と別れてセレナと2人で家路に着く。


 夕日に照らされて、町並みが真っ赤に染まっていた。

 もう、こんな時間かと空を見上げて感慨に浸る。


 帰り道では、ずっとセレナが楽しそうに話し続けていた。

 デールンがどうたら、ちーちゃんがうんたらと興奮したように話すセレナに相槌を打つ。

 夕日に負けないくらい真っ赤になって話すセレナはとても可愛らしかった。


 しかし、ギルドが近づいてくるとセレナの声はだんだん小さくなる。

 ギルドが見えて来る頃には、完全に無口になってしまっていた。


 そして、ギルドの前で待っていたセリアの姿を確認する。


 「あ? 来たわね」


 近くまで来ると、セリアもこちらの姿を認識したようだ。


 「待たせたか?」


 「いいえ、それほどでもないわ」


 セリアと簡単な挨拶を交わして、セレナにお別れの挨拶をする。

 セリアがセレナにダンジョンの事を聞いていた。


 「セレナ楽しかった?」


 「うん……」


 セレナは楽しかったと言う答えとは裏腹にしょんぼりと頷いていた。


 「それじゃあ、帰りましょう」


 「やだ」


 「え? セレナ?」


 セリアがセレナの手を握って帰ろうとすると、セレナがムスッとした顔でこばんでいた。


 「セレナ、たっつんと一緒がいい」


 「ちょっと、セレナ、我侭言わないの」


 「やぁ~だぁ~! セレナ、たっつんと一緒にいるのぅ!」


 「おわぁ」


 セレナはそう言うと、呆然と見ていた俺に抱きついてきた。


 「もう、困ったわね。達也からも何とか言って」


 「え? 何が?」


 セレナに抱きつかれてへらへらしていたため、何を言われたのか理解できなかった。

 セリアはいつものポーズでゴミを見るような視線を俺に向けてきた。


 慌ててにやけ顔を直す。


 「ほら、セリアも困ってるだろ?」


 「やだやだやだやぁ~だぁ~!」


 セレナは首を左右にブンブンさせて拒絶している。


 う~む、完全に駄々っ子ですな。


 「セリア、どうするんだ?」


 「どうもしないわよ。こうなると梃子てこでも動かないんだから」


 困り果ててセリアに尋ねると、セリアは肩をすくめて首を振っていた。

 セレナはかわいい頬をぷくりと膨らませると、俺にしがみつく様にぎゅうぎゅうと抱きついてくる。


 「セレナ、絶対離れないもん」


 「はぁ、よっぽど楽しかったみたいね。わかったわ、今日はモニカに泊まりましょう」


 厳しい顔でセレナを見つめていたセリアの表情がとても温かい慈愛のある顔に変わる。


 「ほんとぅ? やた! セリアちゃん大好き!」


 さっきまでは膨れ顔だったセレナが、途端にニコニコした笑顔でセリアに抱きついていた。

 結局はセリアが折れて、今日はモニカの宿に泊まる事になったようだ。


 「でもいい? 明日には絶対に帰るんだからね?」


 「うう、わかったのぅ」


 セリアの有無を言わさぬ剣幕にセレナが渋々なようだが頷いていた。


 「セレナは明日もダンジョンに一緒に来るのか?」


 「セレナはたっつんと一緒に行くのぅ」


 「みたいね? 達也、明日もお願いできるかしら?」


 「ああ、セレナは強いから俺としても助かる。セリアは明日どうするんだ?」


 「そうね、今日は結局目的を達成できなかったから、明日も散策してみるわ」


 明日の早朝、泊まる宿に迎えに行くという事で2人と別れた。

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